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[特別賞] 正田 哲雄/シンシナティ小児病院医療センター Cincinnati Children’s Hospital Medical Center

Tetsuo Shoda M.D.,Ph.D.

好酸球胃炎の分子的診断パネルの開発と検証

https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(19)31519-2/pdf

The Journal of Allergy and Clinical Immunology

Nov 15, 2019

Molecular, Endoscopic, Histologic and Circulating Biomarker-Based Diagnosis of Eosinophilic Gastritis: Multi-Site Study

 申請者は、重症アレルギー疾患である好酸球性胃炎(EG)の新たな診断パネルを開発・検証した論文を筆頭著者として執筆し、本論文は2019年11月The Journal of Allergy and Clinical Immunology誌に受理された。


好酸球性消化管疾患 (以下Eosinophilic Gastrointestinal Disorder:EGID)は、消化管を主座とする好酸球性炎症症候群の総称である。新生児・乳児から成人まで幅広い年齢層が罹患し、患者数は世界的に増加しているが、診断・治療法が確立しておらず、難病指定を受けその対策が望まれている。EGIDの中で患者数の最も多い好酸球性食道炎(EoE)の診断・治療は、過去10年間で大きく改善されたが、その一方で好酸球性胃炎(EG)ではいまだ十分に理解されていない。特に、生理的に好酸球の存在しない食道と比べ胃には少数ながら好酸球が存在していること・鑑別すべき他の様々な胃炎が存在することなどから、EGではより正確な診断プラットフォームが必要とされていた。

そのため、申請者は、胃生検組織の遺伝子発現による診断パネル(tissue-based diagnostic panel)ならびに血中バイオマーカーによる診断パネル(blood-based diagnostic panel)の開発と検証を目的とし、多施設共同研究を行った。


研究計画の立案後、EGと対照患者由来サンプルの処理と解析を実施した。診断的に重要な遺伝子を同定するため、探索コホートを組織し、網羅的遺伝子発現解析を行った。種々の解析を実施し、信頼性の高い48遺伝子をパネルに組み込み、検証コホートでその有用性を実証した。さらに、臨床的な有用性と利便性をより高くするため、少数の遺伝子(18遺伝子)に基づいた診断スコアを確立した。この診断スコアを二つの独立したコホートで検証したところ、高い診断能、治療前後での病勢の反映、胃組織好酸球との相関が確認された。また、EGに特徴的な病理・内視鏡所見との相関も高く、病理所見と関連する遺伝子群、内視鏡所見と関連する遺伝子群は、それぞれの特徴に合致する独自の機能を有していた。


上記の成果にて、胃生検組織の遺伝子発現による診断パネルの有用性を明らかにしたが、生検組織を採取する内視鏡検査の侵襲性は非常に高い。そのため、少量の血液でも計測可能なバイオマーカーによる診断法の確立を試みた。生検組織の網羅的遺伝子発現解析から疾患特異的バイオマーカー候補を抽出し、その候補の中から特に血中で測定可能なサイトカイン・ケモカインに注目した結果、EG患者群に特異的な血中サイトカインの上昇を複数見出した。臨床的に汎用性の高い血清と血漿それぞれにおいて、血中サイトカインに基づいた診断スコアを開発したところ、いずれも高い診断能を示した。最後に、同一患者における全身(血液)・胃局所(生検組織)の分子プロファイルの相関解析から、特にCCL26/eotaxin-3がEGの病態に深く関わっていることを示した。


以上の研究成果から、診断に難渋することの多いEGに対して複数の有用な診断・管理ツールを提供した。本診断パネルはすでに多施設での前向き臨床研究にて応用しており、臨床的には全身・炎症局所の分子生物学的なプロファイルに基づく新たな診断プラットフォームとして期待されている(特許登録済)。

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