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[奨励賞] 川瀬 廣明 / 電気通信大学

Hiroaki Kawase, PhD

分野 : ジョージア


論文リンク


論文タイトル

Encrypted Classification for Prevention of Adversarial Perturbation and Individual Identification in Health-Monitoring


掲載雑誌名

IEEE/ASME International Conference on Advanced Intelligent Mechatronics


論文内容

医療分野では生体信号を用いた継続的なモニタリングが病気の早期発見や管理において重要な役割を果たしている。特にウェアラブルデバイスなどによる継続的なモニタリングは、多くの病気の検出や公衆衛生の向上に寄与する可能性を有している。一方で、このようなデータは悪意ある第三者が個人を特定したり、検出器パラメータを改ざんするような攻撃にさらされており,サービスの信頼と継続に甚大な影響を与える。過去にはフィットネスアプリの位置情報から特定の人物の移動ルートが漏洩した事例があり,ユーザ以外が自由に閲覧が可能な形式で情報を保管する危険性が浮き彫りとなった。  本研究では、生体データが個人特定に利用可能であることを実験的に示し、その対抗策として準同型暗号と呼ばれる暗号化されたデータのまま計算が可能な暗号技術を用い,検出器のパラメータ並びにデータを秘匿した状態で判定を行う手法を提案した。この手法により検出器自体の改ざんを防ぎながら、データ解析の安全性を向上させることを目指している。本手法では検出器としてサポートベクターマシン(SVM)を用い,クラウド上で収集した暗号化されたデータを復号することなく計算することで情報を抜き取られても安全な検出器を構成した.  提案手法の有効性を示すために体温データセットを用いてシミュレーションを行った。その結果、暗号化されたSVM検出器が暗号化前の分類器と同等の分類性能を保持することが明らかになった。また、暗号化のパラメータを調節することで量子化誤差を抑え、性能の劣化を防ぐことも確認できた。本手法はウェアラブルデバイスやリモート診断システムに応用することで将来的に安全で効率的な生体データ管理を実現する可能性を秘めている。


受賞コメント

このたび、UJA論文賞2025において奨励賞を頂戴し、大変光栄に感じております。留学期間での成果を評価していただき、ありがたく存じます。今後も謙虚な気持ちを忘れず、さらなる成長と挑戦を続けてまいります。



審査員コメント

斧 正一郎 先生

健康管理などで生体信号をモニタリングすることは一般的になっているが、これらを悪用されるのを防ぐための暗号化技術開発の研究で、実践への応用が期待される。大学院性としての研究、留学後2年以内の研究、責任著者も務めるなど、貢献度も大きい。しかし、論文が学会抄録の形式であり、Peer-reviewed journals に掲載された他の論文と比べると、当該分野への貢献度や認知度は、まだ未知である。


Shuichi Takayama

The paper is significant for being the nominees first overseas paper, for being first author, for being corresponding author, and addressing an increasingly important health privacy topic.



1)研究者を目指したきっかけを教えてください

仕事においては,ただ良いものを作るだけでは、十分な評価や自分で判断する自由が得られない現実を知ったことです.企業の業務は一般に細かく分担されているのに対し、研究者は考案から実行、評価まで一貫して行える点に魅力を感じました。


2)現在の専門分野に進んだ理由を教えてください

学部生の頃、開発を手伝っていたネットワーク製品の脆弱性に驚き、危機感を抱いたからです.しかしながら、セキュリティ対策は企業の信頼性を支える一方で、製品の機能や価格競争力を下げる面があると感じています。そこで、信頼性が必要不可欠なインフラの根幹を担う制御工学との組み合わせを研究することで、問題解決に寄与すると考え、暗号化と制御理論を専攻するに至りました。


3)この研究が将来、どんなことに役に立つ可能性があるのかを教えてください。

本研究では、生体データが個人の特定に悪用可能であることを踏まえ、暗号化されたデータでの判別手法を提案しました。この手法により、復号することなくデータ解析が行えるため、データ解析による利益と個人情報の保護を両立することができます。さらに、提案手法は医療分野に限らず、交通システムや工場の状態監視など、機械学習を活用したデータ解析手法のセキュリティ強化にも役立ちます。

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