B群溶連菌(group B Streptococcus, GBS)は、新生児敗血症の主な原因であり、アメリカでの致死率は7%近くにも登るとされている。また、高齢者や基礎疾患のある成人の侵襲性感染症の原因にもなっている。ペニシリンなどのベータラクタム系抗菌薬が新生児GBS感染症の予防抗菌薬投与や感染症治療に用いられてきたが、近年ベータラクタム系抗菌薬への薬剤感受性が低いGBSの報告がされてきた。これらのGBSにはペニシリン結合タンパク2Xの遺伝子であるpbp2xに変異があることが報告されているが、このベータラクタム系抗菌薬の感受性を低下させるpbp2xの変異が起こっていても、従来臨床の検査室でルーチンで行われる薬剤感受性試験の基準(Clinical and Laboratory Standards Institute, CLSI)だけを用いると、これらベータラクタムへの感受性が低下したGBS株は検知されない可能性があることがわかっている。米国疾病予防管理センターではGBSをはじめとする侵襲性細菌性感染症のサーベイランスを1990年代から行っており、2015年からはサーベイランスの一環としてルーチンに分離されたGBS株へのpbp2xの遺伝子変異も調べている。そこで過去のGBS株のpbp2x遺伝子変異を調べ、その結果をベータラクタム系抗菌薬への薬剤感受性試験の結果を比較することで、アメリカにおける過去20年のGBS株のベータラクタム感受性とpbp2x遺伝子異変の関係を調べることができると考えた。
コメント