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執筆者の写真Aki IIO-OGAWA

[論文賞]林 秀憲/テキサスチルドレンズホスピタル

Hidenori Hayashi, M.D.
[分野:Team Wada]
豚モデルを用いた患者特異的3D Tissue Engineered Vascular Graftの評価とその有効性
The Annals of Thoracic Surgery Short Reports, 23-September-2023

概要
我々は、患者特異的に設計された3D Tissue Engineered Vascular Graft (3DTEVG)を豚の肺動脈に移植し、その3DTEVGが理想的なフローダイナミクスを維持しつつ、期待される成長を示すことを確認した。さらに、PTFEグラフト使用群との比較において、3DTEVGが優れた結果を示したことを報告した。TEVGは、組織工学技術に基づく生体適合性に優れた人工血管として知られており、先天性心疾患手術で使用される従来のグラフトが持つ、成長に適応することができないという問題や血栓症のリスクを解消する目的で1986年に初めて提案された。これまでの研究においても同様のテーマが頻繁に取り上げられてきたが、先天性心疾患における解剖学的複雑性を有する場面での人工血管の最適な設計手法は、依然として明確にされていない課題である。適切に設計された3DTEVGは、先天性心疾患患者の血行動態の安定化を促進するとともに、生体反応の炎症を最小限に抑え、組織の再構築を継続的に促進する。この点の重要性は極めて高い。本研究では、Computational fluid dynamicsを駆使して患者特異的な3DTEVGを構築し、3ヶ月後の評価で3DTEVGがPTFEグラフトよりも明瞭に良好な血行動態を示し、特にWall share stressの指標での優越性が確認された。このテーマに関する先行研究はまだ見当たらない。本研究は、肺動脈再建において患者特異的3DTEVGがPTFEグラフトの優れた代替手段となり得ることを示唆するものである。

受賞者のコメント
チームWADA副代表でありシカゴ大学心臓外科教授の太田壮美先生からこちらのAwardへの応募を推薦していただきました。過去の受賞者の方の論文を拝見するとどれも素晴らしく、すぐに応募させていただきました。そして、今回論文賞をいただけることとなり感無量です。これを機に、今後臨床を行っていく中で常に新しい発見がないかという視点を持って臨んでいく決意をいたしました。

審査員のコメント
太田 壮美 先生:
3Dバイオプリントの技術を用いて肺動脈再建用にpatient-specificにカスタマイズされたグラフト(3DTEVG)を作成し、ブタの肺動脈置換モデルにて移植実験している研究である。3DTEVGは対照(PTFEグラフト)に比べ内膜の肥厚が軽減され内径が最適化されており、強度試験においても生体組織に近い傾向を示している。つまり移植したグラフトが生体内で適切な再生をすることによりグラフトが「成長」する可能性を示唆しており小児血管外科において将来の臨床応用が期待される。

北原 大翔 先生:
先天性心疾患手術で使されるグラフトの成長性に対する問題に対して、3Dプリンターで作成したグラフトと豚に移植する事でその成長性を通常のPTFEグラフトと比較している研究です。著者は4DMRIをもちいて血行力学的解析も行い3Dプリンターグラフトが元の血管と変わらない血行動態を示す事をあきらかにしています。3Dプリンターで作成したグラフトが先天性心疾患の再手術を回避する有用なグラフトになる可能性を示唆する有用な研究だと思います。

上村 麻衣子 先生:
応募者らは、患者特異的に設計された組織工学血管移植片(3DTEVG)の肺動脈再建における有用性を、豚モデルで評価しました。3DTEVGは最適な解剖学的適合性を実現し、理想的な血流動態を維持し、適切な新血管形成を促進することが示され、従来のPTFE移植片よりも優れている可能性が示唆されました。
この研究は、先天性心疾患のある子供達の、心臓病治療の新たな領域を切り開く可能性があり、非常に学術的価値が高いと考えます。

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
研究は自分の死後も多くの人を助ける可能性を秘めていると考えたためです。
2)現在の専門分野に進んだ理由
幼い時に持病で手術を受けた経験から医療に興味を持ちました。
3)この研究の将来性
心臓病を持つ子供の手術成績を向上させて再手術の可能性を減らすことができます。
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