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執筆者の写真cheironinitiative

[論文賞]福留 章仁/インディアナ大学/ ハワード・ヒューズ医学研究所

Akihito Fukudome, Ph.D.

[分野4:インディアナ州]
(植物二本鎖RNA生成酵素構造と鋳型RNA要件の解明)
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, December 2021

概要
DNAメチル化を伴うエピジェネティックな遺伝子制御は多くの生命現象を司る他、トランスポゾンなど利己的DNAの転移を抑えゲノムを保護する重要な役割を持つ。トランスポゾンは植物で最初に発見され、植物はノンコーディングRNAを介してDNAメチル化を誘導するRNA依存DNAメチル化経路(RdDM)を持つ。RdDMはDNA依存RNAポリメラーゼIV (Pol IV)が転写するRNAが、RNA依存RNAポリメラーゼ2(RDR2)により二本鎖RNA 化され、Dicer-like 3により小分子RNAへと切断される事で駆動する。先行研究でRDR2がPol IVと複合体を形成し、下流二本鎖DNAによるPol IV転写停止を受けてRDR2が二本鎖RNA生成を行う事が示されたが、RDR2がどのようにPol IVからRNAを受け取るか、下流二本鎖DNAがRDR2転写をどう可能にするかの機構は不明であった。更に、真核RNA依存RNAポリメラーゼの全長構造は未知であった。
本研究はクライオ電子顕微鏡単粒子解析法によりモデル植物シロイヌナズナのRDR2全長構造を3.1Å分解能で決定した。RDR2触媒ドメインはPol II同様の二重バレル型ポリメラーゼ構造を取り、未知のアミノ末端領域はRNA結合モチーフを含み活性部位へ続く約7塩基長分のチャネルの入り口を形成する。また生化学的手法により、RDR2活性が 9塩基長以上の一本鎖RNAを必要とする事、 RDR2はDNAと対になったRNAを転写出来ない事、下流の二本鎖DNAはその対形成により同領域で重複するRNA 3’末端を一本鎖化し、それが9塩基以上であればRDR2が二本鎖RNAを生成出来る事を示した。これらの結果に基づき、下流二本鎖DNAが誘発するPol IVバックトラックに基づくPol IV-RDR2二本鎖RNA生成モデルが提唱された。更に、RDR2はRNA3’末端から主に3番目の塩基から転写開始する事が明らかになった。これは二本鎖RNAの3’末端に2塩基突出が生じる事を意味し、末端突出へ指向性を持つDicer-like 3へのシグナルとして機能し得る。真核RNA依存RNAポリメラーゼはRdDMだけでなく様々な生物種で小分子RNAを介した遺伝子制御を司る重要な酵素であり、本研究の構造・生化学的知見がそれらの解明促進に貢献することが期待される。

受賞者のコメント
現所属で初の主著であり、クライオ電子顕微鏡法など新しい学びのとても多かった論文で、このような賞を頂き非常に光栄で嬉しく思います。共著者の皆様やこれまで留学を支えて下さった皆様、そして本論文を評価して下さった審査員並びにUJA運営の皆様に深く感謝致します。

審査員のコメント
加藤明彦 先生:
This study is the first report of the full-length 3D structure of eukaryotic RNA-dependent RNA polymerase (RDR). The authors focused on the gene product of RDR2, which is involved in the biogenesis of the most abundant endogenous siRNAs in plants, which direct sequence-specific cytosine methylation and histone modification causing genomic-loci specific transcriptional silencing. They performed a series of functional analyses based on the RDR2 structure they solved, and proposed a detailed model describing how RDR2 is coupled to RNA polymerase IV for mRNA transcription and generates an antisense RNA strand to the mRNA. The precise structural and functional information of full-length RDR2 will provide the community with solid mechanistic insights into the epigenetic control of a wide variety of plant species in addition to Arabidopsis.

増田久子 先生:
CryoEMを用いて、dsRNAが真核RNA依存RNAポリメラーゼとPol IVのComplexによってどのように生成されているのかを解明した。Epigeneticなどいろいろなプロセスに重要なdsRNAの生成モデルを緻密なDataをもとに提唱している。

エピソード
現研究室所属のきっかけは、学会で先生に直に質問をした事でした。純粋な科学の質問をした結果、その流れでポスドクの話を頂きました。あのコーヒー休憩時に話しかけていなければ、今は別の場所で全く違う研究をしていたかもしれません。留学や研究者を目指す方は是非、学会等で対面で積極的に質問してみて下さい。

1)研究者を目指したきっかけ
中学・高校の頃から瀬名秀明著「パラサイト・イヴ」やリチャード・ドーキンス著「利己的な遺伝子」などの本に触発され、生き物って何?という興味を追い続けた結果だと思います。RNAが現在の生命現象だけでなく生命の起源に深く関連があると知り、RNAとその働きについて知りたいと思うようになりました。
2)現在の専門分野に進んだ理由
一番最初は「RNA生物学」をもっと知りたいという事で、所属大学で関連研究が出来る研究室を選択。修士在籍中にアメリカの大学院に挑戦したいと思った事、また卒・修論で学んだ事を活かす研究機会があった事から、テキサスA&M大学の博士課程に進学し、RNAを作るタンパク質の制御について研究しました。博士号取得後、遺伝子を制御するRNAをどう作るか?という観点から、現研究室でのRNAを作るタンパク質の形や機能に迫る研究に行きつきました。
3)この研究の将来性
RNAからRNAを作るタンパク質は、様々な生物で遺伝子の働きを色々な方法で調節しています。今回その一つの全体の形と機能について詳しく明らかに出来た事で、DNAメチル化に限らず他の様々なRNAを介した遺伝子発現調節についての理解、そして実用に向けた貢献に繋がればと思います。
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