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執筆者の写真cheironinitiative

[奨励賞]橋田 久美子/ジョージア大学

Kumiko Hashida, Ph.D, ATC
[分野:ジョージア]
(脳振盪評価における臨床的二重課題テストの有効性)
Journal of Science and Medicine, 17-March-2022

概要
脳振盪はスポーツ医学の分野においての重大な問題の一つである。現在使用されている脳振盪評価の有効性は不十分で、脳振盪を起こした人の約半数は、学校やスポーツ競技に復帰した後に症状が再発することが報告されている。これは現在使用されている脳振盪評価では脳振盪のわずかな障害を特定できないことを示している。実験装置を用いた二重課題テスト(DT)は、神経心理学的テストや平衡感覚テストといった従来の測定が正常に戻った後でも、脳振盪後の障害を検出できることが示されている。しかし、臨床的に実施可能なDTの脳振盪評価ツールとしての有効性には疑問が残る。臨床的に実施可能なDTの有効性を確かめるため、本研究を行なった。今回著者らは運動課題としてタンデム歩行(TG)、認知課題として聴覚的純粋スイッチ課題(Auditory Pure Switch Task: APST)を用い、臨床的に実施可能なDTを構成した。その結果、脳振盪群は亜急性期および競技復帰後のDT中、対照群より有意に歩行が遅かった(p = 0.01)。しかしこの群間差はTGのみの時には示されなかった(p = 0.11)。この結果は、TGとAPSTを組み合わせることで、TG単独では検出できなかった群間差を検出できたことを示唆している。また脳振盪群は、競技復帰後でさえ対照群よりもDT TGを完了するのに約5秒長くかかった。これは脳振盪群に障害が残っているのにも関わらず、競技復帰している事を示している。臨床的に実施可能なDTは、今後学校生活やスポーツ競技への復帰の準備を整えるための補助的な脳振盪評価として考慮されるべきである。

受賞者のコメント
奨励賞を頂戴し、誠に光栄に思います。大学院で研究を初めた当初はデータ解析や執筆など物事をうまく進められず葛藤していました。今回受賞の対象となった論文は臨床現場で使用可能な脳振盪評価ツールに関する研究で博士論文の一部です。博士課程を通して出会った先輩や仲間、そして素晴らしいメンターに指導していただいたおかげでこのような賞を受賞できました。これからも初心を忘れず精一杯努力していきたいと思います。

審査員のコメント
斉川 英里 先生:
スポーツ医学医において大切だと思われる分野の研究であるのは間違いないが、論文にも書かれている通りサンプルサイズが小さいため二重課題テストの有効性を判断するのは少し難しいのではないかと思われる。

斧 正一郎 先生:
本論文は、現在University of Georgia でポスドクである応募者の橋田氏がハワイ大学に留学中の研究成果で、最初の筆頭著者論文ある。スポーツ分野で、脳震盪後の障害を評価するテストを検討し、二重課題テストのほうが、単一テストよりも有効であることを示唆する研究である。実地で応用できる可能性のある、ユニークな研究である。応募者がCorresponding author を務めるとのことから、応募者が主導して行った研究であることがうかがえる。しかし、当論文では、Dual-task testing の評価に限られ、スポーツ医学分野でのインパクトは限定的と思われる。

高山 秀一 先生:
この論文は、脳震盪診断における重要な臨床的ニーズに対応しています。実際の患者に基づく評価を行い、練習効果を適切にコントロールしています。しかし、小規模なサンプルサイズと弱い効果、ベースライン測定の不足は弱点です。この研究は将来の研究にとって貴重な一歩。受賞候補者にとって、キャリア構築の役に立つ論文です。

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
大学に在学中、研究アシスタントをして興味を持ったから。

2)現在の専門分野に進んだ理由
アスレティックトレーナーとして働いている際に、数多くの脳振盪を目にし他の障害とは違うところに興味を持ったから。

3)この研究の将来性
脳振盪を受傷した際の完璧な評価ツールが現在ありません。今現在使用している評価ツールでは十分ではないと言われています。さらに良い現場で使える脳振盪評価ツールを見つけ、アスリートの安全を守る。
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