Aki IIO-OGAWA4月8日読了時間: 3分[論文賞]岩根 史明/アメリカ国立衛生研究所Fumiaki Iwane, Ph.D.[分野:Disruptive Innovation Award]Combined low-frequency brain oscillatory activity and behavior predict future errors in human motor skill運動スキル中に発生する運動誤動作の予測Current Biology, 12-July-2023概要キーボードでの文字入力, 音楽の演奏, 自動車の運転などは高度な連続した運動動作を正確に実行することが必要である. これらの動作を学習し, 実行する際に, 運動誤動作は自然に発生するものであるが, 重大な結果をもたらすこともある. 例えば, 自動車の運転中に, 誤ったハンドル操作によって命を落としてしまう危険性もある.このような誤動作をヒトが実行する前に, 脳情報や運動情報を用いて検知し, 阻止, または一時的に操作を自動化することで, 未然に防げる事件・事故があると考える. 本研究では, 学習された運動スキル実行中に発生する誤動作を先行する脳活動や行動情報を特定し, 誤動作が発生する前にそれらを予測に成功した. 誤動作に先行して、運動が遅くなるということを示し、脳磁図上では、異常な徐派が観測された。これらの情報を用いて、70%の確率で未来に発生する誤動作の予測に成功した。運動障害のリハビリテーションに関する論文はたくさんあるが、それらの発生を未然に防げる可能性があることを示した論文である。受賞者のコメントこの度は論文賞に選出していただいて、ありがとうございます。このような素晴らしい賞をいただけて光栄です。審査員のコメント早野 元詞 先生:本研究は、人の行動を起こす瞬間を捉える挑戦的かつイノベーティブな研究であり、「エラーが発生する前にエラーを予測」といったコンセプトは非常に興味深い。"slower speed, and anomalous delta-band oscillatory activity in cingulate-entorhinal-precuneus brain regions"の検知によって70%のエラーを予測できることは興味深い。今後は、さまざまな行動におけるError-related potentialsをどのような手法によってより正確に、複雑な行動を、どの程度の時間windowで検知可能かを見極めていくことで、さまざまな応用性が期待される。黒田 垂歩 先生:運動スキル中に発生する運動誤動作の理解は、スポーツ・芸術・運転等の幅広い領域で非常に重要な課題である。筆者らは、誤動作に先行する脳活動や行動情報を特定し、誤動作の発生の予測に成功したことを高く評価する。今後は小型脳波デバイスを用いるなどして、この予測が実社会における活用の道筋を探索していただけると素晴らしいと思う。赤木 紀之 先生:本研究では、ヒトの運動・動作において、将来生じる可能性のあるエラーを、予測することが可能であることを示している。キーボードの操作を行う際に、エラーが発生する直前に特定の兆候が現れる。これらの兆候を組み合わせることで、将来のエラーを最大で70%まで予測できることが示された。将来、この技術が社会実装されれば、交通安全の向上に加え、医療現場での手術や治療のエラーも予測できるなど、様々な場面での応用が期待できる。エピソード1)研究者を目指したきっかけラグビーの試合中に硬膜下血腫になってしまい、一時的な半身麻痺になりました。その経験から自分の身体(主に脳)に興味を持ったのがきっかけです。2)現在の専門分野に進んだ理由怪我をした当時、高専に通っていたので、工学の知識(Artificial Intelligenceや制御理論)を活かした脳のメカニズムの解明に取り組んでいます。3)この研究の将来性スポーツや車の運転など、高度な運動スキル中であっても誤動作がきっかけで大きな怪我や事故になることがあります。こういった誤動作を、脳情報や運動情報を用いて予測検知し、阻止、または一時的に操作を自動化することで、未然に防げる事件・事故があると考えています。
Fumiaki Iwane, Ph.D.[分野:Disruptive Innovation Award]Combined low-frequency brain oscillatory activity and behavior predict future errors in human motor skill運動スキル中に発生する運動誤動作の予測Current Biology, 12-July-2023概要キーボードでの文字入力, 音楽の演奏, 自動車の運転などは高度な連続した運動動作を正確に実行することが必要である. これらの動作を学習し, 実行する際に, 運動誤動作は自然に発生するものであるが, 重大な結果をもたらすこともある. 例えば, 自動車の運転中に, 誤ったハンドル操作によって命を落としてしまう危険性もある.このような誤動作をヒトが実行する前に, 脳情報や運動情報を用いて検知し, 阻止, または一時的に操作を自動化することで, 未然に防げる事件・事故があると考える. 本研究では, 学習された運動スキル実行中に発生する誤動作を先行する脳活動や行動情報を特定し, 誤動作が発生する前にそれらを予測に成功した. 誤動作に先行して、運動が遅くなるということを示し、脳磁図上では、異常な徐派が観測された。これらの情報を用いて、70%の確率で未来に発生する誤動作の予測に成功した。運動障害のリハビリテーションに関する論文はたくさんあるが、それらの発生を未然に防げる可能性があることを示した論文である。受賞者のコメントこの度は論文賞に選出していただいて、ありがとうございます。このような素晴らしい賞をいただけて光栄です。審査員のコメント早野 元詞 先生:本研究は、人の行動を起こす瞬間を捉える挑戦的かつイノベーティブな研究であり、「エラーが発生する前にエラーを予測」といったコンセプトは非常に興味深い。"slower speed, and anomalous delta-band oscillatory activity in cingulate-entorhinal-precuneus brain regions"の検知によって70%のエラーを予測できることは興味深い。今後は、さまざまな行動におけるError-related potentialsをどのような手法によってより正確に、複雑な行動を、どの程度の時間windowで検知可能かを見極めていくことで、さまざまな応用性が期待される。黒田 垂歩 先生:運動スキル中に発生する運動誤動作の理解は、スポーツ・芸術・運転等の幅広い領域で非常に重要な課題である。筆者らは、誤動作に先行する脳活動や行動情報を特定し、誤動作の発生の予測に成功したことを高く評価する。今後は小型脳波デバイスを用いるなどして、この予測が実社会における活用の道筋を探索していただけると素晴らしいと思う。赤木 紀之 先生:本研究では、ヒトの運動・動作において、将来生じる可能性のあるエラーを、予測することが可能であることを示している。キーボードの操作を行う際に、エラーが発生する直前に特定の兆候が現れる。これらの兆候を組み合わせることで、将来のエラーを最大で70%まで予測できることが示された。将来、この技術が社会実装されれば、交通安全の向上に加え、医療現場での手術や治療のエラーも予測できるなど、様々な場面での応用が期待できる。エピソード1)研究者を目指したきっかけラグビーの試合中に硬膜下血腫になってしまい、一時的な半身麻痺になりました。その経験から自分の身体(主に脳)に興味を持ったのがきっかけです。2)現在の専門分野に進んだ理由怪我をした当時、高専に通っていたので、工学の知識(Artificial Intelligenceや制御理論)を活かした脳のメカニズムの解明に取り組んでいます。3)この研究の将来性スポーツや車の運転など、高度な運動スキル中であっても誤動作がきっかけで大きな怪我や事故になることがあります。こういった誤動作を、脳情報や運動情報を用いて予測検知し、阻止、または一時的に操作を自動化することで、未然に防げる事件・事故があると考えています。
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