Aki IIO-OGAWA4月8日読了時間: 3分[奨励賞]丸山 隼輝/テキサス大学医学部ガルベストン校Junki Maruyama, D.V.M., Ph.D.[分野:Team Wada]CD4 T-cell depletion prevents Lassa fever associated hearing loss in the mouse modelラッサウイルス感染による聴覚阻害とT細胞の関与PLoS Pathogens, 23-May-2022概要ラッサウイルス (LASV) は致死的な出血熱であるラッサ熱を引き起こす。LASvはその高い病原性と予防・治療法が確立されていないことからバイオセーフティーレベル4 (BSL-4) 施設での取り扱いが必要である。またLASVは致死的な急性感染症だけでなく感染回復期において患者のおよそ1/3に聴覚障害を引き起こすことも知られている。聴覚障害は患者の生活に多大な影響を引き起こすものであるが、その取扱いの難しさからLASV感染による聴覚障害の発病機構についての詳細は未知のままである。 そこで本研究ではSTAT1-KOマウスを用いLASV感染聴覚障害モデルを用い、BSL-4施設内で小児聴覚スクリーニングでも用いられている聴性脳幹反応検査 (ABR) と耳音響放射検査 (DPOAE) によるLASV感染マウスの聴覚を評価した。その結果、LASV感染STAT1-KOは感染3週間後からほぼ全ての個体がABRおよびDPOAEの両方で検出できる聴覚障害示した。LASV感染による聴覚障害は両側性であり、感染90日後においても聴覚の改善が見られないことから不可逆な障害であることも確認された。さらにCD4およびCD8陽性T細胞の枯渇実験によりLASV感染による聴覚障害は1) CD4陽性T細胞誘導性であること、2) ウイルス感染による直接の障害ではなく宿主の免疫介在制であること、3) らせん神経節細胞の重度の障害がみられることが判明した。 本研究はBSL-4施設内でマウスに聴覚試験を行った世界初のものであり、得られた結果は将来的なLASV感染による聴覚障害の詳細な発病機構の同定と予防・治療法の開発を行うための重要な知見となる。受賞者のコメント受賞出来てうれしいです。審査員のコメント太田 壮美 先生:ラッサウイルス(LASV)感染による聴覚障害のメカニズムを明らかにするために、STAT1-KOマウスを用いたLASV感染聴覚障害モデルを作成し研究した論文である。マウス聴覚試験では、感染後3週間から聴覚障害が検出され、その後も不可逆的かつ両側性であることが示された。CD4陽性T細胞が誘導的な要因であり、ウイルス感染による直接の障害ではなく宿主の免疫介在制が関与していることが示唆されたとのこと。取り扱いが難しいがゆえ研究が進まないジレンマを抱える分野の本研究は、非常に貴重であり、これらの結果は、将来的なLASV感染による難聴の予防・治療法の開発に重要な基礎的知見を明らかにしている素晴らしい論文である北原 大翔 先生:ラッサウイルス感染後に起こる聴覚障害の発病機構を解明するため、ラッサウイルス感染マウスの聴覚試験で聴覚障害の評価を行った研究。得られた結果はラッサウイルス感染による聴覚障害のさらなる研究を行う際に重要なものであり、有用な研究であると思います。上村 麻衣子 先生:応募者らは、ラッサ熱に感染した後に生じる聴覚損失のメカニズムを探求し、聴覚損失が主にCD4 T細胞による免疫反応に関連していることを発見しました。この発見は、将来的にラッサ熱感染症による聴覚損失の予防や治療法の開発につながる可能性があり、学術的価値が高いと考えます。エピソード1)研究者を目指したきっかけ大学の時に行った研究が楽しかったため未だに研究者をしています。2)現在の専門分野に進んだ理由大学で学んだ中でウイルス学が最も興味を引いたから。3)この研究の将来性ラッサ熱患者に診られる難聴に対する予防・治療手段の確立に寄与する可能性がある。
Junki Maruyama, D.V.M., Ph.D.[分野:Team Wada]CD4 T-cell depletion prevents Lassa fever associated hearing loss in the mouse modelラッサウイルス感染による聴覚阻害とT細胞の関与PLoS Pathogens, 23-May-2022概要ラッサウイルス (LASV) は致死的な出血熱であるラッサ熱を引き起こす。LASvはその高い病原性と予防・治療法が確立されていないことからバイオセーフティーレベル4 (BSL-4) 施設での取り扱いが必要である。またLASVは致死的な急性感染症だけでなく感染回復期において患者のおよそ1/3に聴覚障害を引き起こすことも知られている。聴覚障害は患者の生活に多大な影響を引き起こすものであるが、その取扱いの難しさからLASV感染による聴覚障害の発病機構についての詳細は未知のままである。 そこで本研究ではSTAT1-KOマウスを用いLASV感染聴覚障害モデルを用い、BSL-4施設内で小児聴覚スクリーニングでも用いられている聴性脳幹反応検査 (ABR) と耳音響放射検査 (DPOAE) によるLASV感染マウスの聴覚を評価した。その結果、LASV感染STAT1-KOは感染3週間後からほぼ全ての個体がABRおよびDPOAEの両方で検出できる聴覚障害示した。LASV感染による聴覚障害は両側性であり、感染90日後においても聴覚の改善が見られないことから不可逆な障害であることも確認された。さらにCD4およびCD8陽性T細胞の枯渇実験によりLASV感染による聴覚障害は1) CD4陽性T細胞誘導性であること、2) ウイルス感染による直接の障害ではなく宿主の免疫介在制であること、3) らせん神経節細胞の重度の障害がみられることが判明した。 本研究はBSL-4施設内でマウスに聴覚試験を行った世界初のものであり、得られた結果は将来的なLASV感染による聴覚障害の詳細な発病機構の同定と予防・治療法の開発を行うための重要な知見となる。受賞者のコメント受賞出来てうれしいです。審査員のコメント太田 壮美 先生:ラッサウイルス(LASV)感染による聴覚障害のメカニズムを明らかにするために、STAT1-KOマウスを用いたLASV感染聴覚障害モデルを作成し研究した論文である。マウス聴覚試験では、感染後3週間から聴覚障害が検出され、その後も不可逆的かつ両側性であることが示された。CD4陽性T細胞が誘導的な要因であり、ウイルス感染による直接の障害ではなく宿主の免疫介在制が関与していることが示唆されたとのこと。取り扱いが難しいがゆえ研究が進まないジレンマを抱える分野の本研究は、非常に貴重であり、これらの結果は、将来的なLASV感染による難聴の予防・治療法の開発に重要な基礎的知見を明らかにしている素晴らしい論文である北原 大翔 先生:ラッサウイルス感染後に起こる聴覚障害の発病機構を解明するため、ラッサウイルス感染マウスの聴覚試験で聴覚障害の評価を行った研究。得られた結果はラッサウイルス感染による聴覚障害のさらなる研究を行う際に重要なものであり、有用な研究であると思います。上村 麻衣子 先生:応募者らは、ラッサ熱に感染した後に生じる聴覚損失のメカニズムを探求し、聴覚損失が主にCD4 T細胞による免疫反応に関連していることを発見しました。この発見は、将来的にラッサ熱感染症による聴覚損失の予防や治療法の開発につながる可能性があり、学術的価値が高いと考えます。エピソード1)研究者を目指したきっかけ大学の時に行った研究が楽しかったため未だに研究者をしています。2)現在の専門分野に進んだ理由大学で学んだ中でウイルス学が最も興味を引いたから。3)この研究の将来性ラッサ熱患者に診られる難聴に対する予防・治療手段の確立に寄与する可能性がある。
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