近年注目されているtype I IFNと、脱毛の関連性を明らかにした画期的な論文だと思います。かなり多くの実験データが示され、詳細な条件検討についても記載されるなど、著者の尽力が伝わってきます。様々なKOマウスをやシークエンス技術を駆使して完成度の高い論文であるとの印象を持ちました。Mx1-creとRosa-YFPを用いた実験系はクレバーです。個人的には、最近脱毛が気になる年齢を迎え、今回の発見が有効な脱毛治療法につながることを期待します。
エピソード
私は渡米前まで皮膚科臨床医として働いており、全く基礎研究の経験がありませんでした。循環器内科医である主人のアメリカ留学が決まった時、私自身も何か有意義な時間を過ごしたいと思い、浜松医科大学皮膚科学講座の戸倉新樹前教授にご相談して、N I Hの永尾圭介博士をご紹介いただきました。今思えば、ピペットの使い方もわからないど素人を受け入れてくださった永尾先生には感謝の言葉もありません。まずはボランティアとして無給でラボの仕事をさせていただき、1年後には(少し認められて?)visiting fellowとして雇っていただけることとなりました。私の研究プロジェクトは、抗ウイルス免疫を増強させると不可逆性の脱毛が起きるマウスの原因を解明することでした。毎日マウスと対話しながら観察している中で、皮膚科医としての眼が非常に役に立ちました。マウスの皮膚表面に白い小さな塊が付着しているのを見つけ、ディスバイオーシス(細菌叢の偏り)の発見のきっかけとなり、これを契機に毛の炎症性破壊が起きていることを証明しました。コロナ禍による規制もありin vivoの実験を行うのが大変でしたが、なんとかやり切ることができました。
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