Rie Ouchi Ph.D.
ヒトiPS細胞由来オルガのイドを用いた脂肪性肝炎モデルの樹立
Cell Metabolism
Modeling Steatohepatitis in Humans with Pluripotent Stem Cell-Derived Organoids
Aug 6, 2019
本稿は、肝細胞に加え炎症を誘導する肝臓常在性マクロファージであるクッパー細胞や繊維化を誘導する間質細胞である肝星細胞といった非実質細胞を含む多細胞系肝オルガノイドを創出することで、再現することが難しかった脂肪性肝炎の病理学的特徴、特に炎症や繊維化を再現した培養モデル構築の成功を報告しました。先天性の脂肪性肝炎を発症するリソソーム酸性リパーゼ欠損症ウォルマン病の患者から樹立したiPS細胞由来脂肪肝オルガノイドの病態は、健常者iPS細胞由来脂肪肝オルガノイドに比べ、顕著な増悪が確認され、本手法によって創出された脂肪肝オルガノイドが臨床病態と相関することが明らかとなりました。さらに、非アルコール性脂肪性肝炎に対する臨床 III 相試験薬であるオベチコール酸の下流標的因子FGF19を病由来脂肪肝オルガノイドに曝露したところ、繊維化を含む脂肪性肝炎の病態が抑制され、オベチコール酸がウォルマン病の新治療薬として有用であることを示唆しました。
審査員コメント
脂肪肝に起因する病態(NAFLD, NASH, HCC)の罹患率が世界的に増加している中、その病態を再現できる細胞モデルの構築が急がれていた。この研究で、iPS肝オルガノイドを用いて、脂肪肝の臨床病態に近いモデルを作り出した意義は大きく、今後の研究応用が大いに期待される。(中村先生)
本研究では、脂肪性肝炎の病理学的特徴を再現した培養モデルの構築を報告しています。この培養モデルの構築により、今後、脂肪性肝炎の研究が進展する礎を築いたことに大きな価値があると考えられます。研究分野に大きなインパクトのある仕事だと考えられます。(行川先生)
受賞者コメント
「この度は2020 UJA Outstanding Research Paper Awardを授与していただき、大変光栄です。研究成果を論文にまとめる上でご協力いただいた、武部貴則教授やCo-first authorである東郷祥大さんをはじめとした多くの方々に、誠に感謝しております。留学先のCincinnati Children's Hospital Medical Centerは、最先端の研究設備が整っているだけではなく、周囲の研究者も優しい方々ばかりで、多くの知識や技術を学べたとともに研究一直線の充実した留学生活を送れました。論文のリバイス時には妊娠中で不慣れなことも多かったのですが、お腹の子とともにリバイス実験を乗り越えることができたのは、今ではとてもいい思い出となっております。再度になりますが、本当に素敵な賞をいただけたこと、大変嬉しく思っております。今後、より一層研究に邁進していきたいと思います。本当にありがとうございました!大内梨江」
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