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[奨励賞]駒津 匡二/UCLA歯学部

Keiji Komatsu, D.D.S., Ph.D.
[分野:南カリフォルニア]
チタン表面微細構造に応じた骨芽細胞の転写動態解明
Materials Today Bio

概要
歯科インプラント治療は、失われた歯を補うためにチタンなどの生体適合性材料を顎骨に埋め込み、人工歯を再建する方法である。この治療の成功は、生体材料と骨との間の直接的な結合、いわゆるオッセオインテグレーションに依存している。これまでにチタンのマイクロラフ表面(粗い表面)は骨芽細胞の分化を促進し、オッセオインテグレーションを強化することが示されている。さらに、マイクロラフ表面では骨芽細胞は効率的に骨芽細胞分化を進める一方で、細胞増殖は著しく低下するという特徴を有することが知られていたが、これらに関する詳細なメカニズムや特徴的な転写プロファイルは明らかではなかった。本研究では、チタンのマイクロラフ表面が骨芽細胞の挙動に与える影響を、RNA-sequencingに基づくネットワーク解析と代謝経路解析を通じて網羅的に調査した。結果、マイクロラフ表面は、骨形成に関連するバイオマーカーだけでなく、免疫系の活性化、外部刺激への応答、シグナル伝達経路の促進にも寄与することが判明した。さらに、細胞分化の初期段階では増殖細胞核抗原(PCNA)とサイクリンD1のアップレギュレーションが確認され、これらの因子の共発現が細胞周期のG1期からS期への移行を抑制することが示された。これらの発見は、オッセオインテグレーションの基本的なプロセスおよびそのメカニズムを説明し、さらに「高い細胞増殖能と分化能」を兼ね備えた新しいインプラント材料表面の開発への道を開くものである。

受賞者のコメント
このような素晴らしい賞をいただけてとても嬉しく思います。素晴らしい機会を与えてくださったUJAの皆様に心から感謝いたします。

審査員のコメント
Yasuyshi Ueki 先生:
歯科治療において生体適合性材料表面と骨を効率よく結合させることが欠損歯のインプラント治療の成功を左右する。結合において重要なのは骨芽細胞であり以前より様々な生体適合性材料表面における骨芽細胞の動態において様々な知見が得られてきたが、網羅的に材料表面の骨芽細胞の遺伝子を解析した研究はなかった。この論文はその先駆けとなる。さらにこの論文ではsmoothとmicroroughでの遺伝子発現の違いも網羅的に比較した。これらデータは今後の生体適合性材料の開発の際に遺伝子の発現パターンのをパラメーターとしてその結合効率や特性を評価できることを可能にするだろう。今後の歯科インプラント治療に大きく貢献することが考えられる。

金子 直樹 先生:
申請者らはチタン表面の微細構造が骨芽細胞の遺伝子発現に与える影響について、平滑な表面とacid-etchingされた粗い表面を比較し検討している。RNAseqでは荒い表面上の骨芽細胞は滑らかな表面上に比べ免疫応答やストレス応答に関連する遺伝子の発現が増加していた。また、粗い表面上の骨芽細胞は分化が促進され、mineralized matrix deposition, fibronectinとcollagenの産生、酸化ストレスマーカーが上昇していた。in vitroによる実験でin vivoでの実際の違いが確認されていないlimitationはあるものの、骨芽細胞がチタン表面の微細構造に与える影響についてより深い理解が得られ、人工物の埋め込み後の生着を高める技術の開発に役立つ可能性がある。

北郷 明成 先生:
チタンインプラントと生体組織間の界面における生物学的相互作用の詳細な解明は、インプラント治療の成果を最大化する上で不可欠である。本研究では、異なる表面特性を持つチタンインプラント上での骨芽細胞のRNA発現パターンをRNAシークエンシング技術を用いて分析し、特にマイクロラフネス表面が骨再生に関わる因子の発現促進に加え、免疫応答の調節、外的刺激への反応、およびシグナル伝達経路の活性化にも重要な役割を果たしていることを明らかにした。これらの発見は、歯科インプラント治療の理論と実践に新たな洞察を提供し、この分野における今後の研究と臨床応用に寄与するものと評価される。

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
大学院在籍時に尊敬する恩師との出会いが始まりでした。
2)現在の専門分野に進んだ理由
歯科インプラント学や歯周病学は、口腔内の軟組織と硬組織に焦点を当て、材料学とバイオロジーが融合する魅力的な領域です。
3)この研究の将来性
将来的に患者の生活の質(QOL)を向上させる優れたインプラント材料を開発・発見し、その臨床応用を目指すことが、私の研究モチベーションです。
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