cheironinitiative4月8日読了時間: 3分[特別賞]清家 圭介/岡山大学病院Keisuke Seike, M.D., Ph.D.[分野:免疫アレルギー]Ambient oxygen levels regulate intestinal dysbiosis and GVHD severity after allogeneic stem cell transplantation(腸内酸素濃度変化による腸GVHDの制御機構)Immunity, 01-February-2023概要 同種造血幹細胞移植後のGVHDでは腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)が生じていることが知られている。一方、dysbiosisがGVHDを誘導しているのか、あるいはGVHDがdysbiosisを誘導しているのかは不明であった。腸GVHDでは、腸上皮細胞のミトコンドリア電子伝達系複合体IIが障害されることにより、腸上皮細胞による酸素消費が低下し、腸上皮での酸素濃度が上昇することを発見した。腸内の酸素濃度の変化によって、腸内細菌叢の多様性が失われ、dysbiosisが進むことを明らかにした。次に、dysbiosisが腸GVHDを誘導するかという問いに対して、正常マウス、抗生剤によって細菌を除去したマウスまたはgerm-freeマウスにdysbiosisを起こした便を移植したところ、dysbiosisを起こした便は腸GVHDを誘導しなかった。一方で、健常な腸内細菌叢は腸GVHDの重症度を改善させることが判明した。さらに、腸内酸素濃度上昇は、活性酸素による腸GVHD増悪につながると考え、鉄キレート剤を用いてFenton反応抑制効果による腸GVHD治療の可能性を検討した。鉄キレート剤をGVHDマウスモデルに経口投与することにより、腸GVHDを改善することに成功し、加えて鉄キレート剤は腸内酸素濃度を低下させ、健常な腸内細菌叢を誘導することが判明した。本研究は、腸内酸素濃度調整による新たな腸GVHD治療法開発につながると期待されている。受賞者のコメント 留学中最後の論文にこのような賞を頂き大変光栄です。ボスであるPavanや、ラボメンバーに感謝しています。審査員のコメント後藤 義幸 先生: 移植片対宿主病(GVHD)を含む腸管炎症では、腸内細菌叢の攪乱と病態形成の関係がこれまで指摘されてきました。本論文では、ノトバイオートマウスを含む種々のユニークなマウスモデルを用い、GVHDの病態形成における腸内細菌および宿主上皮細胞が産生する酸素濃度の重要性を明らかにしています。さらに、腸管における酸素濃度を鉄キレート剤で調節することで、GVHDの症状もコントロールすることができる可能性も示しており、医学的、生物的観点からも重要な研究に位置付けられます。倉島 洋介 先生: これまで腸内細菌に対する様々な介入法による腸炎を含めた疾患制御法についての可能性が示されてきたが、本研究成果は腸内酸素濃度調整という新たなアプローチによって、腸GVHD治療法開発を期待される優れた成果である。鉄キレート剤を用いてFenton反応抑制効果による腸GVHD治療という新たな治療アプローチが期待できる。森田 英明 先生: GVHDとDysbiosisの関係性を、段階を追って一つ一つのステップを丁寧に検証し、明らかにしている。実際の治療にも結びつく可能性のある知見である。エピソード1)研究者を目指したきっかけ 小学生の頃から病気の治療をしたいと思い医師を目指し、同時に病気の治療につながる研究をしたいと漠然と考えていました。私が日本で所属している岡山大学第二内科は、基礎留学経験がある医師が多く、その先生方から研究や留学について話を聞き、研究を開始するきっかけになりました。2)現在の専門分野に進んだ理由 医師免許取得後、血液内科を専門とし、多くの造血幹細胞移植を経験しました。その際血液がんでも完治の可能性が十分にあると感じたと同時に、治療による副作用で苦しむ患者も多く経験しました。副作用を抑えつつ、より効果的な治療を開発を目標とし、造血幹細胞移植の研究を始めました。3)この研究の将来性 血液がんにおいて完治を目指せる造血幹細胞移植は副作用も多く、大変な治療です。私たちの研究は、副作用の軽減しお、治療効果をさらに高めることを目標としています。
Keisuke Seike, M.D., Ph.D.[分野:免疫アレルギー]Ambient oxygen levels regulate intestinal dysbiosis and GVHD severity after allogeneic stem cell transplantation(腸内酸素濃度変化による腸GVHDの制御機構)Immunity, 01-February-2023概要 同種造血幹細胞移植後のGVHDでは腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)が生じていることが知られている。一方、dysbiosisがGVHDを誘導しているのか、あるいはGVHDがdysbiosisを誘導しているのかは不明であった。腸GVHDでは、腸上皮細胞のミトコンドリア電子伝達系複合体IIが障害されることにより、腸上皮細胞による酸素消費が低下し、腸上皮での酸素濃度が上昇することを発見した。腸内の酸素濃度の変化によって、腸内細菌叢の多様性が失われ、dysbiosisが進むことを明らかにした。次に、dysbiosisが腸GVHDを誘導するかという問いに対して、正常マウス、抗生剤によって細菌を除去したマウスまたはgerm-freeマウスにdysbiosisを起こした便を移植したところ、dysbiosisを起こした便は腸GVHDを誘導しなかった。一方で、健常な腸内細菌叢は腸GVHDの重症度を改善させることが判明した。さらに、腸内酸素濃度上昇は、活性酸素による腸GVHD増悪につながると考え、鉄キレート剤を用いてFenton反応抑制効果による腸GVHD治療の可能性を検討した。鉄キレート剤をGVHDマウスモデルに経口投与することにより、腸GVHDを改善することに成功し、加えて鉄キレート剤は腸内酸素濃度を低下させ、健常な腸内細菌叢を誘導することが判明した。本研究は、腸内酸素濃度調整による新たな腸GVHD治療法開発につながると期待されている。受賞者のコメント 留学中最後の論文にこのような賞を頂き大変光栄です。ボスであるPavanや、ラボメンバーに感謝しています。審査員のコメント後藤 義幸 先生: 移植片対宿主病(GVHD)を含む腸管炎症では、腸内細菌叢の攪乱と病態形成の関係がこれまで指摘されてきました。本論文では、ノトバイオートマウスを含む種々のユニークなマウスモデルを用い、GVHDの病態形成における腸内細菌および宿主上皮細胞が産生する酸素濃度の重要性を明らかにしています。さらに、腸管における酸素濃度を鉄キレート剤で調節することで、GVHDの症状もコントロールすることができる可能性も示しており、医学的、生物的観点からも重要な研究に位置付けられます。倉島 洋介 先生: これまで腸内細菌に対する様々な介入法による腸炎を含めた疾患制御法についての可能性が示されてきたが、本研究成果は腸内酸素濃度調整という新たなアプローチによって、腸GVHD治療法開発を期待される優れた成果である。鉄キレート剤を用いてFenton反応抑制効果による腸GVHD治療という新たな治療アプローチが期待できる。森田 英明 先生: GVHDとDysbiosisの関係性を、段階を追って一つ一つのステップを丁寧に検証し、明らかにしている。実際の治療にも結びつく可能性のある知見である。エピソード1)研究者を目指したきっかけ 小学生の頃から病気の治療をしたいと思い医師を目指し、同時に病気の治療につながる研究をしたいと漠然と考えていました。私が日本で所属している岡山大学第二内科は、基礎留学経験がある医師が多く、その先生方から研究や留学について話を聞き、研究を開始するきっかけになりました。2)現在の専門分野に進んだ理由 医師免許取得後、血液内科を専門とし、多くの造血幹細胞移植を経験しました。その際血液がんでも完治の可能性が十分にあると感じたと同時に、治療による副作用で苦しむ患者も多く経験しました。副作用を抑えつつ、より効果的な治療を開発を目標とし、造血幹細胞移植の研究を始めました。3)この研究の将来性 血液がんにおいて完治を目指せる造血幹細胞移植は副作用も多く、大変な治療です。私たちの研究は、副作用の軽減しお、治療効果をさらに高めることを目標としています。
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