Aki IIO-OGAWA4月8日読了時間: 3分[特別賞]永田 向生/Norton Leatherman Spine CenterKosei Nagata, M.D., Ph.D.[分野:整形外科分野]Normative Bone Mineral Density Measured on CT scan in Children and Adolescents小児における腰椎CTによる骨密度測定の標準化Spine, 01-March-2023概要骨粗鬆症は、多くは高齢者において骨密度が低下した状態を指す。その診断スタンダードはDEXA (Dual Energy X-ray Absorptiometry) であり、2種の異なるエックス線を照射し、骨と軟部組織の吸収率の差で骨密度を測定する方法である。骨密度を腰椎または股関節で測定して、若年平均とSD値で比較したT-scoreで-2.5より低下した際に、骨粗鬆症と診断される。このT-scoreの代替として、脊椎外科の領域では、腰椎CTの海綿骨領域で測定したHU値(Hounsfield Unit)が代替手段として用いられてきた。脊椎外科では脊椎にscrewや椎体間にcageを挿入して固定術を行うことが多く、そのscrewやcageの術後に生じうる緩みの予想に、HU値が用いられてきた。脊椎手術を受ける患者において、術前のCTは必須である。腰椎CTでの情報があれば、追加でのDEXA検査での被曝や費用を生じることなく、診断の代替手段となり手術プランの一助となるために(screwの緩みが予想されるところに骨セメントを詰める、など)、腰椎CTのHU値は有用であった。しかし、これを小児で検討した報告はなかった。小児は成人と異なり、椎体後面にCTのhypointensity領域である静脈洞を含む解剖学的特徴がある。また年齢ごとに軟骨骨化を経て腰椎の海綿骨が形成される。その測定法の標準化のためには、多数の骨系統疾患のない小児腰椎CTを集める必要があり、研究目的に小児に被曝を課せないことから、これまでに小児腰椎CTを検討した研究はなかった。今回筆者らは、2012年から2022年に撮影された腰椎CTの履歴を参照し、2-17歳の144例の骨疾患のない小児の腰椎CTを検討した。L1-L5まで軸位像で評価して、(1)L1/椎体中央が最低のHU値を取ること, (2) 10歳前後でHU値が最低値となること, (3)静脈洞を含まない領域で測定すること, (4) 227が小児の平均値であること, を解明した。成人と異なる標準値・測定法を提供したこの研究は、スクリーニングでのDEXAの被曝を回避できうる可能性があり、小児の脊椎外科だけでなく内分泌分野でも広い応用が期待される。受賞者のコメントこの度は素敵な賞をいただきまして大変嬉しく思います。留学の成果が出てホッとしております。審査員のコメント牛久 智加良 先生:小児脊椎のCT HU値を測定された、目から鱗の研究です。10歳前後のHU値が落ちること、一つの椎体の部位に応じHU値が異なることなど、本研究から得られた新たな知見は臨床的意義がとても高いと思います。Lopez-Gonzalez Dらの報告である若年者DEXAのBMD結果同様、本研究結果は今後の基準値の一つとなり得ると思います。被爆の点から出来ないことですが、真に健康小児コホートではないことはlimitationに記載されている通りです。しかしながら若年者椎体HU値を示す本研究結果は、臨床の現場で、手術前にスクリュー設置を検討する部位でのHU値計測の意義を、加速させる可能性が期待されます。長尾 正人 先生:小児の脊椎CTのHU値を測定することが、DEXAの代替手段になり得ること、また脊椎手術後の合併症を防ぎ得る可能性がある新たな研究と思います。エピソード1)研究者を目指したきっかけ医療の基本は臨床・研究・教育であり、3つともやりたかったため。2)現在の専門分野に進んだ理由脊椎外科はまだ分かっていないことが沢山ある分野だから。3)この研究の将来性これまで骨粗鬆症を測定するのはDEXAという検査だけでしたが、他の病気の検査に撮ったCTでも代用できることが示せたので、本当に検査が必要な人を絞ることができうる。
Kosei Nagata, M.D., Ph.D.[分野:整形外科分野]Normative Bone Mineral Density Measured on CT scan in Children and Adolescents小児における腰椎CTによる骨密度測定の標準化Spine, 01-March-2023概要骨粗鬆症は、多くは高齢者において骨密度が低下した状態を指す。その診断スタンダードはDEXA (Dual Energy X-ray Absorptiometry) であり、2種の異なるエックス線を照射し、骨と軟部組織の吸収率の差で骨密度を測定する方法である。骨密度を腰椎または股関節で測定して、若年平均とSD値で比較したT-scoreで-2.5より低下した際に、骨粗鬆症と診断される。このT-scoreの代替として、脊椎外科の領域では、腰椎CTの海綿骨領域で測定したHU値(Hounsfield Unit)が代替手段として用いられてきた。脊椎外科では脊椎にscrewや椎体間にcageを挿入して固定術を行うことが多く、そのscrewやcageの術後に生じうる緩みの予想に、HU値が用いられてきた。脊椎手術を受ける患者において、術前のCTは必須である。腰椎CTでの情報があれば、追加でのDEXA検査での被曝や費用を生じることなく、診断の代替手段となり手術プランの一助となるために(screwの緩みが予想されるところに骨セメントを詰める、など)、腰椎CTのHU値は有用であった。しかし、これを小児で検討した報告はなかった。小児は成人と異なり、椎体後面にCTのhypointensity領域である静脈洞を含む解剖学的特徴がある。また年齢ごとに軟骨骨化を経て腰椎の海綿骨が形成される。その測定法の標準化のためには、多数の骨系統疾患のない小児腰椎CTを集める必要があり、研究目的に小児に被曝を課せないことから、これまでに小児腰椎CTを検討した研究はなかった。今回筆者らは、2012年から2022年に撮影された腰椎CTの履歴を参照し、2-17歳の144例の骨疾患のない小児の腰椎CTを検討した。L1-L5まで軸位像で評価して、(1)L1/椎体中央が最低のHU値を取ること, (2) 10歳前後でHU値が最低値となること, (3)静脈洞を含まない領域で測定すること, (4) 227が小児の平均値であること, を解明した。成人と異なる標準値・測定法を提供したこの研究は、スクリーニングでのDEXAの被曝を回避できうる可能性があり、小児の脊椎外科だけでなく内分泌分野でも広い応用が期待される。受賞者のコメントこの度は素敵な賞をいただきまして大変嬉しく思います。留学の成果が出てホッとしております。審査員のコメント牛久 智加良 先生:小児脊椎のCT HU値を測定された、目から鱗の研究です。10歳前後のHU値が落ちること、一つの椎体の部位に応じHU値が異なることなど、本研究から得られた新たな知見は臨床的意義がとても高いと思います。Lopez-Gonzalez Dらの報告である若年者DEXAのBMD結果同様、本研究結果は今後の基準値の一つとなり得ると思います。被爆の点から出来ないことですが、真に健康小児コホートではないことはlimitationに記載されている通りです。しかしながら若年者椎体HU値を示す本研究結果は、臨床の現場で、手術前にスクリュー設置を検討する部位でのHU値計測の意義を、加速させる可能性が期待されます。長尾 正人 先生:小児の脊椎CTのHU値を測定することが、DEXAの代替手段になり得ること、また脊椎手術後の合併症を防ぎ得る可能性がある新たな研究と思います。エピソード1)研究者を目指したきっかけ医療の基本は臨床・研究・教育であり、3つともやりたかったため。2)現在の専門分野に進んだ理由脊椎外科はまだ分かっていないことが沢山ある分野だから。3)この研究の将来性これまで骨粗鬆症を測定するのはDEXAという検査だけでしたが、他の病気の検査に撮ったCTでも代用できることが示せたので、本当に検査が必要な人を絞ることができうる。
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