私の場合、日本での専門医や助教職を経て、米国のMemorial Sloan Kettering Cancer Centerに博士研究員として留学しました。このプロジェクトで幸運だったのは米国内、例えばUCSFやシアトルのFred Hutchinson Cancer Research Centerのその道の第一人者の研究者たちと議論を重ねて方向性を決めていけたことです。実は同様のプロジェクトを行っているグループが米国内外に複数あり、競合していることを意識していました。米国にいることで、他グループの状況をある程度把握することができましたし、状況を楽しみながら進めていけたと思います。前述のZRSR2遺伝子変異の解析からプロジェクトに入りましたが、進めていくうちに「これほど大事なマイナーイントロンが脱制御してしまう過程にZRSR2変異以外の原因があるに違いない」という思い込みに至りました。この仮説が、マイナーイントロン自身の保存配列の変異の発見という成果にもつながりました。ただ、仮説を実証する上で、米国内のネットワークなしでは不可能でした。そう言った意味でも米国での経験は私にとって何事にも変えがたい喜びに昇華していきました。感染症や紛争など、国際情勢が目まぐるしく変わる昨今ですが、米国で様々なバックグラウンドをもつ人々とともに研究をする、この経験を1人でも多くの方に味わっていただけたらと思います。
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