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執筆者の写真cheironinitiative

[特別賞]貝原 俊樹/聖マリアンナ大学

Toshiki Kaihara, M.D., Ph.D.
[分野:ベルギー・ドイツ]
(冠疾患患者に対する「スマホアプリ」による栄養指導)
Digital Health, 23-March-2023

概要
冠動脈疾患の2次予防に適正な栄養管理は不可欠である。しかし、デジタル技術を使用した遠隔での栄養管理の可能性を検討した研究はほとんど無い。本研究では、冠動脈疾患患者が食事の写真をスマートフォンのメッセージングアプリケーションを使用して管理栄養士に送り、患者がアプリケーションを通じて栄養教育やフィードバックを受けるシステムの有効性を検討した。
冠動脈疾患患者60名を介入群と対照群に無作為に割り付けた。介入群の患者は、スマートフォンのメッセージングアプリケーションを使用した管理栄養士による食事教育に参加した。12週間の介入期間のうち、第1・5・9週の計3週間で摂食したもの全てを上記アプリケーションで管理栄養士に送信し、フィードバックを受けた。主要評価項目は地中海食スコア(Mediterranean diet score)の変化とした。地中海食スコアを修正した「栄養スコア」、栄養に関する知識を表す「栄養知識スコア」、観察期間中の血液検査(血中脂質、血糖、腎機能)、肥満度、自己効力感、服薬アドヒアランス、健康関連の生活の質を副次評価項目として分析した。
ベルギーのハッセルト市にあるイェッサ病院で冠動脈疾患に対して治療を受けた60名が試験に参加し、そのうち50名のデータが解析に回った。介入群における地中海食スコアの変化量は対照群よりも大きかったが、有意ではなかった(2.0 [-1.0, 4.0] vs. 0.0 [-3.0, 1.5], p = 0.066)。介入群の栄養スコアの変化量は、対照群よりも有意に大きかった(3.0 [1.0, 3.5] vs. 0.0 [-3.0, 2.0], p = 0.029)。介入群の栄養知識スコアは対照群に比べ有意に向上した(1.9±1.7 vs. 0.8±2.1, p = 0.048)。
スマートフォンのメッセージングアプリケーション上で管理栄養士に食事写真を送信してフィードバックを受けるシステムは、冠動脈疾患患者の栄養に関する知識向上に良好な効果をもたらした。本研究の結果は、今後デジタル機器を使用した栄養管理を実装するヒントになり得る。"


受賞者のコメント
現地で苦労して施行したRCTだったので,評価して頂いて素直に嬉しいです.

審査員のコメント
大久保 正明 先生:
デジタル機器を用いたフィードバックのシステム開発により冠動脈疾患のリスク管理を簡便にする可能性があり期待されます。

須藤 晃正 先生:
冠動脈疾患の二次予防は過去にも報告されているが、多くは薬物治療の有効性についてである。食事内容の改善は実臨床において患者さんの自主性に任される傾向にあり、Kaihara等のようにスマートフォンを用いた栄養管理の有効性についての論文は画期的と言える。Kaihara等の研究では、少数例にもかかわらず、介入群の栄養スコアの変化量、栄養知識スコアに有意差を持って改善したことは特筆すべきことと言える。今後、栄養管理の介入が予後に影響を与えるかどうかの長期的な研究に期待する。

谷 哲夫 先生:
スマートフォンアプリを介した食事フィードバックが冠動脈疾患の2次予防の有効性に繋がる可能性を示した研究と考えられた。

矢川 真弓子 先生:
デジタル技術を使用した遠隔での栄養管理の可能性を検討した研究は独創的である。冠動脈疾患患者が食事の写真をスマートフォンのアプリケーションを使用して管理栄養士に送り、患者がアプリケーションを通じて栄養教育やフィードバックを受けるシステムは有用である。スマートフォンを使用した、スステムの構築は、地域による医師の偏在化が進む日本においても有効なツールとなる可能性がある。本法は冠動脈疾患だけでなく、糖尿病など多くの疾患に適応を拡大できる可能性を秘めており、今後の発展が期待される。

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
論文や書籍が世に出て,全世界の医療者・患者に還元出来る喜びを味わったから

2)現在の専門分野に進んだ理由
生死をさまよっている人を助ける,シンプルかついざという時に頼りになる仕事内容に魅力を感じたから

3)この研究の将来性
食事内容は個々で違います.今後鍵となる「個別化医療」では,本研究のスマホアプリに代表されるデジタルヘルスケアは急速に広がっていく可能性があります.

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