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執筆者の写真cheironinitiative

[奨励賞]小島 秀信/カリフォルニア大学ロサンゼルス校

Hidenobu Kojima, M.D., Ph.D.
[分野:免疫アレルギー]
(T細胞CEACAM1とTIM-3の相互作用が肝移植に果たす役割の解明)
Gastroenterology, 01-November-2023

概要
肝虚血再灌流障害は早期グラフト不全や拒絶の原因となるため、その予防が肝移植医療における重要な課題となっている。我々の研究グループでは、T細胞の免疫チェックポイント受容体であるT-cell immunoglobulin and mucin domain 3 (TIM-3)が肝移植後虚血再灌流障害の軽減に重要な役割を果たすことを報告してきた。近年、carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule 1 (CEACAM1)がTIM-3のリガンドとして働くことが新たに発見され、CEACAM1はTIM-3の発現においても重要な役割を担うことが報告された(Nature. 2015;517:386-390)。そこで我々は、T細胞CEACAM1がTIM-3との相互作用を通して肝虚血再灌流障害を軽減するのではないかとの仮説を立て研究を行った。本研究ではマウス肝移植モデルを使用して、CD4陽性T細胞においてCEACAM1がTIM-3の発現を促進し、T細胞TIM-3が肝グラフト上のCEACAM1も認識して肝クッパー細胞の活性化を抑えることが示され、結果として肝移植後虚血再灌流障害の軽減につながることが分かった。またCEACAM1が欠如した状態においてはTIM-3を強発現させても肝虚血再灌流障害が軽減しないことを確認し、これにより肝移植においてTIM-3の保護効果を発揮するためにはCEACAM1とTIM-3の相互作用が重要であることが示唆された。さらに我々はヒトの肝移植検体を用いて解析を行い、肝移植レシピエントのCEACAM1が移植後肝障害、早期グラフト不全、さらに拒絶を軽減する可能性を示した。本研究によりT細胞CEACAM1が肝移植アウトカム改善に向けた治療戦略のターゲットになることが示された。今後は臨床検体を用いたより詳細な解析を検討しており、本研究のトランスレーショナルリサーチとしての役割が期待される。

受賞者のコメント
 この度は受賞の機会をいただきありがとうございます。今回の研究を発展させ実臨床に活かせるよう頑張ります。

審査員のコメント
倉島 洋介 先生:
肝移植後虚血再灌流障害 の予防・治療法につながるトランスレーショナルリサーチとしての役割が期待される研究成果です。CEACAM1ーTIM-3経路の関与について分子―細胞レベルから、マウスモデル、ヒト検体を用いた多角的に解析がなされており、移植医療に革新的な発展が見込まれる。

足立 剛也 先生:
本研究は、T細胞の免疫チェックポイント受容体に関わるシグナルが、肝移植後の虚血再灌流障害に寄与することを、マウスおよびヒトの検体を用いて明らかにしている。実際に移植後肝障害やグラフト不全、拒絶軽減につながることを示した成果は、基礎から臨床につながる新規治療開発戦略の立案に寄与するものと高く評価される。

小野寺 淳 先生:
臨床上重要な肝臓移植の際の一連の拒絶反応に関する分子機構にアドレスした論文です。CC1-TIM3の相互作用が重要であることを、CC1-KOマウスを用いた実験で示しています。マウスモデルでの実験は非常に緻密で秩序立てて行われております。最後にヒト検体を用いて、Post-/Pre-CC1が高い方が炎症が抑えられ肝障害の程度が低いことが示され、マウスモデルで得た知見をヒトで確かめるproof of conceptが実証されている点が評価できます。

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
肝移植医療における課題に対して新しい治療戦略を見出したいと思ったのがきっかけです。


2)現在の専門分野に進んだ理由
手術と肝臓に興味があったので現在の専門分野に進みました。

3)この研究の将来性
レシピエントのT細胞TIM3とCEACAM1が肝移植治療アウトカムにおいて重要な役割を担っている可能性が示唆されました。これらをマーカーとして肝移植ハイリスク患者を見出し治療介入することで肝移植の成績を向上させられるのではないかと考えています。

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