[論文賞] 張 幸夫/Stanford University
- UJA Award
- 3 時間前
- 読了時間: 6分
Yukio Cho, Ph.D.
[分野:化学・工学・物理分野]
論文リンク
論文タイトル
Reversible self-assembly of small molecules for recyclable solid-state battery electrolytes
掲載雑誌名
Nature Chemistry
論文内容
本研究では、リチウムイオン電池のリサイクルが困難であるという課題に対し、分子が自発的に整った構造をつくる「自己組織化」という現象を応用し、リサイクルしやすい新しい電池材料を開発した。従来の電池材料は性能を最優先に設計されており、リサイクルの際には粉砕が必要で、さまざまな元素や材料が混ざり合うため再利用が難しかった。本研究では、高分子防弾素材の分子構造に着想を得て、安定性が高く、表面でリチウムイオンが移動できる自己組織化ナノファイバーを開発した。このナノファイバーを用いた電池では、自己組織化を可逆的に制御することで、使用後に材料をそれぞれ分離できることを実証し、電池リサイクルを大幅に容易にできることを示した。今後、電池の高効率なリサイクルはますます重要になると考えられ、本研究は電池化学と生物工学を融合した学際的かつ独創的なアプローチとして新たな可能性を示している。
受賞者のコメント
この度は、このような素晴らしい賞に選んでいただき、誠に光栄に存じます。誰も取り組んだことのない課題に挑戦し、その成果を最終的に多くの方に理解していただける形で発表できたことに、研究の醍醐味を感じました。また、留学を通じて大変貴重な学びの機会を得ることができました。さらに、ご多忙の中、本賞の企画・運営および審査にご尽力くださった皆様に、心より御礼申し上げます。
審査員コメント
庄司 観先生
本論文では、分子の自己集合により固体電解質が構築され、溶媒に暴露するだけで簡単にモノマーの状態に戻る、リサイクル可能な新たな電池材料の開発を行っている。電池のリサイクルは、資源の再利用において非常に重要な課題であり、エネルギー分野における本研究の貢献度は非常に高く興味深い。また、筆者が責任著者となっており、筆者が執筆した他の論文を拝見しても研究のアクティブティーの高さがうかがえる。よって、論文賞に値する価値の高い研究である。
中根 啓太先生
材料設計、特に電池開発の観点において、非共有結合性な可逆的な自己集合は共有結合を介していないためモノマーを回収できるためリサイクルは容易であるが、一般的に外部刺激に対して不安定です。一方で、この研究ではこの課題を克服し、分子の自己集合を用いた、強固かつ容易にリサイクル可能な固体リチウムイオン伝導性ナノ材料methoxy polyethylene glycol-aramid amphiphile (mPEGAA)を開発しました。mPEGAA自己集合により形成されるナノリボン構造は、共有結合を形成していないにも関わらず安定であり、mPEGAA固体膜は好ましいイオン伝導性を示しました。さらに、DMFやメタノール等のプロトン性極性溶媒を用いることで自己集合を解消することを示しました。この研究において筆頭著者かつ責任著者としてご研究を遂行されており、分子デザインおよび多角的な物性評価により、電気化学的に安定でリサイクル可能という材料設計戦略を提唱しました。本研究が、今後の材料開発の指針の一つになることが期待されます。
金井田 將裕先生
持続可能な社会におけるEV(Electric Vehicle)の需要の高まりに伴って、リサイクル可能なエネルギーキャリアの開発が注目を集めています。しかしながら、従来のバッテリー開発は性能(エネルギー密度、寿命)に重きが置かれ、リサイクル性との両立は困難とされてきました。本論文は従来、生体高分子において主に研究が進められてきたモノマー分子の”自己凝集”に着想を得、材料化学への応用法を示しました。著者らは、リサイクル可能なエステルやイミン、ジスルフィド結合などの弱い共有結合性ポリマーの機械的強度/電気化学的安定性における課題を克服すべく”非共有結合性”相互作用である水素結合/π-πスタッキングに注目し、新規アラミド型プラットフォーム, mPEGAAを開発しました。さらに著者らは物性試験においてmPEGAAは高い機械強度、イオン電導性、電気化学安定性とリサイクル性を両立させた有用な固体電解質であることを示しました。本研究は今後更なる発展の余地を残すものの次世代型電池における今後の研究開発においてベンチマーク的位置付けとなる論文であると考えられます。興味深く読ませて頂きました
内田 昌樹先生
本論文は、non-covalent interactionによる分子の可逆的自己集合という超分子化学的概念を、「分解・再構成可能な全固体リチウムイオン電池の開発」という実用的にも重要性の高い材料開発に結びつけた点で高く評価される。分子材料の設計と評価を系統的かつ緻密に行い、基礎と応用を結びつけた優れた研究である。可逆的自己集合を利用したサステナブル材料設計の観点から分野横断的な意義を有する。本論文では、使用後の全固体電池をDMFやメタノールに浸漬することで、mPEGAA分子や電極材料等の各構成材料に分解出来ることまで示されたが、回収された材料から電池への再構築と性能の評価までは行われていないので、研究のさらなる発展が大いに待たれる。
1)研究者を目指したきっかけ
私が研究者という道に興味を持ったきっかけは、まだ誰も知らない新しい材料を見つけ、それを歴史に残したいと思ったことです。未知のものを自分の手で明らかにしていくことに、大きな魅力を感じました。
現在も材料研究に取り組む中で、「新しい材料を見つけること」は最大のロマンだと感じています。新しい材料が生まれることで、それまで不可能だったことが可能になり、人々の生活をより豊かにすることができます。
また、エネルギーや環境といった持続可能性の課題に対しても、材料の力で少しでも前向きな影響を与えられると考えています。こうした思いから、研究を仕事にしたいと強く思うようになりました。
2)現在の専門分野に進んだ理由
近年のAI技術の発展により、社会全体のエネルギー需要はますます増加しており、エネルギーとの向き合い方は非常に重要な課題となっています。その中で、より高度な発電技術やエネルギー貯蔵技術、さらには電気を届ける際のロスを最小限に抑え、効率よく利用することが、持続可能な社会を実現するための鍵になると考えています。
私は、こうした課題に対して材料科学の立場から貢献したいと考え、この分野に進みました。新しい材料の発明によって、これまでよりも効率的で無駄の少ないエネルギーの使い方を提案できる点に、大きな魅力を感じています。
将来的には、材料の力を通じてエネルギーの利用効率を高め、人々がより豊かに暮らせる社会の実現に貢献したいと考えています。
3)この研究の将来性
本研究で開発した自己組織化電池材料は、「最初からリサイクルしやすいように設計する」という新しい考え方を示したものです。これまでのリチウムイオン電池は、使用後に材料を分離して再利用することが難しいという課題がありましたが、本研究ではその問題を根本から解決できる可能性を示しました。
もし電池のリサイクル技術がさらに発展すれば、エネルギー貯蔵や電気自動車のコストを下げることにつながり、再生可能エネルギーをより多くの場面で活用できるようになります。
このように、本研究は環境負荷の低減と持続可能な社会の実現に貢献するだけでなく、将来のエネルギー技術の発展にも大きく役立つ可能性があります。



![[論文賞]山田 達也/University of Nebraska - Lincoln](https://static.wixstatic.com/media/aa8fa1_a72df8a8e6734d9894e42edff0af360c~mv2.jpg/v1/fill/w_980,h_1146,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/aa8fa1_a72df8a8e6734d9894e42edff0af360c~mv2.jpg)
![[論文賞] 加賀谷 祐輝/Purdue University](https://static.wixstatic.com/media/aa8fa1_fb6a1f15f2fc4bd49a4b249ccf11f13d~mv2.jpeg/v1/fill/w_980,h_985,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/aa8fa1_fb6a1f15f2fc4bd49a4b249ccf11f13d~mv2.jpeg)
![[論文賞] 鈴木 遼太郎/ベルリン自由大学](https://static.wixstatic.com/media/aa8fa1_7e0f4cc7a7df44cf993ee2d4ef7383ed~mv2.jpg/v1/fill/w_980,h_981,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/aa8fa1_7e0f4cc7a7df44cf993ee2d4ef7383ed~mv2.jpg)
コメント