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執筆者の写真cheironinitiative

[特別賞] 渡辺知志 /Northwestern University

Satoshi Watanabe, M.D., Ph.D.

肺線維症における単球由来肺胞マクロファージの機能と維持機構の解明

A spatially restricted fibrotic niche in pulmonary fibrosis is sustained by M-CSF/M-CSFR signaling in monocyte-derived alveolar macrophages

European Respiratory Journal

2020年1月


肺線維症は肺に不可逆的な線維化を引き起こす難治性肺疾患であり、病態の解明と治療法の開発が望まれている。肺胞マクロファージは高い可塑性と多様性をもつ肺の免疫担当細胞であり、外来病原体の貪食や恒常性維持に重要な役割を果たしている。肺線維症において、線維化領域に肺胞マクロファージが集簇することは以前より知られていたが、その機能や役割については不明であった。そこで筆者らは、局所に線維化病変を形成するアスベスト肺線維症マウスモデルを使用し、線維化領域に集簇する肺胞マクロファージの由来や機能、維持機構について検討した。線維化領域に集簇する肺胞マクロファージには組織常在型と単球由来型の2つのサブタイプを認め、各々の枯渇実験より、単球由来肺胞マクロファージが肺の線維化の形成に関与することを明らかにした。またシングルセルRNAシークエンス解析より、組織常在肺胞マクロファージがGM-CSFR(CSF2R)を発現するのに対し、単球由来肺胞マクロファージはM-CSFR(CSF1R)を発現することを見出した。そして単球由来肺胞マクロファージは肺胞上皮傷害と線維芽細胞の活性化に関与し、線維化促進の微小環境を形成していることが示唆された。さらに肺線維症モデルにCSF1抗体やCSF1R阻害薬を投与したところ、単球由来肺胞マクロファージの減少および肺線維化の縮小を認めた。以上のことから、肺線維症において単球由来肺胞マクロファージが線維化領域に集簇し、その維持にM-CSF/M-CSFRシグナルが関与することを明らかにした。M-CSF/M-CSFRシグナルは肺線維症の新たな治療標的となることが期待される。


受賞者のコメント:

この度は特別賞に選んでいただき、大変光栄に感じております。現在は帰国し、本研究の成果を基盤に基礎・臨床研究を進めています。本受賞を励みに、今後も肺線維症の研究を続けていきたいと思います。審査して下さったUJAの先生方、勉強会を通してアドバイスいただきましたNUJRAの皆様、Northwestern大学呼吸器内科ラボメンバーの皆様に感謝申し上げます。


審査員のコメント:

近年、明らかとなりつつある臓器特異的マクロファージの疾患との関係性について、アスベスト肺線維症モデルにおいて、in vivo モデル、シングルセル解析など多角的に解析を進め、治療標的の導出にまでたどりついている。(武部先生)


単球由来肺胞マクロファージが肺の線維化の形成に関与し、M-CSF/M-CSFRシグナルが関与することを明らかにした。Extensiveな実験がされています。(増田先生)


エピソード: 肺線維症は肺に不可逆的な線維化を呈する疾患です。それを模倣するため、本研究ではアスベスト誘発肺線維症モデルを用いました。何よりもまず自分が病気にならないことが大前提で、モデル作製の手技や検体の取扱いに細心の注意が必要でした。また途中でアスベストの調達が中止され、限られた資源の中で研究を進めなければなりませんでした。色々と制約がある中、ラボメンバーの協力のお陰で、これまで解析が困難であった線維化を促進する肺胞マクロファージの機能と維持機構を明らかにすることができました。 高校生からの質問: 1)研究者を目指したきっかけを教えてください  医師として働いている中で、現在の医療に限界を感じたため。 2)現在の専門分野に進んだ理由を教えてください  解明されていない病気や治療法が多いから。 3)この研究が将来、どんなことに役に立つ可能性があるのかを教えてください。  新たな治療法の開発に役立つ可能性がある。

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