Aki IIO-OGAWA4月8日読了時間: 3分[奨励賞]江島 弘晃/長崎国際大学Hiroaki Eshima, Ph.D.[分野:Disruptive Innovation Award]Lipid hydroperoxides promote sarcopenia through carbonyl stress.サルコペニアの新規分子機構の発見eLife概要加齢は全身性の臓器組織に障害をもたらすが、とくに骨格筋の筋量・筋力の現象(サルコペニア)は健康寿命の短縮につながる。しかし、現在のところ、サルコペニアに対する有用な薬剤は開発されておらず、有効な処方は存在しない。活性酸素種に由来した酸化ストレスは、あらゆる臓器・組織の障害時に発生するため、サルコペニアとの関連性が推定されるが、活性酸素は細胞シグナルが広大であるラジカル分子の集合体を指すため、どのシグナル分子がサルコペニアに寄与しているのかは不明である。 我々は、1) Glutathione peroxidase. 4(Gpx4)のトランスジェニックマウス、Gpx4ヘテロ接合体欠損マウス、GPx4骨格筋特異的欠損マウスを用いて、Gpx4がサルコペニアの制御因子であること、2) 過酸化脂質スカベンジャーのカルノシンを飲水投与したサルコペニアマウスモデルが筋量・筋力の減少を緩和させること、3) メカニズムとしてたんぱく質分解のオートファジー・リソソーム分解機構が骨格筋の筋量減少の機構を担うことを明らかにした。 これまで、サルコペニアに対する有用な治療法は確立されておらず、本研究は従来考えられてきた酸化ストレスとサルコペニアの関連性における新規メカニズムを明らかにし、水溶性補酵素によって治療が可能であることを世界で初めて明らかにした。そして、新規メカニズムとして過酸化脂質による骨格筋の分解機構はオートファジー・リソソーム分解機構が関与することを明らかにした。本研究は、過酸化脂質がサルコペニアの新たな分子機構となる可能性を示した。受賞者のコメント この度はUJA論文賞を受賞させて頂き、光栄に存じます。運営、審査員、スポンサーの方々に深く感謝するとともにこれからも良い研究成果を公表していきたいと思います。審査員のコメント早野 元詞 先生:lipid hydroperoxides (LOOH) が加齢もしくはglutathione peroxidase 4 (GPx4)の欠損によって増加し、筋肉の機能低下につながることや、原因に対してカルノシンを用いた機能評価を行い、オートファジー・リソソーム分解機構を用いた骨格筋における新しい治療標的として提案している研究として高く評価される。今後は、サルコペニアやDystrophyモデルを用いた筋力や持久力などの筋機能評価と、ヒトのサルコペニア病態との比較によって、どの製薬企業も成功していないサルコペニア治療薬が開発されることが期待される。黒田 垂歩 先生:サルコペニアは医療ニーズの高い疾患であり、その疾患に対する治療標的を探索する研究内容を高く評価する。一方で、活性酸素は関わる因子が非常に多く、その中でもGpx4が治療標的としてどの程度相応しいのかについて、これから検証されることが望ましい。赤木 紀之 先生:本研究では、酸化ストレスが骨格筋の萎縮における主要な要因であることが示された。酸化物質であるLOOHが年齢と伴に増加し、その蓄積が筋肉の減少を引き起こす。また、LOOHは特定の経路を介して筋肉の減少を促進する。LOOHの中和が筋肉の萎縮と弱さを効果的に防ぐ。サルコペニアにおけるLOOHの役割が判明したことから、この知見はサルコペニア治療のみならず、健康状態や生活の質を向上させる新たなアプローチや治療法の開発が期待される。エピソード1)研究者を目指したきっかけ 学部の卒論で研究の面白さ、院生の修士で実験の楽しさを知り、一生の仕事にしたいと思ったから。2)現在の専門分野に進んだ理由スポーツを専門にした経緯から運動生理学、生化学の研究に進んだ3)この研究の将来性寝たきり、運動不足、要介護で上手く身体を動かすことが出来ない方が、元気に運動できるような筋肉をつけるための治療法・予防法の開発に繋げたい
Hiroaki Eshima, Ph.D.[分野:Disruptive Innovation Award]Lipid hydroperoxides promote sarcopenia through carbonyl stress.サルコペニアの新規分子機構の発見eLife概要加齢は全身性の臓器組織に障害をもたらすが、とくに骨格筋の筋量・筋力の現象(サルコペニア)は健康寿命の短縮につながる。しかし、現在のところ、サルコペニアに対する有用な薬剤は開発されておらず、有効な処方は存在しない。活性酸素種に由来した酸化ストレスは、あらゆる臓器・組織の障害時に発生するため、サルコペニアとの関連性が推定されるが、活性酸素は細胞シグナルが広大であるラジカル分子の集合体を指すため、どのシグナル分子がサルコペニアに寄与しているのかは不明である。 我々は、1) Glutathione peroxidase. 4(Gpx4)のトランスジェニックマウス、Gpx4ヘテロ接合体欠損マウス、GPx4骨格筋特異的欠損マウスを用いて、Gpx4がサルコペニアの制御因子であること、2) 過酸化脂質スカベンジャーのカルノシンを飲水投与したサルコペニアマウスモデルが筋量・筋力の減少を緩和させること、3) メカニズムとしてたんぱく質分解のオートファジー・リソソーム分解機構が骨格筋の筋量減少の機構を担うことを明らかにした。 これまで、サルコペニアに対する有用な治療法は確立されておらず、本研究は従来考えられてきた酸化ストレスとサルコペニアの関連性における新規メカニズムを明らかにし、水溶性補酵素によって治療が可能であることを世界で初めて明らかにした。そして、新規メカニズムとして過酸化脂質による骨格筋の分解機構はオートファジー・リソソーム分解機構が関与することを明らかにした。本研究は、過酸化脂質がサルコペニアの新たな分子機構となる可能性を示した。受賞者のコメント この度はUJA論文賞を受賞させて頂き、光栄に存じます。運営、審査員、スポンサーの方々に深く感謝するとともにこれからも良い研究成果を公表していきたいと思います。審査員のコメント早野 元詞 先生:lipid hydroperoxides (LOOH) が加齢もしくはglutathione peroxidase 4 (GPx4)の欠損によって増加し、筋肉の機能低下につながることや、原因に対してカルノシンを用いた機能評価を行い、オートファジー・リソソーム分解機構を用いた骨格筋における新しい治療標的として提案している研究として高く評価される。今後は、サルコペニアやDystrophyモデルを用いた筋力や持久力などの筋機能評価と、ヒトのサルコペニア病態との比較によって、どの製薬企業も成功していないサルコペニア治療薬が開発されることが期待される。黒田 垂歩 先生:サルコペニアは医療ニーズの高い疾患であり、その疾患に対する治療標的を探索する研究内容を高く評価する。一方で、活性酸素は関わる因子が非常に多く、その中でもGpx4が治療標的としてどの程度相応しいのかについて、これから検証されることが望ましい。赤木 紀之 先生:本研究では、酸化ストレスが骨格筋の萎縮における主要な要因であることが示された。酸化物質であるLOOHが年齢と伴に増加し、その蓄積が筋肉の減少を引き起こす。また、LOOHは特定の経路を介して筋肉の減少を促進する。LOOHの中和が筋肉の萎縮と弱さを効果的に防ぐ。サルコペニアにおけるLOOHの役割が判明したことから、この知見はサルコペニア治療のみならず、健康状態や生活の質を向上させる新たなアプローチや治療法の開発が期待される。エピソード1)研究者を目指したきっかけ 学部の卒論で研究の面白さ、院生の修士で実験の楽しさを知り、一生の仕事にしたいと思ったから。2)現在の専門分野に進んだ理由スポーツを専門にした経緯から運動生理学、生化学の研究に進んだ3)この研究の将来性寝たきり、運動不足、要介護で上手く身体を動かすことが出来ない方が、元気に運動できるような筋肉をつけるための治療法・予防法の開発に繋げたい
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