[特別賞]阪野佳弘/南カリフォルニア大学
- Tatsu Kono
- 4月13日
- 読了時間: 3分
Yoshihiro Sakano, M.D., Ph.D.
[分野:南カリフォルニア]
論文リンク
論文タイトル
SIRPα engagement regulates ILC2 effector function and alleviates airway hyperreactivity via modulating energy metabolism
掲載雑誌名
Celluar & Molecular Immunology
論文内容
グループ2自然リンパ球(ILC2)は、アレルギー性喘息の発症と悪化に重要な役割を果たす自然免疫系のリンパ球の一種である。ILC2の活性化と機能は、様々な活性化分子と抑制分子によって調節されており、これらのバランスがアレルギー反応の重症度を決定する。本研究では、CD47と相互作用する抑制分子であるSignal regulatory protein alpha(SIRPα)が、ILC2を介した気道過敏性を制御する重要な役割を解明することを目的とした。研究結果から、活性化したILC2はSIRPαの発現を上昇させ、SIRPαとCD47の相互作用がILC2の増殖と効果機能を効果的に抑制することを示した。遺伝子改変マウスモデルや養子移植実験を含む複数のアプローチを組み合わせて、アレルゲン誘発喘息のマウスモデルでSIRPαの機能を評価した。その結果、SIRPαの欠損はILC2の過剰活性化につながることが示唆された。一方、SIRPαとCD47の結合はILC2のサイトカイン産生を減少させ、ILC2依存性の気道過敏性を効果的に制御した。さらに、SIRPα-CD47軸はJAK/STATおよびERK/MAPKシグナル伝達経路を介してミトコンドリア代謝を調節し、NF-κBの活性と2型サイトカインの産生を制御することを明らかにした。また、ヒトのILC2でもSIRPαが発現していることが確認され、ヒトCD47-Fcの投与がILC2の効果機能とサイトカイン産生を効果的に抑制することを示した。さらに、ヒト化ILC2マウスにヒトCD47-Fcを投与することで、気道過敏性と肺の炎症が軽減した。これらの発見は、ILC2依存性のアレルギー性喘息の治療において、SIRPα-CD47軸を標的とすることが有望な治療戦略となる可能性を示した。
受賞者のコメント
このような栄誉ある賞を受賞できたことを大変嬉しく思います。
この受賞を糧に、今後も引き続き価値ある研究を行いたいと思います。
審査員コメント
横田 知大 先生
本論文は、活性化した2型自然リンパ球(ILC2)において、Signal regulatory protein alpha(SIRPα)がそのligandであるCD47とともに気道過敏性を抑制することを示した基礎研究である。著者らは、SIRPa およびCD47欠損マウスさらにはILC2移植マウスを用いることで仮説を強く裏付けており極めて魅力的な論文である。さらに、ヒトILC2を用いてマウスで確認された結果がヒトでも起こっていることを確認しており、ヒトへの応用が期待できる。CD47投与によるSIRPaを発現する他臓器への影響などの評価が望まれる。
エピソード
私は、免疫学の研究を行いたくで多くのラボにCVを送ってなんとか現在のラボに採用されました。留学先を見つけることはとても大変で心が折れそうになる事があると思いますが、最後まで諦めずに探し続けることが成功の秘訣だと思います。また、今回受賞することができた論文は私一人の力ではなく妻をはじめ多くのラボメンバーの方々のおかげで発表することができた論文です。そのため、私は周りの人々に恵まれた事が今回の受賞に繋がったと思いますので協力してくださった方々への感謝を忘れずに研究を進める事が大切だと思います。
1)研究者を目指したきっかけ
医師として働いている時に現在の治療法では救うことができない患者を多く経験し、新規治療法を開発したいと思い研究を始めました。
2)現在の専門分野に進んだ理由
私は、もともと肝癌などの消化器がんの手術を行なっており、消化器がんに対する新規治療法として免疫療法が注目されていたので、免疫学の研究を行うことに決めました。
3)この研究の将来性
喘息の症状を悪化させる細胞に2型自然リンパ球という免疫細胞が関与しています。今回は、その2型自然リンパ球に対する新規治療法を発見しました。このことは、喘息患者さんだけでなく多くの自己免疫性疾患で悩んでいる患者さんにも応用でき、さらにはがん患者さんにも応用が可能な発見ができました。
4)スポンサーへのメッセージがあればお願いします
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