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[奨励賞]佐藤 敦/昭和大学藤が丘病院 整形外科

Atsushi Sato, M.D., Ph.D.
[分野:イリノイ]
(大腿骨形態に対する矢状面3次元解析)
The Knee, 15-July-1905

概要
末期変形性膝関節症は歩行困難に至る変性疾患で人工膝関節全置換術(TKA)は標準的な治療法となっている。近年Computer assisted surgery (CAS)の1つであるナビゲーションを用いたTKAの良好な臨床成績が報告される一方で、インプラントの設置に重要な要素である大腿骨矢状面の形態学的研究は少ない。そこで本研究ではTKA術前に施行した全下肢CTから大腿骨の3次元骨モデルを作成し大腿骨矢状面アライメントについて3次元的解析を行った。対象症例は当施設でTKAを受ける連続する73例(女性59例、男性14例、平均年齢76.1歳)、140大腿骨とした。全下肢CTから各々固有の3次元大腿骨モデルを作成、大腿骨機能軸、基準面を設定し大腿骨近位、遠位解剖学軸の屈曲角度(proximal femoral axis angle: PFA, distal femoral axis angle: DFA)を定義計測した。結果PFAは10.6±1.5°、DFAは2.6±1.6°でありPFAはDFAに比較し有意に大きかった。女性のDFAは2.3±1.4°、男性は3.9±1.7°であり有意差を認めた。これらの結果から大腿骨矢状面においては大腿骨遠位に対し近位がより弯曲していること、また遠位の弯曲は女性に比べ男性の方が弯曲していることがわかった。本研究は従来式TKAとナビゲーションTKA双方に対して参照指標となる大腿骨屈曲角度に対する初の報告である。TKA施行時のインプラント設置角度の決定や今後のインプラントデザインなどに対して有用であると考える。

受賞者のコメント
コロナ渦で帰国を余儀なくされましたが、1つ形に残る仕事ができて大変光栄です。

審査員のコメント
牛島 健太郎 先生:
本研究は、人工膝関節全置換術における手術方針を決定する際に非常に実用的な情報です。大腿骨屈曲角度を指標として実施した人工膝関節全置換術の臨床成績が集積すると、非常に有意義な所見になると考えます。さらに筆者らが述べているように、大腿骨近位部の屈曲角度の情報はが人工股関節全置換術にも役立つことが期待されます。

小島 敬史 先生:
本研究は、整形外科医で標準的に行われている人工膝関節全置換術において近年取り入れられるナビゲーションに着目し、患者の大腿骨を3次元的に解析した臨床研究です。屈曲角度という新たな計測方法により、大腿骨の解剖学的精査を明らかにしました。3D形態学とナビゲーション手術におけるTKAの意思決定を結び付けるという点で画期的な貢献をしています。

エピソード
1)研究者を目指したきっかけ
野球肘を患いスポーツ医学を志しました。

2)現在の専門分野に進んだ理由
医師を目指したきっかけと同じです。

3)この研究の将来性
解剖を詳細に研究する事でオーダーメードの医療につなぐことができる可能性があります。

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