Aki IIO-OGAWA4月8日読了時間: 4分[奨励賞]安部 一太郎/ハーバードメディカルスクールIchitaro Abe, M.D., Ph.D.[分野:Tomorrow 4]Lipolysis-derived linoleic acid drives beige fat progenitor cell proliferationベージュ前駆脂肪細胞の増殖を制御する機構の解明Developmental Cell概要1細胞RNA シークエンスを用いて同定された,ベージュ脂肪細胞への高い分化能を有するCD81陽性前駆細胞は,増殖能が寒冷刺激により劇的に誘導される一方で,加齢により低下した。従来,白色脂肪のベージュ化は,新規脂肪細胞分化もしくは,成熟した白色脂肪細胞からの分化転換により形成されると考えられていたが, 前駆細胞の増殖能が白色脂肪のベージュ化を規定する重要な要因であることが示唆された。 そこで申請者は,白色脂肪のベージュ化を規定する重要な要因である, “CD81陽性前駆細胞の増殖能”がどのように制御されているのか?を明らかにするため,Ⅰ. CD81陽性前駆細胞の系統追跡モデルマウスを用いた解析, Ⅱ. CD81陽性細胞特異的CD36KOマウス・初代培養細胞を用いた解析, Ⅲ. 脂肪分解を抑制したモデルとしての脂肪細胞特異的ATGL KOマウスを用いた解析, Ⅳ. それぞれの遺伝子改変マウスについて脂肪酸負荷モデルでの外的刺激によるベージュ脂肪誘導方法の解析, Ⅴ. 遊離脂肪酸がCD81陽性前駆細胞に取り込まれた後,どのような機序で増殖能の促進に寄与するかについて培養細胞での解析, Ⅵ. ヒト脂肪組織培養での解析,を行った。 その結果,マウスモデルだけでなく,ヒトの組織においても,寒冷刺激,β3アドレナリン受容体の活性化後に,成熟白色脂肪細胞の脂肪分解由来のリノール酸が,CD81陽性前駆細胞の増殖を誘発することが明らかとなった。CD81陽性前駆細胞は,クリステに富むミトコンドリアを有し,脂肪酸トランスポーターCD36を介してリノール酸を積極的に取り込んでいた。また,リノール酸はミトコンドリア内で燃料として酸化されるだけでなく,プロスタグランジンD2のようなアラキドン酸由来のシグナル伝達物質の合成にも利用されていた。リノール酸の経口補給は,CD36依存的に,ベージュ前駆細胞の増殖を刺激するのに十分であった。以上より,本研究は,寒冷や熱傷などの多様な病態生理学的刺激が,どのようにして新規ベージュ脂肪の生成を促進するのかについて,明らかにした。受賞者のコメントこのような名誉ある賞を頂き大変嬉しく思います。Lab PIであるProf. Kajimuraをはじめ,本プロジェクトに協力いただいた多くの同僚,共同研究者に,この場をお借りして感謝申しあげます。今後とも精進致します。審査員のコメント松本 真典 先生:ベージュ脂肪細胞は寒冷暴露に応じて熱を産生する特殊な脂肪細胞ですが、白色脂肪細胞のベージュ化がどのようなプロセスにより行われているのかはこれまで不明なままでした。従来の報告とは異なり、筆者らはCD81陽性前駆細胞がCD36を介してリノール酸を取り込むことで増殖し、白色脂肪細胞のベージュ化が誘導されることを明らかにしました。ベージュ脂肪細胞の増加はエネルギー消費の増大を引き起こして太りにくい体質作りに繋がる事から、本研究結果から新たな糖尿病や肥満の治療法の開発が期待されます。黒川 遼 先生:本研究では、寒冷・熱刺激による成熟白色脂肪細胞の脂肪分解由来のリノール酸が、ベージュ脂肪細胞への高い分化能を知られるCD81陽性前駆細胞において脂肪酸トランスポーターCD36を介して取り込まれ、CD81陽性前駆細胞の増殖を誘発し、結果的にベージュ脂肪細胞化を来しているという機序を解明することに成功している。特に興味深い点として、thermoneutral condition下においても、リノール酸の経口補給によってCD36依存的なベージュ前駆細胞増殖を刺激することに成功しており、将来的な製薬の基盤となりうる重要な発見と考えられる。今後ヒトにおいてもリノール酸の経口補給が同様の結果を生じるかどうかの解明が期待される。武藤 朋也 先生:寒冷暴露や熱傷に反応したベージュ前駆脂肪細胞の増殖分子メカニズムが詳細に突き詰められている。特に、リノール酸の経口補給という簡便な方法でベージュ前駆細胞の増殖を刺激することが確認できていることは非常に興味深い。本論文であまり触れられていないように思ったが、肥満や糖尿病の病態や治療におけるベージュ脂肪細胞の重要性が言われていることから、本研究成果が臨床的にも応用されることが期待されると感じた。エピソード1)研究者を目指したきっかけ知らない世界は見てみたい、経験しないと分からないと思いました。2)現在の専門分野に進んだ理由理解しにくいことは、自分で経験しなければずっと理解できないと思ったから。3)この研究の将来性まだ漠然としていますが、いつか何かの役に立つと願っています。
Ichitaro Abe, M.D., Ph.D.[分野:Tomorrow 4]Lipolysis-derived linoleic acid drives beige fat progenitor cell proliferationベージュ前駆脂肪細胞の増殖を制御する機構の解明Developmental Cell概要1細胞RNA シークエンスを用いて同定された,ベージュ脂肪細胞への高い分化能を有するCD81陽性前駆細胞は,増殖能が寒冷刺激により劇的に誘導される一方で,加齢により低下した。従来,白色脂肪のベージュ化は,新規脂肪細胞分化もしくは,成熟した白色脂肪細胞からの分化転換により形成されると考えられていたが, 前駆細胞の増殖能が白色脂肪のベージュ化を規定する重要な要因であることが示唆された。 そこで申請者は,白色脂肪のベージュ化を規定する重要な要因である, “CD81陽性前駆細胞の増殖能”がどのように制御されているのか?を明らかにするため,Ⅰ. CD81陽性前駆細胞の系統追跡モデルマウスを用いた解析, Ⅱ. CD81陽性細胞特異的CD36KOマウス・初代培養細胞を用いた解析, Ⅲ. 脂肪分解を抑制したモデルとしての脂肪細胞特異的ATGL KOマウスを用いた解析, Ⅳ. それぞれの遺伝子改変マウスについて脂肪酸負荷モデルでの外的刺激によるベージュ脂肪誘導方法の解析, Ⅴ. 遊離脂肪酸がCD81陽性前駆細胞に取り込まれた後,どのような機序で増殖能の促進に寄与するかについて培養細胞での解析, Ⅵ. ヒト脂肪組織培養での解析,を行った。 その結果,マウスモデルだけでなく,ヒトの組織においても,寒冷刺激,β3アドレナリン受容体の活性化後に,成熟白色脂肪細胞の脂肪分解由来のリノール酸が,CD81陽性前駆細胞の増殖を誘発することが明らかとなった。CD81陽性前駆細胞は,クリステに富むミトコンドリアを有し,脂肪酸トランスポーターCD36を介してリノール酸を積極的に取り込んでいた。また,リノール酸はミトコンドリア内で燃料として酸化されるだけでなく,プロスタグランジンD2のようなアラキドン酸由来のシグナル伝達物質の合成にも利用されていた。リノール酸の経口補給は,CD36依存的に,ベージュ前駆細胞の増殖を刺激するのに十分であった。以上より,本研究は,寒冷や熱傷などの多様な病態生理学的刺激が,どのようにして新規ベージュ脂肪の生成を促進するのかについて,明らかにした。受賞者のコメントこのような名誉ある賞を頂き大変嬉しく思います。Lab PIであるProf. Kajimuraをはじめ,本プロジェクトに協力いただいた多くの同僚,共同研究者に,この場をお借りして感謝申しあげます。今後とも精進致します。審査員のコメント松本 真典 先生:ベージュ脂肪細胞は寒冷暴露に応じて熱を産生する特殊な脂肪細胞ですが、白色脂肪細胞のベージュ化がどのようなプロセスにより行われているのかはこれまで不明なままでした。従来の報告とは異なり、筆者らはCD81陽性前駆細胞がCD36を介してリノール酸を取り込むことで増殖し、白色脂肪細胞のベージュ化が誘導されることを明らかにしました。ベージュ脂肪細胞の増加はエネルギー消費の増大を引き起こして太りにくい体質作りに繋がる事から、本研究結果から新たな糖尿病や肥満の治療法の開発が期待されます。黒川 遼 先生:本研究では、寒冷・熱刺激による成熟白色脂肪細胞の脂肪分解由来のリノール酸が、ベージュ脂肪細胞への高い分化能を知られるCD81陽性前駆細胞において脂肪酸トランスポーターCD36を介して取り込まれ、CD81陽性前駆細胞の増殖を誘発し、結果的にベージュ脂肪細胞化を来しているという機序を解明することに成功している。特に興味深い点として、thermoneutral condition下においても、リノール酸の経口補給によってCD36依存的なベージュ前駆細胞増殖を刺激することに成功しており、将来的な製薬の基盤となりうる重要な発見と考えられる。今後ヒトにおいてもリノール酸の経口補給が同様の結果を生じるかどうかの解明が期待される。武藤 朋也 先生:寒冷暴露や熱傷に反応したベージュ前駆脂肪細胞の増殖分子メカニズムが詳細に突き詰められている。特に、リノール酸の経口補給という簡便な方法でベージュ前駆細胞の増殖を刺激することが確認できていることは非常に興味深い。本論文であまり触れられていないように思ったが、肥満や糖尿病の病態や治療におけるベージュ脂肪細胞の重要性が言われていることから、本研究成果が臨床的にも応用されることが期待されると感じた。エピソード1)研究者を目指したきっかけ知らない世界は見てみたい、経験しないと分からないと思いました。2)現在の専門分野に進んだ理由理解しにくいことは、自分で経験しなければずっと理解できないと思ったから。3)この研究の将来性まだ漠然としていますが、いつか何かの役に立つと願っています。
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