申請者らはまず膠芽腫患者検体内の細胞成分を網羅的に解析することで、免疫細胞であるマクロファージがMES-like膠芽腫細胞の周囲に豊富に存在することを見いだした。次に、細胞間相互作用in silico解析、患者由来膠芽腫スフェロイドモデル、マウスモデル、遺伝子欠損解析を組み合わせることで、マクロファージ由来 Oncostatin M (OSM)が膠芽腫細胞にMES-like 細胞状態を誘導することを実験的に明らかにした。一方、膠芽腫患者の遺伝子発現データセット中でMES-like遺伝子発現プログラムとT細胞活性状態との間に正の相関性が観察されたことから、MES-like 細胞特異的なT細胞との細胞間相互作用が考えられた。そこで、抗原特異的な T 細胞・ 膠芽腫共培養系を構築し、細胞状態特異的な T 細胞応答を評価した結果、MES-like 細胞は他の細胞状態よりも効率的に T 細胞により排除されることが明らかとなった。以上、MES-like 膠芽腫細胞が免疫療法の標的になり得ることから、OSM や他の薬剤によるMES-like 細胞状態への腫瘍同質化療法(腫瘍不均一性を低下させる治療法)が免疫療法の効果を増強できるのではないかと考えられる。今後は複数の薬剤を組み合わせた膠芽腫免疫療法の構築に向けて更なる解析を進めたい。
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