[奨励賞] 高橋 利奈 / The Lundquist Institute, Harbor-UCLA Medical Center
- UJA Award
- 16 時間前
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Rina Takahashi, M.D., Ph.D.
分野 : 南カリフォルニア
論文リンク
論文タイトル
The Association of Niacin Use with Kidney Outcomes and Mortality
掲載雑誌名
American Journal of Nephrology
論文内容
" ナイアシンは、アメリカで広く使用されている非スタチン脂質低下療法であり、特に心血管疾患の予防において重要視されています。しかし、その長期的な生命予後や腎転帰への影響については十分に研究されていませんでした。そこで、本研究では、ナイアシン療法が慢性腎臓病(CKD)、末期腎不全(ESRD)、および死亡リスクに与える影響を14年という長期的なフォローアップで評価しました。
具体的には、腎機能が正常な米国の退役軍人約15万人を対象とし、新規処方されたナイアシンとの関連についてCox比例ハザードモデルを用いて検討しました。生存バイアスを制御するために、処方時間分布マッチングを用いました。この手法では、ナイアシン使用群と非使用群のフォローアップ期間が同様になるように非使用群のフォロー開始日を設定し、両群間で公平な比較ができるようにしました。これにより、ナイアシン使用による影響をより正確に評価することが可能となりました。
その結果、ナイアシン使用はCKDリスク(Hazard ratio (HR):1.08, 95%信頼区間(CI):1.07-1.10)と関連していましたが、ESRD(HR:0.82, 95%CI:0.76-0.88)および死亡(HR:0.90, 95%CI:0.89-0.91)リスクは有意に低下しました。この大規模コホート研究の結果から、ナイアシン療法がCKDリスクを上昇させる一方で、長期的にはESRDや死亡リスクを低下させるという新たな知見が得られました。因果関係とその有益性を支持するためにはさらなる研究が必要ですが、本研究はナイアシンの長期的予後に関する重要な知見を提供しており、その臨床的意義は大きいと考えています。"
受賞コメント
この度は、奨励賞を受賞させて頂き、誠にありがとうございます。本論文は留学後1本目の論文であり、その論文で受賞できたこと、とても嬉しく思います。この論文をご評価くださった審査員の先生方に心より感謝申し上げます。
審査員コメント
Akishige Hokugo
Niacin plays an important role in various bodily functions and offers several health benefits, including cardiovascular health, mental health, skin health, and metabolic processes.The relationship between niacin and renal disease indicates a critical balance in dietary intake.The study employs a nationwide historic cohort design, encompassing 1,139,630 US Veterans with a follow-up period of 14 years. The study's findings suggest that while niacin has been associated with an elevated risk of CKD, it concurrently reduces the likelihood of ESRD and mortality among US veterans with initially normal kidney function, offering a substantial insight into long-term health implications.
1)研究者を目指したきっかけを教えてください
大学4年時に自主学習という研究室に配属されるプロラムがあり、学生ながら自ら手を動かしデータを出し、それを論理的に解釈し、次の研究につなげていく基礎研究の奥深さ、楽しさを感じ、医師となっても研究したい!と強く思うようになりました。実際に患者さんを診療するようになり、患者さんのデータから行う臨床研究に魅力を感じ、現在留学先では臨床研究を行わせて頂いています。
2)現在の専門分野に進んだ理由を教えてください
私の専門は腎臓内科です。腎臓は不要となった毒素、水分を排泄するために非常に重要な臓器で、腎臓内科ではその機能が何らかの理由で低下してしまった患者さんの診療を行います。初期研修医の時に腎臓内科をローテーションした際、高い専門性やその学問の面白さに魅了されると同時に、科を超えて患者さんの全身を見る必要があり、またその患者さんの生活面も理解しながら診療することの大切さを学びました。患者さんと長く寄り添い少しでも役に立つ医師になりたいという私の理想にピタッとはまり、腎臓内科を選択しました。
3)この研究が将来、どんなことに役に立つ可能性があるのかを教えてください。
ナイアシンは、ビタミン剤のようなもので、日本ではあまり使用されていませんが、アメリカでは脂質異常症の治療にとてもよく使用されています。この研究では、114万にという大規模データにおいて、ナイアシンを使用した患者さんで、透析などの末期腎不全や死亡のリスクが減少したことを示しました。更なる研究は必要ですが、今後の脂質異常症のガイドラインなどにも影響し、ひいては患者さんの腎臓の寿命や寿命そのものを改善することにつながる可能性に期待し、研究を続けたいと考えています。
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