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[論文賞] 浅野裕太 /University of Chicago

Yuta Asano Ph.D.

ループス腎炎における組織内での抗ビメンチン抗体の形成機序、及び特異性定量プログラムの開発

Machine learning to quantify in situ humoral selection in human lupus tubulointerstitial inflammation

Frontiers in Immunology

2020年11月27日


自己免疫疾患において自己抗体は重要な役割を果たしている。しかしループス腎炎などの組織特異的疾患において、組織内でどのような反応性の抗体が産生されているか、またその反応性がどのように形成されるかは多くが未解明である。私たちは過去の研究で、ヒトのループス腎炎において組織に浸潤してくるB細胞が細胞骨格タンパク質であるビメンチンに対する抗体を発現していることを示した。B細胞は突然変異によって抗体の反応性を高めることが知られているが、この反応性が変異によって獲得されたものなのか、免疫寛容の破綻によって高反応性のB細胞が見逃されたことによるものなのかは不明であった。

 そこで本研究では、同定された抗ビメンチン抗体のタンパク質配列を変異前の状態に戻した (reverted) 抗体を作成し、ビメンチンに対する反応性と特異性が共に変異によって獲得されたものであることを示した。抗ビメンチン抗体はELISAにおいて高い反応性を示し、自己反応性を判定するために用いられるHEp-2細胞に対してもビメンチン特異的な染色パターンを呈する。対して、ほぼ全てのreverted抗体はELISAにおける反応性を失っており、HEp-2細胞に対する反応性も弱く、非特異的なものであった。また、一つのreverted抗体は核に対する反応性を呈した。これは変異によって、単一の抗原に対する反応性だけでなく、核抗原からビメンチンへと複数の抗原の間で特異性が変化しうることを示している。

 私たちはさらに、このような特異性の変化を定量するため、イメージングと機械学習を利用した プログラム “CytoSkaler” を開発した。これにより、抗体に導入された各変異がどのように特異性に影響しているのかを解析することが可能になった。

 本研究はこれまで未知であったループス腎炎の組織局所における抗体の反応性とその形成について示唆を与えるものであり、CytoSkalerとともに組織特異的な自己抗体反応の機序解明に寄与することが期待される。


審査員のコメント:

ユニークな研究パイプラインで、今後さまざまな自己免疫疾患に活用できる研究成果と期待される。(武部先生)


抗体の変異による特異性を解析するためにイメージを解析するプログラムを開発した。ディープラーニングを使って画像解析をしています。(増田先生)


受賞コメント: 今回は論文賞に選んでいただきありがとうございます。この論文は自分の初めての論文で、同研究室のAndrew、Azamと協力しあって出すことのできた仕事なので、このように評価していただけて感慨深いです。今回の受賞を励みに、今後も面白いサイエンスを続けていけるよう精進したいと思います。 エピソード: この論文は自分を含めco-firstが3人いますが、誰が欠けてもできなかった仕事でした。チームで足りないものを出し合って1つのプロジェクトをまとめる経験を研究人生の最初にできたのは貴重な体験だったと思います。

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