米国には、成り立ちの異なる2つの医学校(Medical Doctor [MD]養成校とDoctor of Osteopathic Medicine [DO]養成校)があり、学位もMDとDOで別々である。前者は西洋医学を、後者はオステオパシー医学と呼ばれる筋骨格系の手技療法を中心とした医学体系を基盤にしている。過去には教育内容が異なっていたが、現在では、MD養成校・DO養成校のカリキュラムの基準はほぼ同じとされており、DO医師はMD医師と同様に処方や手術ができる資格である。しかし、DO医師はしばしば不公平な扱いを医学界で受けてきた。DO養成校出身者の希望するレジデンシーのマッチング率はMD養成校出身者よりも低く、有名な研修プログラムやそこの指導医に占めるDO医師の割合は医師全体に占めるDO医師の割合よりも低い。
この結果は、少なくとも患者の視点では、担当医の学位(MD vs DO)を気にする必要がないことを示しており、MDとDOの学位のあり方について一石を投じた。また、患者にとって重要なアウトカムが同等である以上、医学界のダイバーシティを推進する中で、医学界はDO医師をより公平に扱う必要性を示唆しており、医療政策上重要な知見となった。最後に今回の研究で用いた医師の性質と患者アウトカムの関連を自然実験で探求する手法は、今後医師の診療パターンやパフォーマンスを研究する上で応用可能な手法になりうる。
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