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執筆者の写真cheironinitiative

[特別賞]廣保 翔/大阪市立大学

Sho Hiroyasu, M.D., Ph.D.

[分野12:社会実装]
(グランザイムB阻害が自己免疫性水疱症の治療となることを動物モデルで証明)
Nature Communications, January 2021

概要
水疱性類天疱瘡は全身のかゆみを伴う水疱を臨床的特徴とし、高齢者に多く発症する自己免疫性皮膚疾患である。現在の一般的な治療である副腎皮質ステロイドの内服は、易感染性を引き起こすなど、場合によっては致命的な副作用を伴う。このため、副作用の少ない類天疱瘡治療薬の開発が急務である。
本研究では、類天疱瘡の水疱周囲で増加しているプロテアーゼのひとつであるグランザイムBに着目し、3種の動物モデルを用いて、グランザイムBが類天疱瘡の症状をより重篤にしていることを発見した。その仕組として、一つはグランザイムBが直接的に表皮真皮間の接着分子を切断していることを発見した。さらに、グランザイムBは表皮細胞からのIL-8分泌を促し、好中球のリクルートメントに関与していることを明らかにした。また、グランザイムBの外用阻害薬が、類天疱瘡の動物モデルの水疱を治療することを確認した。さらに、ヒト患者の水疱周囲や水疱液で、グランザイムBが増加していることを明らかにした。グランザイムBの細胞ソースは、マストセルと好塩基球だった。
今回グランザイムB阻害薬の外用が類天疱瘡動物モデルを治療することを明らかとし、同治療がヒト患者にも用いることができる可能性を示した。

受賞者のコメント
この度はUJA特別賞に選考いただき、誠にありがとうございます。本論文がpublishされた頃にはすでに帰国しており応募できる論文賞が限られていたため、こうした日本人研究者の海外での成果を評価していただける機会があり大変ありがたかったです。本研究を評価していただいた選考委員の先生方のご期待に答えられるよう、人々の健康に貢献できる皮膚科学領域の研究をこれからも行っていきたいと考えています。

審査員のコメント
早野元詞 先生:
類天疱瘡に対する効果的かつ副作用の少ない治療法がないが、本研究は新しい標的としてグランザイムBを見出している。Mast CellだけではなくBasophilsがGzmBを分泌し、COL17やinteginのタンパク質の分解や、MIP-2ホモログであるIL-8の増加に関与しており、GzymB阻害剤であるVTI-1002によるCOL17 integrityを介した治療効果を確認している。類天疱瘡の分子機序(MoA)を明確にしており、人のサンプルからもGzymB増加が観察されておりVTI-1002もしくは異なるGzmB阻害介入による類天疱瘡治療が期待される。今後は、VTI-1002の安全性試験、薬物動体に加えて、VTI-1002の物質特許などについても検討し、人での有効性試験に期待したい。

エピソード
本研究は、University of British ColumbiaのProf. David Granvilleの研究室で行いました。Daveが顧問を務めるベンチャーの製薬会社が皮膚科学分野に事業拡大をしたいというタイミングで、皮膚科医でもある私が彼のラボに参加し本研究が始まりました。大学院時代にも研究テーマにしていた、難治性皮膚疾患である類天疱瘡の新規治療につながる研究を発表することが出来、嬉しく思っています。アメリカの基礎系の研究室でポスドクをした後に、グラント獲得につながる可能性の高い臨床応用の可能性のある研究を行いたいと思い、セカンドポスドク先としてこの研究室を選んだので、当初の目的に合った研究を発表することが出来てよかったです。

1)研究者を目指したきっかけ
サイエンスフィクションの小説で描かれる研究者に憧れたため。
2)現在の専門分野に進んだ理由
皮膚は外界と自己を隔てる興味深い臓器だと思ったからです
3)この研究の将来性
自己免疫性皮膚疾患で、体中に水ぶくれができる類天疱瘡という疾患を治す新規治療をマウスを 用いて検証した研究です。今後、ヒトの類天疱瘡に臨床応用することを計画しています。
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