[論文賞]古橋暁/浜松医科大学
- Tatsu Kono
- 4月13日
- 読了時間: 3分
Satoru Furuhashi, M.D., Ph.D.
[分野:南カリフォルニア]
論文リンク
論文タイトル
Spatial profiling of cancer-associated fibroblasts of sporadic early onset colon cancer microenvironment
掲載雑誌名
npj precision oncology
論文内容
本研究は、孤発性若年性(50歳未満)大腸癌(Early-Onset Colon Cancer: EOCC)の発症率が欧米やアジアで近年増加している背景のもと、従来の大腸癌と比較してEOCCに特有の腫瘍微小環境(TME)の病態メカニズムを探求することを目的とした。
本研究の新規性は、腫瘍間質で見られるFibroblast Activation Protein (FAP) 陽性の癌関連線維芽細胞(Cancer Associated Fibroblast: CAF)に注目し、FAP陽性CAFがどのように隣接する腫瘍上皮細胞と相互作用し、癌の進行や悪性度を高めるのかを詳細に解析した点にある。解析の結果、FAP陽性CAFがEOCCにおいてWNTシグナル伝達を活性化し、FGF20-FGFR2-PI3K/Akt経路を介して隣接する腫瘍上皮細胞の増殖を促進していることを明らかにした。さらに、CAF内でのFAP発現レベルが高いEOCC患者は全生存期間が短縮しており、FAP(+) CAFが予後不良因子としての役割を有する可能性が考えられた。これにより、FAP(+) CAFの存在とその活性化経路が、EOCCにおける病態の診断および治療標的として重要であることが示唆された。
また、本研究は空間プロファイリング技術であるNanoString GeoMxデジタル空間プロファイリングを用いて、腫瘍浸潤境界と腫瘍中心の各細胞成分の位置情報に基づく遺伝子発現プロファイルを明らかにした点でも革新的であった。これにより、CAFと腫瘍細胞がどのように物理的に接触しながら相互作用して腫瘍の進展を助長する空間的な情報が明らかとなった。
以上より、本研究ではEOCC独自の腫瘍微小環境を解明し、CAFが腫瘍進展にどのように貢献しているのかを分子レベルで理解することにより、今後の治療戦略の新たな標的を提供できる可能性を秘めている。
受賞者のコメント
このような由緒ある賞を頂き光栄に思います。論文作成にサポートしてくださったすべての方に感謝申し上げます。
審査員コメント
Akishige Hokugo先生
The rising incidence of early-onset colon cancer (EOCC), particularly in individuals under 50, has emerged as a significant public health concern. Understanding its causes and molecular mechanisms remains challenging. This study identifies distinct molecular profiles in tumor cells and FAP(+) CAFs, which are associated with poorer survival outcomes. Spatial transcriptome analysis highlights upregulated WNT signaling, elevated FGF20 levels, and FGFR2-PI3K/Akt pathway activation, offering potential therapeutic targets for EOCC.
受賞者エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
消化器外科医として癌患者の手術治療を行なっていたが、臨床以外の観点から癌の病態についてより深く検証したくなったこと。
2)現在の専門分野に進んだ理由
何かしらわかりやすい形で人に感謝されるような仕事に就きたかった。
3)この研究の将来性
若くして癌になってしまう患者さんの病態解明や特有治療法、ひいては早期発見や予防に役立つ可能性があるかと思います。
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