cheironinitiative4月13日読了時間: 3分[特別賞]前田 啓子/名古屋大学Keiko Maeda, M.D., Ph. D.[分野:免疫アレルギー]Depletion of the apical endosome in response to viruses and bacterial toxins provides cell-autonomous host defense at mucosal surfaces(腸管上皮細胞による新たな感染防御機構の発見)Cell Host Microbe, 01-February-2022概要 腸管は、細菌やウィルスなどの病原体に接しており、その最前線に位置する腸管上皮細胞は、病原体に対する様々な防御機構を持っています。これらの防御機構は、組織を感染から守り、腸管の恒常性を保つために必須の機構であり、その破綻は、腸管感染症、炎症性腸疾患の進展に深く関与します。しかしながら、これまでの研究では、腸管上皮細胞が、どのように病原体を認識して、感染を防御するかは不明な点が多く残されていました。 多くのウィルスや細菌由来の毒素は、上皮細胞のエンドソームを介して細胞内へ侵入します。本研究グループは、網羅的解析により、細胞の極性維持に関与するPARD6B/aPKC/Cdc42複合体が、エンドソームの機能を促進することを同定しました。その上、ウィルスが細胞膜の糖脂質に結合すると、PARD6B/aPKC/Cdc42複合体の分解が誘導され、エンドソームの機能を阻害することにより、病原体の細胞内への侵入を阻止するという感染防御機構を発見しました。本研究により、腸管上皮細胞が、ウィルスの細胞膜への結合を感知し、エンドソームの機能を阻害することで感染を防御するという新たな感染防御機構を同定しました。今後、この機構を解析することにより、腸管感染症や炎症性腸疾患の病態解明や治療法の開発につながることが期待されます。受賞者のコメント この度は栄誉あるUJA特別賞に選んでいただきありがとうございます。この賞を励みに今後の研究を発展させていきたいと思います。大変お忙しい中、本賞を企画して下さった先生方、選考委員の先生方に感謝いたします。審査員のコメント森田 英明 先生: 腸管細胞の極性とエンドソームは連携していると想定されていたが、その詳細は不明であった。本研究ではPARD68がエンドソームに関与すること、ウイルス感染の際にはPARD68の分解が促進されることにより、エンドソームが阻害される生体防御システムが存在することが明らかとなった。倉島 洋介 先生: 腸管上皮細胞へのウィルス感染により上皮の極性が損なわれることを示し、さらにプロテオソーム依存的にPARD6Bの分解が起こることで細胞内への感染が阻止されることを示した研究成果である。PARD6B/aPKC/Cdc42複合体の重要性について、詳細な解析がなされており、本研究成果が起点となり様々な腸管感染症や炎症性腸疾患との関連性などについて今後の発展が期待できる。神尾 敬子 先生: 腸管上皮への複数のウイルスの感染モデルを用いて、細胞極性遺伝子PARD6Bの分解とそれに続くウイルスが宿主への侵入に利用するエンドサイトーシス阻害による、感染ごく早期の新規感染防御システムを解明しています。PARD6Bを治療標的とした場合、ウイルス以外にエンドサイトーシスを利用して細胞内に侵入する病原体に対して有効な、汎用性の高い感染予防薬となる可能性が期待できます。エピソード1)研究者を目指したきっかけ 臨床医として働くなかで、治らない病気が多いことを実感したから。2)現在の専門分野に進んだ理由 病原体や免疫細胞、上皮細胞など様々な細胞が存在する腸管がどのように機能を維持しており、その異常がどのように病気と関連するか興味があったため。3)この研究の将来性 腸炎や難治性疾患である炎症性腸疾患の原因解明や治療法の開発につながる可能性がある。
Keiko Maeda, M.D., Ph. D.[分野:免疫アレルギー]Depletion of the apical endosome in response to viruses and bacterial toxins provides cell-autonomous host defense at mucosal surfaces(腸管上皮細胞による新たな感染防御機構の発見)Cell Host Microbe, 01-February-2022概要 腸管は、細菌やウィルスなどの病原体に接しており、その最前線に位置する腸管上皮細胞は、病原体に対する様々な防御機構を持っています。これらの防御機構は、組織を感染から守り、腸管の恒常性を保つために必須の機構であり、その破綻は、腸管感染症、炎症性腸疾患の進展に深く関与します。しかしながら、これまでの研究では、腸管上皮細胞が、どのように病原体を認識して、感染を防御するかは不明な点が多く残されていました。 多くのウィルスや細菌由来の毒素は、上皮細胞のエンドソームを介して細胞内へ侵入します。本研究グループは、網羅的解析により、細胞の極性維持に関与するPARD6B/aPKC/Cdc42複合体が、エンドソームの機能を促進することを同定しました。その上、ウィルスが細胞膜の糖脂質に結合すると、PARD6B/aPKC/Cdc42複合体の分解が誘導され、エンドソームの機能を阻害することにより、病原体の細胞内への侵入を阻止するという感染防御機構を発見しました。本研究により、腸管上皮細胞が、ウィルスの細胞膜への結合を感知し、エンドソームの機能を阻害することで感染を防御するという新たな感染防御機構を同定しました。今後、この機構を解析することにより、腸管感染症や炎症性腸疾患の病態解明や治療法の開発につながることが期待されます。受賞者のコメント この度は栄誉あるUJA特別賞に選んでいただきありがとうございます。この賞を励みに今後の研究を発展させていきたいと思います。大変お忙しい中、本賞を企画して下さった先生方、選考委員の先生方に感謝いたします。審査員のコメント森田 英明 先生: 腸管細胞の極性とエンドソームは連携していると想定されていたが、その詳細は不明であった。本研究ではPARD68がエンドソームに関与すること、ウイルス感染の際にはPARD68の分解が促進されることにより、エンドソームが阻害される生体防御システムが存在することが明らかとなった。倉島 洋介 先生: 腸管上皮細胞へのウィルス感染により上皮の極性が損なわれることを示し、さらにプロテオソーム依存的にPARD6Bの分解が起こることで細胞内への感染が阻止されることを示した研究成果である。PARD6B/aPKC/Cdc42複合体の重要性について、詳細な解析がなされており、本研究成果が起点となり様々な腸管感染症や炎症性腸疾患との関連性などについて今後の発展が期待できる。神尾 敬子 先生: 腸管上皮への複数のウイルスの感染モデルを用いて、細胞極性遺伝子PARD6Bの分解とそれに続くウイルスが宿主への侵入に利用するエンドサイトーシス阻害による、感染ごく早期の新規感染防御システムを解明しています。PARD6Bを治療標的とした場合、ウイルス以外にエンドサイトーシスを利用して細胞内に侵入する病原体に対して有効な、汎用性の高い感染予防薬となる可能性が期待できます。エピソード1)研究者を目指したきっかけ 臨床医として働くなかで、治らない病気が多いことを実感したから。2)現在の専門分野に進んだ理由 病原体や免疫細胞、上皮細胞など様々な細胞が存在する腸管がどのように機能を維持しており、その異常がどのように病気と関連するか興味があったため。3)この研究の将来性 腸炎や難治性疾患である炎症性腸疾患の原因解明や治療法の開発につながる可能性がある。
Commentaires