[奨励賞] 佐藤 裕樹 / Cincinnati children's hospital
- UJA Award
- 16 時間前
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Hiroki Sato, M.D., Ph.D.
分野 : オハイオ
論文リンク
論文タイトル
Clinical and Molecular Correlates of the Index of Severity for Eosinophilic
Esophagitis
掲載雑誌名
Journal of Allergy and Clinical Immunology
論文内容
"Index of severity of Eosinophilic Esophagitis (I-SEE)は、好酸球性食道炎(EoE)の重症度を分類するために専門家によって定義された新しい臨床ツールです。今回我々は、I-SEEが患者の特徴やEoEの分子特性と関連しているかどうかを調べることにしました。
米国のEosinophilic Gastrointestinal disorders (EGIDs)多施設データベース(CEGIR)に登録されたEoE患者についてI-SEE総スコア(Non-active, Mild, Moderate, Severe activeカテゴリーに分類される)及びそのドメイン(症状合併症・炎症・線維性狭窄)スコアと、臨床的および分子的特徴(EoE診断パネル[EDP])との関連性を評価しました。EoE患者318人(成人209人、子供109人)において、I-SEE総スコアの中央値は7.0であり、子供では成人よりも症状および合併症スコアが高く(4.0対1.0; P < .001)、一方で、成人では子供よりも炎症および線維狭窄スコアが高い傾向となりました(3.0対1.0, 3.0対0.0; いずれもP < .001)。I-SEE総スコアは、Non-activeからModerate activeカテゴリーとSevere activeカテゴリーで二峰性の分布を示しました。
EDPスコアは、I-SEE総スコア(r = -0.352, P < .001)および炎症スコア(r = -0.665, P< .001)と線維狭窄性スコア(r = -0.446, P < .001)と相関しましたが、症状合併症スコアとは相関しませんでした(r = 0.047, P = .408)。分子学的重症度はNon-activeからMild・Moderate activeにかけて増加しましたが、Severe activeカテゴリーでは低下しました。この要因として、Severe activeには多くの症状合併症スコア高値の症例が含まれことが考えられました。また、I-SEE総スコアおよび炎症・線維狭窄スコアの経時的変化は、組織学的および分子学的活動性を反映しました。
I-SEEは、Non-severe activeカテゴリーにおいては分子的特徴と相関を示し、主に炎症・線維狭窄ドメインスコアがこの結果に寄与していると考えられました。我々の多施設多症例での解析の報告は、EoEの病態を基盤としたI-SEEの実臨床での使用をサポートしています。また、I-SEE第一版でのこの結果を基に、より病態を反映した改訂版が作成されることが期待されます。
受賞コメント
今回の受賞で留学中の苦労が報われました!ありがとうございます。
審査員コメント
児島 克明 先生
好酸球性食道炎の重症度スコアI-SEEを使って、多数の患者さんで小児と成人でのEoEの病態の違いを明確に示した素晴らしい研究です。臨床での有用性に加えて、組織学的・分子学的活動性との相関が示されたことから、今後の病態解明にも大きく貢献する可能性を感じました。
岩澤 絵梨 先生
比較的稀な疾患であるEoEにおいて、成人、小児ともに非常に多くの患者サンプルを用いています。I-SEEスコアと分子学的評価の相関を検証したスタディの臨床的意義は非常に大きいと考えられます。
中村 純 先生
2022に国際的専門家グループから提唱された好酸球性食道炎(EoE)の重症度を示すとされるIndex of severity of Eosinophilic Esophagitis (I-SEE)ですが、多施設の患者さんのデータから調べられたところ、EoEの病態と概ね相関するものの、患者さんの年齢や、重症度において、それぞれ違ったドメインが総スコアに寄与していることが分かり、今後改訂版の必要性を示唆した重要な論文と評価いたしました。チームサイエンスである点も高く評価いたしました。
中村 能久 先生
EoEは慢性炎症性疾患であり、患者ごとの病態や進行が多様であるため、重症度を客観的に評価するツールの開発は非常に重要だと考えられていると思います。本研究では、患者群における重症度スコア(I-SEE)が症状、炎症、線維化(狭窄形成)といった異なる病態とどのように関連するかを明確にし、さらにこれらの重症度が年齢(小児 vs 成人)によって異なることを示した点が、今までにはない、新たな視点からの重要な知見だと思います。特に、CEGIRによる大規模かつ多施設での研究デザインは、サンプルの多様性を担保しており、研究結果の信頼性を高めていると思います。今後、I-SEEスコアをどのように治療戦略に応用するかが鍵となると思われますが、本研究はEoEの臨床的および分子的理解を深めるうえで、非常に重要な貢献をしていると考えられます。
水野 知行 先生
本論文ではEosinophilic Esophagitis (EoE) の重症度を評価するための新しい指標 (I-SEE) の臨床的および分子的相関が検討されました。多施設データベースを用いた解析の結果、I-SEEスコアが患者の症状や分子マーカーと有意に関連していることが確認され、実際の臨床現場での使用に適していることが示されました。また、著者らは本スコアの改善点にも触れており、今後の研究によりさらに精度の高い診断スコアの開発と臨床応用が期待されます。
1)研究者を目指したきっかけを教えてください
医師としての幅を広げたかったため。
2)現在の専門分野に進んだ理由を教えてください
患者が多いこと。内視鏡学は技術職であるため。
3)この研究が将来、どんなことに役に立つ可能性があるのかを教えてください。
スコアリングシステムは改訂されていくもの。その礎になった。
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