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[奨励賞] 豊田 行英 / 千葉大学

Takahide Toyoda, M.D., Ph.D.

分野 : イリノイ


論文リンク


論文タイトル

Impact of bridging veno-venous extracorporeal membrane oxygenation to COVID-19 lung transplantation


掲載雑誌名

Journal of Thoracic Disease


論文内容

重症コロナウイルス2019(COVID-19)関連急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の呼吸補助として、静脈脱血静脈灌流体外式膜型人工肺(VV-ECMO)療法が用いられることが多くなってきています。しかし、COVID-19関連ARDSにおける肺移植への橋渡しとしてのVV-ECMOの長期成績、安全性、実現可能性に関する報告は、依然として不明です。本研究は、2020年6月から2022年6月にかけてのノースウェスタン肺移植データベースからのケースシリーズ研究を行い、人口統計学、移植前の検査値、術後成績、術前・術後の経胸壁心エコー所見、生存率に関するデータを収集しました。解析には、カイ二乗、マン・ホイットニーU、スチューデントt、カプラン・マイヤー、ウィルコクソンの符号順位検定が用いられました。結果として、COVID-19関連ARDSを発症した25人の患者がVV-ECMOを受けた後に肺移植手術を受けました。また、同スタディ期間にVV-ECMOを受けたCOVID-19関連ARDS患者の待機中死亡が6例いました。1名を除くすべての患者が積極的なリハビリを受けました。VV-ECMOを受けた患者は、VV-ECMOを受けなかった16名の患者よりも重症のコホートでした(lung allocation score: 88.1 vs. 74.9, p<0.001)。これらの患者は、術後の集中治療室および入院期間が長く(それぞれp=0.03、p=0.015)、肺移植後の合併症の発生率も高かったです。VV-ECMOを行った患者の1年生存率は、行わなかった患者よりも低いものの(78.3%対100.0%、p=0.06)、他の肺移植適応の患者(84.2%、p=0.95)と同等でありました。術後の心エコー検査では、右室収縮期圧の低下(p=0.02)が認められ、肺移植により右心機能が回復したことが確認されました。今回の結果から,VV-ECMOは右心不全を伴うCOVID-19関連ARDS患者を安全に橋渡しするために使用できることが示唆されました。


受賞コメント

"この度は奨励賞をいただき、誠にありがとうございます。私の研究が評価され、このような素晴らしい賞を頂戴できたことを大変光栄に思います。研究の進行にあたり、多くの方々にご指導いただき、支えられたことに心から感謝申し上げます。これからも、研究の深化と成果の社会への還元を目指して、さらなる努力を重ねていきたいと思います。"


審査員コメント

渡辺 和志 先生

COVID-19関連ARDS患者に対するVV-ECMOの使用に関するケーススタディです。VV-ECMOを受けたCOVID-19関連ARDS患者はVV-ECMOを受けていない患者に比べて重症かつ生存率は低いものの、他の肺移植適応患者と同等の成績であったこと、肺移植によって右心機能が回復したことが確認されました。COVID-19関連ARDS患者に対しVV-ECMOが肺移植へのbridging therapyとなる可能性を示しており、臨床的に重要な知見で本研究分野に対する貢献度が高い研究成果と考えます。


神津 英至  先生

本研究は、中央値81日という長期のVV-ECMO管理においても、合併症を回避しながら肺移植へブリッジするための管理戦略を示した記述研究である。施設独自のプロトコルが詳細に記述されており、実践的価値が高い。稀ではあるがARDSで肺移植が考慮されるケースや、今後起こりうる新興肺感染症のアウトブレイクに備えて、本論文のようなexperienced centerの経験が報告されていることは、医学的価値が高い。


坂下 雅文  先生

COVID-19による重症肺障害(ARDS)後の肺移植におけるVV-ECMO思考の治療成績に関する臨床研究。COVID-19のパンデミック期間における肺障害治療における貴重なコホート調査。COVID-19後のARDS治療についての症例集積は、今も続くCOVID-19感染における指標として重要である。


田中 仁啓  先生

COVID-19関連ARDSに対するVV-ECMOの1年後の予後、心機能変化を評価した論文です。少数例での検討ではありますが、詳細な臨床データ収集と検討を行っている点は評価に値します。さらに、治療方針に関しては十分なエビデンスが蓄積されてされていないため、本研究から得られた知見は重要だと考えられます。



エピソード

尊敬できるPIや研究仲間との出会いに恵まれ、家族にも非常に支えられた留学生活でした。あくまで研究や留学の成功は二の次であり、人と人との絆を強く感じる2年間だったと感じています。


1)研究者を目指したきっかけを教えてください

小さなころに出会った研究者に感銘を受け、私もそのような仕事をしてみたいと思いました。特に自分が興味を持っている分野で活躍している人たちの姿を見て、自分もその一員になりたいと感じました。


2)現在の専門分野に進んだ理由を教えてください

人間の体にとって呼吸はとても大切です。肺や気管支などの呼吸器が健康であることが、全身の健康に大きく影響します。私は、呼吸器に関する病気や問題が、患者さんの生活にどれほど大きな影響を与えるかを学び、もっとその分野に詳しくなりたいと思いました。


3)この研究が将来、どんなことに役に立つ可能性があるのかを教えてください。

ECMOを使用している患者さんが肺移植を受ける際、安全に移植ができるかどうかはとても大切です。ECMOを使った患者さんでも肺移植がスムーズに進む可能性があるという、この研究の臨床データはより多くの命を救うことができるようになります。

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