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[奨励賞]高城 大治/シンシナティ小児病院


Daiji Takajo, MD, MPH
[分野:オハイオ]
小児本態性高血圧に左心室肥大とリモデリング
Cardiology in the Young, 23-November-2023

概要
この論文は、本態性高血圧と診断された小児患者において、心臓超音波検査によって定義される左心室肥大と人種の関係を描写した初めての1施設後方視的研究である。心電図によって定義される左心室肥大はアフリカ系アメリカ人に多いという過去の研究から、歴史的にアフリカ系アメリカ人では左心室肥大が多いと信じられている。本論文は、心臓超音波検査による形態学的評価で、小児患者において事実であるかどうかを調べようとしたことが背景にある。本論文はいくつかの点で新規性がある。まず、アフリカ系アメリカ人と白人を比較し、アフリカ系アメリカ人であることそのものが左心室肥大のリスクファクターではないことが分かった。次に、歴史的に慢性高血圧の結果であると信じられてきた左心室肥大は、本態性高血圧と診断されたばかりの小児でも一定数見られることが分かった。最後に、アフリカ系アメリカ人では、左心室肥大の中でもConcentric remodelingと呼ばれる種類の肥大の様式が白人に比べ多いことが分かった。
本論文では、腎疾患や泌尿器科疾患などによる二次性高血圧を除外し、肥満などの交絡因子を考慮した緻密な統計学的解析を行なった。422人の本態性高血圧の小児患者が研究に含まれ、心臓超音波検査の計測では検者間・内信頼性を評価して、より精度の高い解析を追求した。
小児における高血圧は、高い確率で大人でも続く上、左心室肥大は将来的な心不全のリスクを上げる。そのため、左心室肥大のリスク群を知ることは治療戦略上重要である。人種そのものではなく、肥満率の人種差が左心室肥大罹患率の人種差に寄与している可能性が本論文により示唆された。

受賞者のコメント
この論文は、自分のキャリアにとって良くも悪くも思い出深いものになると思います。プロジェクトに取り組んでいた時のポジティブな気持ちと、論文をパブリッシュするにあたり苦しい思いをした両方の思い出が詰まったものです。

審査員のコメント
Makiko Iwafuchi 先生:
人種と左心室肥大の相関に関する定説にチャレンジし、新たな相関因子(肥満率)を突き止めた功績は大きい。肥満が、いかに左心室肥大に寄与しうるのか、そしてその知識をいかに治療に役立てられるのか、今後の更なる研究の発展が期待される。

水野 知行 先生:
過去の研究から人種差に着目し、カルテから得られたリアルワールドデータを用いて、小児本態性高血圧患者における左心室肥大の有病率と関連のある要因を調査した研究です。ロジスティック回帰分析の結果、人種差ではなく、むしろ肥満の有無が左心室肥大の発症率と関連していることが新たな知見として見出されています。左心室肥大のリスク因子の情報は患者の早期発見、予防、治療方針の策定に役立つことが期待されます。

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
子どものためにより良い医療を提供したい。できるだけ良い医者になりたいと考えた結果、気がついたらアメリカで小児科医をしていました。
2)現在の専門分野に進んだ理由
尊敬する先輩を目標にしていたら、小児循環器(子どもの心臓)を専門にしていました。”大義”や崇高な理由も重要かもしれませんが、「大好きな先輩のような医者になる」という理由で、特定の専門分野を目指すことも決して悪くないと思います。
3)この研究の将来性
従来の、「人種(アフリカ系アメリカ人)のせいで、心臓に悪影響を及ぼしている」という考えを変えることができる論文だと信じています。
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