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執筆者の写真Jo Kubota

[特別賞]佐々本 尚子/ブリガムアンドウィメンズ病院

Naoko Sasamoto, Ph.D.

[分野:がん]
(卵巣がん診断前後の炎症性食事パターンと生存予後との関連)
British Journal of Cancer, October 2022

概要
 卵巣がんは未だ5年生存率が50%未満の予後不良の婦人科がんである。近年卵巣がんに対する新規治療薬の開発促進に伴い、卵巣がんの生存者はわずかではあるが増加傾向にある。よって、卵巣がん患者ががんの診断後に行える予後改善につながるライフスタイル因子の発見は、卵巣がんの予後改善に重要であり急務である。慢性炎症が卵巣がんの発生および進行に寄与していることはわかっているが、炎症を促進するような食事の摂取が卵巣がんの生存に与える影響に関してはデータが限られている。本研究は、Nurses' Health Studiesという米国の大規模前向きコホートデータを用いて、1,003名の卵巣がん患者において、卵巣がんと診断される前後に炎症を促進させる食事を摂取したことと生存予後との関連を検討した。その結果、卵巣がんと診断される前後に炎症を促進させる食事の摂取量が少なかった群と比較し、卵巣がん診断後に炎症を促進させる食事を多く摂取した患者群は卵巣がん関連死亡および全死亡リスクが高いことが分かった。本研究結果より、卵巣がん診断後に炎症を促進する食事パターンを摂取することが死亡リスクの上昇につながることが示され、卵巣がん患者への食事療法の有効性が示唆された。

受賞者のコメント
このような賞を頂けること、とても嬉しく思います!今後もがん診療にポジティブなインパクトを起こせるような研究に日々励みたいと思います。

審査員のコメント
片野田耕太 先生:
NHSデータの解析(応募者がデータ収集などをしていない)ではあるが、仮説が明確で食事の変化の影響も分析している点を評価。がん診断後の生活習慣と予後との関連はテーマとしても重要。

平田英周 先生:
卵巣がん診断前後の食事パターンと患者予後との関係を調査した論文です。多価不飽和脂肪酸や加工肉などの摂取量を指標としたスコアリングにより、炎症を促進させる食事が卵巣がんによる死亡リスクを上昇させることを示しています。がん治療における食事療法の有効性を示唆する重要な研究成果と言えます。

エピソード
日本では主に産婦人科臨床に従事していたこともあり、留学してはじめの数年はなかなか論文を出せず、苦しい時期がありました。今回の論文は、その時期をなんとか乗り越え、かつ臨床医としての疑問に挑むことができた内容をまとめることができたので、嬉しく思っています。

1)研究者を目指したきっかけ
産婦人科医師として患者さんの診療を行っている中で、より良い医療を提供したいという思いが強くなり、医学研究者を目指しました。

2)現在の専門分野に進んだ理由
患者さんのデータを使った研究(ビッグデータを使った研究)をしたいと思い、疫学研究の分野にすすみました。

3)この研究の将来性
本研究結果は、卵巣がん患者さんに食事パターンの指導を行うことで、より長く生きることができる可能性があることを示しています。
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