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[特別賞]舘越 勇輝/札幌医科大学

Yuki Tatekoshi, M.D., Ph.D.
[分野:イリノイ]
(SNRKが制御する心筋肥大リモデリング)
Circulation, 18-September-2023

概要
本研究では、AMPKファミリー蛋白であるSNRKが、心筋細胞の核形態およびDNA損傷応答 (DDR) 経路を制御し、結果心筋細胞の肥大リモデリングに関与していることを示した。具体的な分子機序として、SNRKはアクチン脱重合活性を有するDSTNを直接標的としてリン酸化し、核形態の維持に重要な役割を果たすことを示した。心筋細胞特異的SNRKノックアウトマウスでは核形態の異常を認め、さらに酸化ストレスによるDNA傷害が増悪し、結果賦活化されるDDR経路が心筋細胞の肥大に寄与していることを示した。
心筋肥大は、高血圧患者、心筋症、左室駆出率の保たれた心不全 (HFpEF) など多岐に渡る循環器疾患で認められる。心臓の構造・機能における病的なリモデリングにより、心臓突然死や心不全の進展に関わる重要な病態である。本研究はその分子機序の一端を明らかにするものであり、今回発見した経路を標的とした新規治療法の開発が期待される。

受賞者のコメント
歴史あるUJA論文賞の特別賞に選出いただき身に余る光栄です。

審査員のコメント
本間 和明 先生:
DNA損傷応答が心筋肥大と関連することが知られている。本研究はマウスモデルと心筋由来の培養細胞を用い、AMPKファミリー蛋白であるSNRKが、DSTNとの直接作用を介して核形態に影響することを示し、それが心筋肥大のメカニズムを解明する鍵となることを示唆するものである。この知見は心筋肥大に対する新規治療法の確立に繋がる可能性があり重要である。Snrk cKOマウスのstrain background、実験時の年齢、cKOを得るために用いたCre/lox line情報、trans aortic bandingの方法、ATM阻害剤の投与量と経路、H9c2細胞の培養条件などの情報開示や先行研究にて確立されている手法の引用に関して改善の余地がある。

渡辺 知志 先生:
SNRKが心筋細胞の核形態およびDNA損傷応答経路を制御し、心筋肥大に関与することを示した研究論文である。心筋細胞特異的SNRKノックアウトマウスを用いて心筋細胞肥大への影響を評価し、核形態やDNA傷害応答など細部のメカニズムにも焦点を当てている。NSRK/DSTNを標的とした治療への展開や、実臨床において心肥大とSNRK機能との関係性についてさらなる研究が期待される。

牛島 健太郎 先生:
本研究は心筋肥大リモデリングの中核的役割を担う分子(SNRK)を明らかにし、さらにDNA損傷応答経路における具体的な分子動態を解明した革新的な内容です。特に、心筋細胞特異的SNRKKOマウスにおける大動脈結紮後の心機能評価の結果(図1)から読者の関心をひきつけるものであり、そして全体を通して整合性のある結果が示されています。本研究の成果から、SNRK/DSTN をターゲットとする新規治療薬の創出が期待されます。

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
研修医の時に大学院入学を勧められたこと

2)現在の専門分野に進んだ理由
研修医として循環器内科をローテートした際に、病気だけではなく、ヒトを全人的に捉える姿勢に感銘を受けたから。

3)この研究の将来性
DNAに障害が生じると、癌、老化などが生じます。心臓では心肥大を起こすことが知られており、今回の研究ではそのメカニズムを実験マウスなどを用いて解明しました。心肥大は高血圧など生活習慣病を合併するひとでよく見られる病態であり、心臓突然死などを引き起こすリスクを増大させます。今回の研究をもとに、そういった方のさらなる病態理解・新しい治療法の開発に役立てていくのが今後の目標です。

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