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[奨励賞]内藤 志歩/ハンブルク心臓血管センター

Shiho Naito, M.D., Ph.D.
[分野:Team Wada]
大動脈二尖弁関連大動脈疾患における血中microRNAと大動脈壁microRNAの相関
Reviews in Cardiovascular Medicine, 08-February-2022

概要
大動脈二尖弁は通常三尖からなる弁が二尖で構成される最も多い心奇形であり全人口の1%を占める。弁疾患を引き起こすだけでなく大動脈弁近位の上行大動脈の瘤化もしくは解離など命に関わる重大な疾病のリスクとも知られている。通常大動脈径が大きいほど破裂、解離のリスクが上がる事から50mm以上での予防的外科的介入が推奨されているが大動脈二尖弁患者においては必ずしも大きさに比例せず大動脈イベントが起こることが報告されている。また特に若年層での放射線用いた画像検査は安全面上の懸念があり、画像検査自体のコストや汎用性を考慮すると血液検査による簡易的また数値による絶対的評価は非常に有用と考えられている。我々は大動脈径に依存しない大動脈イベントを検出する方法として血中のmicroRNAが有効であるかを検証した。先の研究で急激な大動脈径の増幅を認めた患者においてある種の大動脈壁microRNAが増加することが認められている。今回の検証で我々はmiR-21, miR-133a, miR-143, miR-145において血中レベル及び壁内レベルの相関を確認した。またmiR-143は大動脈径と比例し増加することを確認した。サンプル数が限られて、またフォロー中に大動脈破裂および解離などの命に関わるイベントは検出できなかったが、今後も血中microRNAにより大動脈イベントのリスク評価が可能となるよう研究を進めていきたい。

受賞者のコメント
このたびは奨励賞を賜り誠にありがとうございます。心臓外科分野でさらに大動脈二尖弁というかなりニッチな研究ですが今後もさらに精進したいと思います。

審査員のコメント
太田 壮美 先生:
本研究は二尖弁患者の大動脈合併症の発生の予測するにあたり、今現在の大動脈径の計測値により判断する方法には限界があるとの考えから、末梢血内のmiRをバイオマーカーとして使用できる可能性について検討している。結果では末梢血と大動脈組織内の種々のmiRの値には相関がみられ、末梢血内のmiR値は大動脈瘤のリモデリング過程を反映していることが示唆している。大動脈瘤は破裂や解離を合併すると死亡率が非常に高く、また大動脈瘤径のそれほど大きくない症例でも破裂を起こすことがあり、大動脈径測定とmiR値の測定を併用することで破裂・解離を回避できる可能性が上がることが期待される。

北原 大翔 先生:
大動脈二尖弁に伴う大動脈疾患に血中のmicroRNAが関連するかを調べた非常にユニークな研究で、血中のMicroMRAが大動脈疾患発生の予測因子になりうる可能性を示唆しています。二尖弁に関わる大動脈疾患の予後予測は難しく、こういった予測因子を調査する著者らの研究は非常に有用であると思います。

上村 麻衣子 先生:
応募者らは、二尖弁大動脈症患者の外周全血と大動脈組織の間で循環するマイクロRNA(miRs)の相関関係を調査しました。彼らは、二尖弁および一尖弁の患者で、大動脈障害に関連する10種類のmiRsを調べ、特定のmiRs(miR-21, miR-133a, miR-143, miR-145)が血液と組織の両方で類似した発現パターンを示し、大動脈のリモデリング過程を反映していることを示しました。
この発見は、循環miRsが二尖弁大動脈症患者における血管のリモデリングを反映している可能性があることを裏付け、miRsが将来的に二尖弁大動脈症の進行予測のためのバイオマーカーとしての可能性が期待されます。

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
実際に患者さんを見る臨床医として働き、同時に未知の領域を研究する研究医の両輪で活躍できればと思います。日本にいる間は具体的なイメージが掴めずにいましたが、留学を機に実際臨床も研究も活躍されていらっしゃる先生に囲まれ刺激を受けました。
2)現在の専門分野に進んだ理由
自分の技術で患者さんの健康や命に貢献できるため心臓外科を志しました。
3)この研究の将来性
人口の1%にみられる心奇形といわれる大動脈弁二尖弁ですが、心臓の出口にある大動脈弁が通常の3枚の代わりに2枚しかなく、弁が閉まりにくくなったり開きにくくなったりします。俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーもこの奇形のため手術を受けています。また心臓近位の大動脈が膨らみ破裂や解離につながりやすいと言われています。心臓近位の大動脈の状態は放射線を使ったCT検査などでフォローする場合は被曝の可能性が、超音波検査では正確性に欠けると言われています。画像診断以外にこの疾患をスクリーニングまたはフォローするための検査として血液検査ができれば若年者で発症する場合も被曝の恐れなく、正確に評価ができるのではないかというのがこの研究の趣旨です。
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