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執筆者の写真cheironinitiative

[特別賞]宮本 佳尚/米国疾病予防管理センター

Yoshihisa Miyamoto M.D., Ph.D.
[分野:ジョージア]
(コロナ禍の糖尿病スクリーニングへの影響)
Diabetes Research and Clinical Practice, 29-October-2023

概要
糖尿病とその前段階である境界型糖尿病は、それぞれ米国成人の13%、34.5%が罹患している。糖尿病は、心血管病、慢性腎臓病、網膜症、神経障害などの合併症を引き起こす可能性があることから、早期に発見し、健康な食生活・適切な運動習慣といった予防行動、医療ケアにつなげることが必要である。その早期発見には血糖測定が不可欠であるが、糖尿病・境界型糖尿病と診断されたことのない米国成人の38%が境界型糖尿病の基準を満たしたという報告もあり、そうした成人への継続的な啓発が必要である。
コロナ禍は、糖尿病をはじめとする慢性疾患管理や予防医療サービスの提供体制に悪影響を及ぼした。本研究では、米国の健康調査であるNational Health Interview Surveyを用い、米国における糖尿病と診断されていない成人への血糖測定実施がどの程度影響を受けたか、さらに社会背景・居住地域等によって影響が異なるかを検討した。
糖尿病と診断されていない成人のうち過去1年に血糖測定を受けた割合は、コロナ禍前の2019年の64.2%からコロナ禍の2021年では60.0%へ低下した。2019年と比較して2021年に血糖測定を受けた成人の割合が顕著に減少した集団は、非ヒスパニック系アジア人、ヒスパニック、西部居住者、大都市中心部居住者、医療保険非加入者、64歳以下の若年者であった。
本研究により、コロナ禍による予防医療サービスの一つである血糖測定実施への影響が、年齢、人種・民族性、社会背景・居住地域などにより異なることが明らかとなった。 血糖測定実施の遅れがコロナ禍後の未診断糖尿病の増加に関わるか、引き続きのモニタリングが必要である。血糖測定実施の減少が大きかった集団に対する継続的な糖尿病の啓発活動も必要である。さらに本研究は、将来起こりうるパンデミックにおいても継続しやすい予防医療サービスの提供体制を検討する必要を示している。

受賞者のコメント
栄えある賞を受賞させていただき光栄に思います。

審査員のコメント
斉川 英里 先生:
糖尿病とその前段階である境界型糖尿病診断のための血糖測定に関する研究である。コロナのため、予防医療サービスに影響があったことはよくわかっており、結果もある意味思った通りの結論だと言える。血糖測定実施の有無がどのように健康へ影響を与えたかということまで研究できれば面白かったのではと思う。

斧 正一郎 先生:
本論文では、2019-2021のコロナ禍において、血糖値測定がどのように行われたかを、人種別、生活背景による違い等を調査した研究である。多量なデータを統計的に解析した研究であるのは、特筆すべき点である。また、留学2年以内で、筆頭著者、およびCorresponding author も務め、研究の主導的立場を担っており、応募者の宮本氏の今後のキャリアにおいて重要な業績の一つである。

高山 秀一 先生:
Real world data on effect of covid on diabetes testing. The racial and ethnic heterogeneity in testing for blood glucose and change in these measures was quite interesting and surprisingly different. NH Asian decreased, NH American Indian and Alaska native was surprising, although maybe just low numbers effect. Multiple career building attributes such as 留学後、最初の筆頭著者としての論文である, 応募者がCorresponding Authorを務めている.

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
元々臨床医をやっており、実際の医療現場では教科書に載っていない問いに出くわすことが多々ありました。そういった問いを答える一つの手段として疫学を学び、研究に活かしたいと考えました。

2)現在の専門分野に進んだ理由
元々自身が日本で内科医をやっていました。その臨床経験とも関わりが強い専門領域の疫学研究を大学院の時からやっています。

3)この研究の将来性
疫学研究の重要な一つの側面として、タイムリーに起きていることを把握できることが挙げられます。今何が起きているかを数値で把握することが、医療現場、場合によっては政策にも必要です。新型コロナウイルス感染症の影響は、感染症が起きることそのものだけでなく、その他の領域で日常的に行われていることにも波及したことは皆さんの実感の通りかと思いますが、本研究はその一例かと思います。将来的に同様のパンデミックが起きないことがもちろん期待されますが、万が一そういったことが起きた場合に今回のパンデミックの経験を活かすために、どんなことが起きたかを記述した意味で、本研究が役に立つ可能性はあります。

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