Jo Kubota2023年4月9日読了時間: 4分[特別賞]山梨 豪彦/鳥取大学医学部附属病院Takehiko Yamanashi, M.D., Ph.D.[分野:Disruptive innovation Conceptual Innovation Award]Evaluation of point-of-care thumb-size bispectral electroencephalography device to quantify delirium severity and predict mortality (小型脳波デバイスと徐波化指標によるせん妄重症度と死亡率予測)The British Journal of Psychiatry, August 2021概要 せん妄は身体状態の悪化や薬剤によって一過性に脳機能不全を呈する病態である。せん妄は入院期間の延長、死亡率の悪化などと関係しており、早期発見および早期介入が重要であるが、診断には問診を中心とした主観的な評価が用いられており、診断までにかかる時間や評価者間の判断の不一致が臨床上の課題となっている。 せん妄の診断に、脳波測定による徐波化の検出が有用であることは知られているが、多くの患者にスクリーニングとして脳波検査を行うことは、検査にかかる人員や時間から現実的ではない。当研究室では、小型脳波デバイスとアルゴリズム化された脳波徐波化の指標(BSEEG法)がせん妄患者の検出に有用であることを過去に報告した。本研究ではさらに小型のデバイスを用いて279名の患者から得たデータを解析し、BSEEG法がせん妄の検出、せん妄の重症度の定量化、患者の入院日数や死亡率といった予後の予測に有用であることを報告した。 小型脳波デバイスとBSEEG法の組み合わせによる評価は、従来の脳波測定と比べてその簡便さから多くの患者に適応することが可能であり、これらの研究結果と併せて臨床場面への応用が期待される。受賞者のコメント 研究成果がこのような栄えある形で評価されて嬉しく思います!審査員のコメント森岡和仁 先生: T術後にも問題になるせん妄の新しいスクリーニングデバイスとスコアリングシステムの有効性に関する報告。バイスペクトル脳波を測定するBSEEGは測定器械が親指サイズかつ多数の電極を接着剤で固定して一晩測定する従来のEEGよりも各段に容易かつ低侵襲であり、入院日の3分の測定でせん妄の発生確率と死亡率を予測できる優れものである。臨床研究論文ではあるが、せん妄に対するBSEEG法の臨床スクリーニングとしての有用性を実証し、社会実装の可能性を示唆している。他のウェアラブルEEGとの優劣は不明であるが、対象がせん妄に特化され、測定対象が限定されていることから実現可能性が高く、今後各施設での導入が期待される。 本郷有克 先生: 非侵襲的にせん妄を検出することが出来るというユニークな研究。今後、せん妄が想定されるハイリスク患者にどう使ってもらうかまで踏み込んだ研究も行ってほしい。二見崇史 先生: 専門分野の壁を超えて伝わる価値があり、科学的好奇心をひきつける研究である。今後、介入試験含めたProspective analysisの結果に期待したい 本郷有克 先生: せん妄という医療の未解決課題に対して、客観的な定量化に取り組んでいる点を高く評価する。EEGという一般的な手法を用いた小型デバイスの設計、実臨床で得られたデータを用いて分析している点も良い。一方でデータを見る限り、Signal-to-Noise Ratioが大きいとは言えず(EEG手法の限界かも)、実臨床においてどの程度実用性があるのか、という点について多少疑問を感じた。アルゴリズムの改善など、更に発展があれば臨床的インパクトを出せる可能性はあると感じる。エピソード 留学期間中にPIの移籍に伴って、アイオワ→カリフォルニアの引っ越し車旅(6000km, 11泊12日)をしたのは良い楽しい思い出です。1)研究者を目指したきっかけ 私は精神科医として仕事をしています。最初は周りの医師が研究をするというので、私も流されて始めました。やっているとうまく成果が出ることが多かったため、今でも研究活動を続けることができています。2)現在の専門分野に進んだ理由 精神疾患の方は幻覚、妄想、気分の変化、などさまざまな症状を呈します。しかしそれらの症状を呈する機序はわかっていないことが多く、そこに一生仕事をする楽しさを予感しました。3)この研究の将来性 「せん妄」という体の不調に伴って発生する混乱が強い状態を、早期発見することで早い対処ができるようになることにつながります。
Takehiko Yamanashi, M.D., Ph.D.[分野:Disruptive innovation Conceptual Innovation Award]Evaluation of point-of-care thumb-size bispectral electroencephalography device to quantify delirium severity and predict mortality (小型脳波デバイスと徐波化指標によるせん妄重症度と死亡率予測)The British Journal of Psychiatry, August 2021概要 せん妄は身体状態の悪化や薬剤によって一過性に脳機能不全を呈する病態である。せん妄は入院期間の延長、死亡率の悪化などと関係しており、早期発見および早期介入が重要であるが、診断には問診を中心とした主観的な評価が用いられており、診断までにかかる時間や評価者間の判断の不一致が臨床上の課題となっている。 せん妄の診断に、脳波測定による徐波化の検出が有用であることは知られているが、多くの患者にスクリーニングとして脳波検査を行うことは、検査にかかる人員や時間から現実的ではない。当研究室では、小型脳波デバイスとアルゴリズム化された脳波徐波化の指標(BSEEG法)がせん妄患者の検出に有用であることを過去に報告した。本研究ではさらに小型のデバイスを用いて279名の患者から得たデータを解析し、BSEEG法がせん妄の検出、せん妄の重症度の定量化、患者の入院日数や死亡率といった予後の予測に有用であることを報告した。 小型脳波デバイスとBSEEG法の組み合わせによる評価は、従来の脳波測定と比べてその簡便さから多くの患者に適応することが可能であり、これらの研究結果と併せて臨床場面への応用が期待される。受賞者のコメント 研究成果がこのような栄えある形で評価されて嬉しく思います!審査員のコメント森岡和仁 先生: T術後にも問題になるせん妄の新しいスクリーニングデバイスとスコアリングシステムの有効性に関する報告。バイスペクトル脳波を測定するBSEEGは測定器械が親指サイズかつ多数の電極を接着剤で固定して一晩測定する従来のEEGよりも各段に容易かつ低侵襲であり、入院日の3分の測定でせん妄の発生確率と死亡率を予測できる優れものである。臨床研究論文ではあるが、せん妄に対するBSEEG法の臨床スクリーニングとしての有用性を実証し、社会実装の可能性を示唆している。他のウェアラブルEEGとの優劣は不明であるが、対象がせん妄に特化され、測定対象が限定されていることから実現可能性が高く、今後各施設での導入が期待される。 本郷有克 先生: 非侵襲的にせん妄を検出することが出来るというユニークな研究。今後、せん妄が想定されるハイリスク患者にどう使ってもらうかまで踏み込んだ研究も行ってほしい。二見崇史 先生: 専門分野の壁を超えて伝わる価値があり、科学的好奇心をひきつける研究である。今後、介入試験含めたProspective analysisの結果に期待したい 本郷有克 先生: せん妄という医療の未解決課題に対して、客観的な定量化に取り組んでいる点を高く評価する。EEGという一般的な手法を用いた小型デバイスの設計、実臨床で得られたデータを用いて分析している点も良い。一方でデータを見る限り、Signal-to-Noise Ratioが大きいとは言えず(EEG手法の限界かも)、実臨床においてどの程度実用性があるのか、という点について多少疑問を感じた。アルゴリズムの改善など、更に発展があれば臨床的インパクトを出せる可能性はあると感じる。エピソード 留学期間中にPIの移籍に伴って、アイオワ→カリフォルニアの引っ越し車旅(6000km, 11泊12日)をしたのは良い楽しい思い出です。1)研究者を目指したきっかけ 私は精神科医として仕事をしています。最初は周りの医師が研究をするというので、私も流されて始めました。やっているとうまく成果が出ることが多かったため、今でも研究活動を続けることができています。2)現在の専門分野に進んだ理由 精神疾患の方は幻覚、妄想、気分の変化、などさまざまな症状を呈します。しかしそれらの症状を呈する機序はわかっていないことが多く、そこに一生仕事をする楽しさを予感しました。3)この研究の将来性 「せん妄」という体の不調に伴って発生する混乱が強い状態を、早期発見することで早い対処ができるようになることにつながります。
山梨豪彦先生 受賞おめでとうございます!やまちゃんは私どもの誉れです! 益々のご活躍を!!
山梨先生受賞おめでとうございます!事務スタッフも応援しております!
山梨豪彦先生、栄えある賞をおめでとうございます。先生は鳥取大学医学部付属病院の誇りです。
山梨先生受賞おめでとうございます。先生の日々の努力が実り、我々心理チームも大変うれしく思います。これからのご活躍をお祈り申し上げます。