top of page
執筆者の写真Tatsu Kono

[特別賞] 塩田 純也 /ミシガン大学 University of Michigan

更新日:2020年4月8日

Junya Shiota M.D.

マウス肝外胆管オルガノイドモデルの開発

Journal of Visualized Experiments

2019/4

Generation of Organoids from Mouse Extrahepatic Bile Ducts

胆道閉鎖症や原発性硬化性胆管炎といった難治性胆管障害は、いまだに効果的な治療法はない。これまでの胆管障害の研究は、ほとんどが正常細胞あるいは肝内/肝外胆管由来の胆管癌細胞株を用いたものであった。しかしこれらは形質転換された細胞モデルであり、恒常性や正常な胆管細胞が再現できないという問題点があった。特に肝外胆管に関しては、これまで有効な研究ツールがほとんどなく病態の解明は進んでいないのが現状であった。今回我々はその問題を解決すべく、野生型および遺伝子組み換えマウス幹細胞由来の胆管前駆細胞オルガノイドを開発することに成功した。「オルガノイド」とは、多能性幹細胞や臓器特異的幹細胞に由来する3次元培養モデルを表し、「ミニ臓器」とも呼ばれる極めて効率的な研究モデルである。これまで大腸や肝臓など多くの臓器で用いられ、主に病態解明や薬理学的効果の研究に非常に役立っている。肝外胆管に限れば、これまでヒト胆管組織や胆管癌からオルガノイドを作製したという報告はあるが、組織量やアクセスが限られていることもあり、一般的に用いられるものではなかった。そこで本研究では、マウス肝外胆管から分離した胆管上皮前駆細胞からオルガノイドを作製し、より簡便かつ広く一般的に利用可能な研究ツールとして活用させることを目的とした。このオルガノイドは免疫組織染色やqRT-PCRなどにおいて胆管細胞に特異的なマーカーを発現し、胆管上皮の特徴を十分有していることが示された。さらに複数回の継代後もオルガノイドは形態の均一性および同等の播種効率を維持することができた。したがって我々が開発した肝外胆管オルガノイドは、他臓器のオルガノイドモデルと同様に、胆管前駆細胞増殖メカニズムの解明、薬理学的効果の評価や遺伝子組み換えモデルでの検討などに広く応用できる可能性がある。この肝外胆管オルガノイドが将来的な難治性胆管障害の病態解明の一助となりうることが期待される。


審査員コメント:


JoVEは実験手法をビデオで紹介するというオンラインメディア文化の興隆により可能となった雑誌である。通常の投稿査読ステップに加え、画像撮影の準備編集などエキストラな努力が必要である。したがって、この雑誌に出すというのは、手法の新しさ、重要さに加えて、少しでも多くの人にわかりやすく伝えたいという著者らの意思がキーポイントの一つとなる。本論文で紹介されたオルガノイドは比較的歴史が浅く、また画像による操作ガイドが大変有効な手法である。筆頭著者の英語による説明も堂に入っており、本人を知るものとしては手法の重要さに加えて楽しめる要素が高い。特別賞に推薦したい。(三品裕司先生)


近年注目を集めるオルガノイド作製技術を用いて胆管細胞の研究ツールを開発した論文です。将来的な難治性胆管障害の研究に用いることができる重要な研究だと思います。(鎌田信彦先生)

閲覧数:129回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page