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[特別賞]鵜山 太智/カリフォルニア工科大学/NASA 系外惑星科学機構/国立天文台

更新日:2022年5月4日

Taichi Uyama, PhD

[分野10:物理学]
(原始惑星系円盤の微細な構造を直接観測)
Astrophysical Journal, 1 September 2020

概要
太陽系には地球だけでなく、主に気体で構成される木星・氷で構成される海王星など様々な形態の惑星があるが、更に太陽系の外の惑星(系外惑星)に目を向けると太陽系とは全く異なる様々な惑星が存在している事が現在までに分かっている。しかし、これらの多様な惑星の形成・進化過程はまだ解明されておらず、現在の天文学における重要な科学目標の一つとなっている。
この問題を解決するには、原始惑星系円盤という若い星(<1000万年)の周囲に存在する円盤において惑星が形成している過程を観測する必要があるが、太陽系の天体(46億年)を含め太陽の近傍は歳を取った天体が多く(>10億年)、若い惑星系を観測するには5m以上の大口径の望遠鏡を用いて遠く離れた天体を観測する必要があある。
今回我々はすばる望遠鏡という口径8.2mの大型望遠鏡(@ハワイ)を用いて、1000光年ほど離れたHD34700という若い星(約500万年)における原始惑星系円盤の微細構造を直接観測した。通常の観測では星の光が明るすぎるため、星の周囲に存在する惑星や原始惑星系円盤を捉えることはできないが、補償光学という地球大気による影響を補正する装置を用い、更にコロナグラフや差分撮像法という星の光を効率よく取り除く技術を組み合わせることで、星の周囲の状況を調べる事が可能となる。
これらを用いた結果、HD34700における原始惑星系円盤内部の大きな穴構造や、円盤外部の無数の腕構造を確認できた。これらの特徴的な構造は中心の星だけでなく、他に天体が存在することによる影響を受けた可能性が高いと考えられる。更に、同じ観測結果を用いて惑星の存在可能性について議論している。
今回使用した観測装置・データ解析技術や得られた成果は、惑星が原始惑星系円盤内部においてどのように形成・進化するのかといった議論を大きく進めるだけでなく、将来的な天文学の最終目標の一つである「第二の地球探し」に通じており、非常に重要な意義を持つものである。

受賞者のコメント
過去の受賞者を見ると宇宙分野の人が少なかったため、専門外の人が多いと推察される中自身の研究内容をどう伝えれば良いのか少し不安でしたが、受賞の報せを受け非常に光栄に思っております。本研究を完成させるまでには、観測データの取得・解析と原始惑星系円盤の構造の理解のために様々な研究者に協力をいただきました。関わっていただいた皆様に感謝申し上げます。

審査員のコメント
砂原淳 先生:
筆者は本論文において、すばる望遠鏡を用いて原始惑星系円盤の微細構造を観測し、惑星形成過程解明に重要な貢献をしている。補償光学やコロナグラフなど、すばる望遠鏡の高い観測能力を最大限活用し、惑星形成過程研究の議論にしっかりとした観測及び解析で、新たな知見を持ち込んだ。また、この論文は天文分野における学術的価値もさることながら、詳細な解析内容が明快な筋道で書かれており、実験データの解析方法論の観点から、天文分野を超えて他分野の研究者にもインパクトがあると思われる。本論文は筆者の今後のキャリアアップにとって重要なものになるはずである。審査にあたり筆者の将来性にも大いに期待したい。

竹井聡 先生:
This work examines the protoplanetary disk of an intriguing young star system HD 34700 A using the Subaru Telescope, verifying the previously discovered disk and spiral structures of the system, and drawing a number of new conclusions on the pitch angle, submicron dust distribution, and the substellar mass objects. Interestingly, previously undetected darkening features on the disk are revealed, the origins of which, however, are not identified in this work. The authors have made a relevant and timely contribution to the field of planet formation, as this work has already accumulated 10 citations since its publication in 2020 according to the NASA ADS. However, a more thorough discussion on the new open questions and potential new research directions generated by this work could have strengthened this work.

エピソード
過去の受賞者を見ると宇宙分野の人が少なかったため、専門外の人が多いと推察される中自身の研究内容をどう伝えれば良いのか少し不安でしたが、受賞の報せを受け非常に光栄に思っております。本研究を完成させるまでには、観測データの取得・解析と原始惑星系円盤の構造の理解のために様々な研究者に協力をいただきました。関わっていただいた皆様に感謝申し上げます。

1)研究者を目指したきっかけ
誰も知らない事を自分が発見できる魅力があったので
2)現在の専門分野に進んだ理由
宇宙、天文学にロマンを感じました。特に太陽系外惑星探査は歴史が浅く、数十年前はSFだった内容が実際の科学へと移り行く変遷を楽しめています。
3)この研究の将来性
太陽系外惑星の研究における最終目標の一つに第二の地球、地球外生命の発見があり、次世代望遠鏡では実現可能なレベルまで技術が追いつく見込みです。そのため現在進めている観測的な研究手法や、惑星形成に関わる議論が将来的な第二の地球探査へと繋がります。
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