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[特別賞]辻正樹/シーダス・サイナイ メディカルセンター

Masaki Tsuji, M.D., Ph.D.

[分野:南カリフォルニア]


論文リンク


論文タイトル

The Outcome of Restrictive Cardiac Allograft Physiology in Severe Coronary Allograft Vasculopathy.


掲載雑誌名

The Journal of Heart and Lung Transplantation


論文内容

本論文は、心臓移植後の合併症の一つである移植後冠動脈病変(CAV)と、それに伴う拘束型血行動態(RCP)の予後を調べたものです。CAVは移植心の冠動脈狭窄により、心機能が低下することで、心臓移植後の長期生存に影響を与える重大な合併症です。また、ある症例では心臓の弛緩機能が低下し拘束型の血行動態を呈するRCPへと移行する場合があります。RCPは微小循環障害に起因する可能性が示唆されていますが、その機序や予後の詳細は解明されていません。2004年から2023年にCedars-Sinai Medical Centerで心臓移植を受け、重度CAVと診断された患者116人を対象に研究を行いました。このうち42人がRCPを合併し(RCP-CAV群)、残りの74人が重度CAVではあるがRCP非合併(Angio-CAV群)でした。RCPは、右心カテーテル検査により右房圧が12 mmHg以上、肺動脈楔入圧が25 mmHg以上、心係数が2.0 L/min/m²未満の拘束型の血行動態を呈する心不全と定義しました。結果として、RCP-CAV群はAngio-CAV群に比べて、心臓移植から診断されるまでの期間が短いことがわかりました。診断後5年間の死亡もしくは再移植が必要になる割合はRCP-CAV群で有意に高く、5年生存率も有意に低いことが示されました。Cox比例ハザードモデル解析では、RCPは死亡または再移植のリスクを増加させる独立した因子でした。本研究の結果から、RCPの早期発見が心臓移植後の予後改善に重要であることが示唆されます。移植後の微小血管機能障害を同定するため、心臓PETやMRIなどの画像診断が有用であり、高度な異常が検出された場合は再移植登録を検討することが望ましいと考えます。本研究の知見がRCPの予後改善に寄与することが期待されます。



受賞者のコメント

特別賞に選んでいただき大変光栄に思います。審査員の方々、論文の共著者の皆様に感謝申し上げます。

審査員コメント


金子 直樹 先生

申請者らは心臓移植後に生じる重症CAV(Coronary Allograft Vasculopathy)のうち、Epicardial lesionによるCAVと、restrictive cardiac allograft physiology(RCP)によるCAVとRCP非合併のAngio-CAV群を比較し、両群の長期予後を検討している。RCPは移植後比較的早期に発症し5年後までの死亡がAngio-CAV群よりも高かった。単一施設でのレトロスペクティブ解析ではあるものの、従来のEpicardial lesion中心の評価だけでは見逃されがちだったRCPへの早期介入や再移植適応の必要性を示唆したインパクトが大きいとかんがえられる研究である。


エピソード

1)研究者を目指したきっかけ

臨床を経験して、まだまだ解明されていないことが多いことを知ったので。

2)現在の専門分野に進んだ理由

日本の心臓移植は欧米と比較すると件数が少なく、その発展に貢献したいと考えたので。

3)この研究の将来性

重症な心不全患者において心臓移植は有効な治療法の一つです。ドナーからレシピエントに提供された心臓をいかに長期的に管理するかが重要です。移植された心臓の機能低下に関わる微小血管障害という病態を研究しました。今後は移植された心臓の微小血管障害の治療法の開発を進めたいと思います。

4)スポンサーへのメッセージがあればお願いします

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