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[特別賞]小倉 洋二 /University of Louisville

更新日:2022年4月25日

Ogura, Yoji, M.D., Ph.D.

[分野1:整形外科]
(成人脊柱変形手術におけるFAQsとanswers)
Journal of Neurosurgery Spine, August 2020

概要
近年高齢化とインプラントの進化に伴い、成人の脊柱変形手術が可能となってきた。成人脊柱変形は透析と並ぶほどQOLが低いことが明らかにされており、治療法の確立は急務である。一方で手術が可能となってきたのはここ10-15年くらいであり、治療法のゴールドスタンダードや合併症や再手術率など、明らかなエビデンスがないのが現状である。そこで、われわれは患者からのFAQs(Frequently Asked Questions)を収集し、下記の12個のFAQsに対してISSG(International Spine Study Group)の多施設研究データベースを用いて、世界で初めてuniversalなエビデンスを作成した。
本研究グループは世界で最大の研究グループでN=521人で解析することで現在のところ世界で最も信頼性の高いデータを提供することに成功した。
本研究は患者が手術または保存療法を選択する際に、世界中で大きな指標となると思われる。

FAQs
1. 痛みはよくなりますか?: 腰痛、下肢痛ともに約50%に減ります
2. 生活動作のレベルは改善しますか?: 約65%の患者さんが改善を感じます
3. 見た目は改善しますか?:70%以上の 患者さんが改善を感じます
4. 術後に今より悪くなることはありますか?:4.1%の人が術後2年の段階で術前より悪くなったと感じます
5. 合併症はどのくらい起こりますか?:67.8%の人が合併症を経験し、47.8%の人がmajor complicationを経験します
6. 再手術率はどのくらいですか?:25.0%の人が2年以内に再手術を要します。
7. 術後に手術をしたことを後悔しますか?:6.5%の人が手術をしたことを後悔します
8. 輸血は必要ですか?:73.7%の人が輸血を要します。
9. 入院はどのくらい必要ですか?:平均8.1日です。
10. ICU入室は必要ですか?:76.0%の人がICUに入室します。
11. 仕事には復帰できますか?:70%以上の人が術後1年の時点で仕事に復帰しています。
12. 術後に身長は高くなりますか?:平均1.1cm高くなります。

受賞者のコメント
この度は栄誉あるUJA特別賞の授与、また整形外科分野として初めての受賞ということで大変嬉しく思っております。UJAのDirector・審査員の先生方には感謝申し上げます。成人脊柱変形の分野はまだまだevidenceの不足している分野であり、International Spine Study Group (ISSG)という栄誉あるstudy groupの研究に含めていただき、また、研究内容そのものも非常に意義がある臨床研究だったと考えていましたので、このようにawardという形で評価していただいたことを大変うれしくおもいます。すべての共著者の先生方、メンターに心より感謝申し上げます。

エピソード
良い研究をするためには自分でよいテーマを考えるか、よいテーマを割り振ってもらうために信頼を勝ち得ていくしかありません。私の場合は臨床研究ですが、最初は小さい研究を割り振ってもらい、論文を書くのが上手だな、とおもわせることができてこのようなよいテーマを振ってもらうことができました。外国人がアメリカで認めてもらうのは非常に大変ですが、研究はアメリカ人より日本人がまさっていると感じました。

1)研究者を目指したきっかけ
良い手術は1人の患者さんしか助けられませんが、よい研究は多くの人を助けることができるとメンターが言っていました。その通りだと思います。
2)現在の専門分野に進んだ理由
手術が好きだけど腫瘍には興味がなかったため整形外科に決めました。また、自分がスポーツをやっていてけがで手術を受けたことがある経験も整形外科に決めた理由の一つです。
3)この研究の将来性
脊椎外科分野では大人の脊柱変形(側弯症や後弯症)はいまだに多くのエビデンスがなく、また、治療法も発展途上です。現在ベストだと思われている治療法でどの程度合併症がおこるのか、再手術率はどのくらいか、手術をすればどの程度よくなるのか、そういった患者さんからよく出る11個の質問に対して大規模データベースを用いて答えを用意したのが本論文です。外科医が患者さんに術前の説明をするときに使えるガイドラインとして使われていくと思います。
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