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[奨励賞]佐藤 裕樹/シンシナティ子供病院

Hiroki Sato, M.D., PhD.
[分野:オハイオ]
好酸球性消化管疾患の臓器特異的遺伝子発現
Clinical Gastroenterology and Hepatology

概要
好酸球性食道炎(EoE)は、食道への現局した好酸球浸潤を特徴とするアレルギー性の好酸球性消化管疾患(EGIDs)である。現在の診断基準では、他のEGIDsに合併する食道病変(以下Esophageal involvement: EI)はEoEとは診断されず、最新の国際専門家会議でも命名法のコンセンサスは得られていない。また、EoE患者で非EoE性EGIDsを合併すると患者QOLの低下が著しいことから、簡便な予測法の構築が喫迫の課題である。
シンシナティ子供病院のEoE患者・EI患者(合計782名)の臨床学的特徴の比較、ならびに食道生検サンプルの処理とEoE関連76遺伝子の比較を行った。種々の解析の結果、二つの疾患は極めて類似していた。さらに、EoE患者を後方視的に追跡し、末梢血好酸球数・食道好酸球数の二因子から非EoE性EGIDsの合併を予測するモデルを構築した。また、我々は、専門家の間で大きな議論となっている単一部位と複数部位を含む非EoE性EGID間の分子プロファイルを調査するため、好酸球性胃炎(EoG)患者と他のEGID合併EoG患者(合計117名)のEoG関連46遺伝子の比較を行い、食道病変の結果同様近似していた。
今回の結果を総合すると、EGIDsの遺伝子発現パターンは、他の消化管領域の関与にかかわらず、罹患した領域ごとに特異性を示すことが示唆された。我々の研究結果は、「好酸球性胃炎および好酸球性腸炎」の診断のように、侵された特定の部位を正確に反映する最新の診断命名法を支持するものである。さらに今後の検証が必要であるが、EoEの診断基準に一石を投じることも期待される。"
受賞者のコメント
研究成果がこのような栄えある形で評価され大変嬉しく思います。これまで熱心に指導していただいた正田先生、ならびにラボメンバーに感謝申し上げます。

審査員のコメント
Makiko Iwafuchi 先生:
包括的で緻密な比較解析から、好酸球性消化管疾患が臓器特異的遺伝子発現を示すことを解明した重要な研究である。

水野 知行 先生:
臨床情報や食道生検サンプルを用いて、食道に限局したアレルギー性好酸球性消化管疾患(EGIDs)である好酸球性食道炎(EoE)とEGIDsに合併する他の食道病変(EI)との比較・区別を試みた研究です。さらに、著者らは抹消血と食道の好酸球数を使用して、non-EoE EGIDs の合併リスクを予測するモデルも構築しています。病態の正確な分類は、最適な治療方針を策定する上で重要であり、国際的なコンセンサスが得られていない課題に対して有用な情報を提供すると期待されます。

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
臨床のみでは疾患の深い理解は得られないと考えたため
2)現在の専門分野に進んだ理由
多臓器にまたがる分野であり臓器間ネットワークも非常に興味深いため
3)この研究の将来性
好酸球性食道炎の診断基準に一石を投じることも期待される
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