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[論文賞] 北本祥 /University of Michigan Medical School

Sho Kitamoto

口-腸粘膜免疫のクロストークから紐解く腸炎増悪メカニズム

The Intermucosal Connection between the Mouth and Gut in Commensal Pathobiont-Driven Colitis

Cell

2020年7月23日


世界的に患者数が増加の一途を辿る炎症性腸疾患(IBD)は、その病態形成メカニズムの解明が急務となっている。これまでに「腸内細菌叢の乱れ」がIBDの病態形成に深く関わることは明らかになっていたが、その詳細は不明であった。この問題を解決すべく近年、IBD患者の腸管粘膜を対象に大規模な細菌叢解析が行われ、IBD患者の小腸末端および大腸の腸粘膜にはFusobacteriaceaeやPasteurellaceaeをはじめ多くの「口腔細菌が蓄積」していることが報告された。興味深いことに、IBD患者は腸管外病変として歯周炎の罹患率が健常人と比べ高く、口腔細菌叢が乱れた状態であることが報告されている。我々はこれらの知見をもとに、「口腔炎症に伴う乱れた口腔細菌叢は、腸管に対して炎症性の形質を有する口腔常在細菌の温床となり腸炎の増悪に関与する」という仮説を立て、口腔と腸管粘膜をつなぐ分子メカニズムの解明を試み、以下の結果を得た。1)歯周炎を発症しているマウスは、健常なマウスに比べ、腸炎の感受性が高いこと、2)歯周炎に伴う乱れた口腔細菌叢は炎症腸管に定着する口腔細菌の供給元となること、3)口腔由来の病原性細菌はそれ自身が腸管に定着することで炎症性サイトカインの誘導を介して腸炎を増悪させる(経路1:口腔細菌自身による直接的な腸炎惹起)、同時に4)歯周炎に伴って口腔所属リンパ節で病原性口腔細菌特異的Th17が誘導され、その腸管への移動が腸炎を亢進させること(経路2:免疫細胞を介した間接的な腸炎惹起)を明らかにした。本研究で我々は、腸炎の病態形成における腸管粘膜と腸管外粘膜との間に存在する細菌学及び免疫学的クロストークを明らかにした。本研究成果は、不明な点の多いIBDの病態形成メカニズムの解明に、口-腸粘膜のクロストークという新たな一石を投じるものであり、今後新たなコンセプトに基づくIBDの予防及び治療法の開発が期待される。


審査員のコメント:

この論文は歯周炎が口腔内ばかりでなく、全身性の疾患に影響を与えるという点からも一般社会への警鐘として大きな意味を持つ。まさに、口は災いの元、万病の元であり、食後の歯磨きとデンタルフロスは重要であるという歯学部のミッションともまさに合致する成果である。(三品先生)


多様な手法をもちいて、口腔常在細菌が腸管に付着して炎症を起こす直接的な経路と、それらの細菌に反応性のTh17細胞が腸管に移動後、同細菌により活性化することで腸炎を悪化させる間接的な経路があることを明らかにしました。(小野先生)


口腔で発生する炎症が、細菌叢を介して腸管に移行することを示した新規性は非常に高い。今後マウスモデルだけでなく、人でも同様の現象が起こっているかの検証が待たれる。

(岩瀬先生) 受賞コメント: この度は、優秀論文賞という栄誉ある賞を授与していただき誠に有難うございます。複雑に絡み合う全身性の粘膜免疫機構の新たな一面を明らかでき、今後の臨床応用にも繋がる重要な研究成果を挙げられたことを嬉しく思っております。ご指導いただいた鎌田先生や各方面からサポートいただいた共同研究者、及びスタッフの皆様、そして論文を高く評価してくださった審査員やUJAの運営委員の先生方には、この場をお借りして御礼申し上げます。この受賞を励みにして、引き続き研究に邁進していきたいと思います。 エピソード: この度は、優秀論文賞という栄誉ある賞を授与していただき誠に有難うございます。複雑に絡み合う全身性の粘膜免疫機構の新たな一面を明らかでき、今後の臨床応用にも繋がる重要な研究成果を挙げられたことを嬉しく思っております。ご指導いただいた鎌田先生や各方面からサポートいただいた共同研究者、及びスタッフの皆様、そして論文を高く評価してくださった審査員やUJAの運営委員の先生方には、この場をお借りして御礼申し上げます。この受賞を励みにして、引き続き研究に邁進していきたいと思います。 高校生からの質問: 1)研究者を目指したきっかけを教えてください  この度は、優秀論文賞という栄誉ある賞を授与していただき誠に有難うございます。複雑に絡み合う全身性の粘膜免疫機構の新たな一面を明らかでき、今後の臨床応用にも繋がる重要な研究成果を挙げられたことを嬉しく思っております。ご指導いただいた鎌田先生や各方面からサポートいただいた共同研究者、及びスタッフの皆様、そして論文を高く評価してくださった審査員やUJAの運営委員の先生方には、この場をお借りして御礼申し上げます。この受賞を励みにして、引き続き研究に邁進していきたいと思います。 2)現在の専門分野に進んだ理由を教えてください  この度は、優秀論文賞という栄誉ある賞を授与していただき誠に有難うございます。複雑に絡み合う全身性の粘膜免疫機構の新たな一面を明らかでき、今後の臨床応用にも繋がる重要な研究成果を挙げられたことを嬉しく思っております。ご指導いただいた鎌田先生や各方面からサポートいただいた共同研究者、及びスタッフの皆様、そして論文を高く評価してくださった審査員やUJAの運営委員の先生方には、この場をお借りして御礼申し上げます。この受賞を励みにして、引き続き研究に邁進していきたいと思います。 3)この研究が将来、どんなことに役に立つ可能性があるのかを教えてください。  新しいコンセプトを提起する今回のような研究は、既存の概念とは全く異なるアプローチでの病気の予防や治療法の開発に役立つ可能性があります。

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