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[奨励賞] 高市 美佳 / Osaka Metropolitan University

Mika Takaichi, M.D., Ph.D.

分野 : 免疫アレルギー


論文リンク


論文タイトル

Differentiating generalized pustular psoriasis from acute generalized exanthematous pustulosis


掲載雑誌名

Journal of the American Academy of Dermatology


論文内容

"""汎発性膿疱性乾癬(GPP)と、急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)は、どちらも全身の皮膚が赤くなり、「膿疱」という膿の塊が皮膚の中にできる病気です。ひどい場合は発熱や全身倦怠感、他の臓器にも障害が及び、重症となることがあるいずれも緊急性の高い疾患です。これらの二つの疾患は見た目がとてもよく似ており、血液検査や病理組織検査の所見などでも特徴的な差が無く、見分けることが難しいですが、経過や治療法は異なります。適切な治療が行われなければ、重症化し合併症などを引き起こす場合もあるため、効果的な治療を行う上でこれら二つの疾患を区別することは重要です。

GPPとAGEPを鑑別するための重要な特徴を明らかにするために、本研究では大阪公立大学大学院医学研究科皮膚病態学とアメリカのメイヨークリニックとの2施設が協力して、約20年の間に二つの医療機関を受診したGPP患者54例とAGEP患者63例を対象に、臨床症状・検査所見などのデータを集め、このよく似た二つの病気を見分ける鍵となる症状の探知に取り組みました。その結果、GPP患者では、関節痛、乾癬または関節炎の病歴、乾癬様の皮疹などの症状が多かったのに対し、AGEP患者では、薬剤アレルギーの病歴、下肢の内出血などの症状がより多くみられました。これらの臨床的特徴は、GPPとAGEP患者を判別するための診断指標になると考えた本研究グループは、これら診断指標を用いてGPPとAGEPを見分けるためのGPP/AGEPスコアリングシステムを開発しました。さらに本システムの予測性を評価したところ、感度(0.85)と特異度(1.0)がともに高く、本システムが高い判別性能を持つことを証明しました。本研究成果は、これまで臨床現場で医師が鑑別に悩んでいたGPPとAGEPを見分ける際の一助となる可能性があり、素早い診断と適切な治療選択へと繋がることが期待されます。

"""


受賞コメント

臨床現場ですぐに役立つ研究がしたいと思い、留学中のボスと共にこの研究を始めました。このような素晴らしい賞を受賞できたことをとても嬉しく思います。


審査員コメント

神尾 敬子 先生

汎発性膿疱性乾癬と急性汎発性発疹性膿疱症の鑑別において、人種背景の異なる日米2国の医療機関での長期間の後向き解析により、実用的なスコアリングシステムを世界で初めて確立しました。この成果は、実臨床での前向き検証を経ることで、新たな鑑別診断基準として確立され、両疾患の適切な治療選択に貢献することが期待される点を評価しました。


小島 秀信 先生

GPPとAGEPは臨床像や治療法が異なるため鑑別が重要です。本研究では臨床像を中心に両者を鑑別するスコアリングシステムを提唱しました。症例数は限られていますが感度0.85、特異度1.0と良好な結果が得られています。今後はより大きいコホートで前向きに検証を行うことが望まれ、実臨床への応用が期待されます。



エピソード

生後3ヶ月の乳児を連れての留学だったため、子供を預けてまで研究をすべきか当初は悩みました。留学後も思うように研究に時間が取れず焦った時期もありましたが、諦めずに少しずつでも研究を進めました。家族や子供の事情で留学を躊躇している方も多いかと思いますが、ぜひ一歩をふみだしてみてください。


1)研究者を目指したきっかけを教えてください

患者さんを診療するうちに、実際に診断、治療を行なっている医師だからこそやるべき研究があることに気づきました。


2)現在の専門分野に進んだ理由を教えてください

母が皮膚科医なのですが、なぜか私は小さい頃から母を悩ます皮膚病によくなっていました。今となっては、なんとか治そうとしてくれる母の姿に自然と憧れていたのだと思います。


3)この研究が将来、どんなことに役に立つ可能性があるのかを教えてください。

"汎発性膿疱性乾癬(GPP)と、急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)は、どちらも全身の皮膚が赤くなり、「膿疱」という膿の塊が皮膚の中にできる病気です。ひどい場合は発熱や全身倦怠感、他の臓器にも障害が及び、重症となることがあるいずれも緊急性の高い疾患です。これらの二つの疾患は見た目がとてもよく似ており、血液検査や病理組織検査の所見などでも特徴的な差が無く、見分けることが難しいですが、経過や治療法は異なります。適切な治療が行われなければ、重症化し合併症などを引き起こす場合もあるため、効果的な治療を行う上でこれら二つの疾患を区別することは重要です。我々の研究グループは、2004年ごろからの約20年間に、大阪公立大学医学部附属病院あるいはメイヨークリニックを受診したGPP患者54例とAGEP患者63例を対象とし、臨床症状・検査所見などのデータを集め、二つの疾患を見分けるためのスコアリングシステムを開発しました。

本研究成果は、これまで臨床現場で医師が鑑別に悩んでいたGPPとAGEPを見分ける際の一助となる可能性があり、素早い診断と適切な治療選択へと繋がることが期待されます。"

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