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[奨励賞] 三瀬 広記 / Okayama University

Koki Mise, Ph.D., M.D.

[分野:サイエンスを遊ぼうの会(ヒューストン、テキサス)]


論文リンク


論文タイトル

NDUFS4 regulates cristae remodeling in diabetic kidney disease


掲載雑誌名

Nature Communications


論文内容

DKD (糖尿病関連腎臓病)の糸球体ポドサイト等の細胞単位における電子伝達系(ETC)のリモデリングは、詳細に検討されておらず機序は不明であった。そこで、DKDモデルマウスのポドサイトミトコンドリアにおけるETCの機能解析を行ったところ、ミトコンドリア呼吸鎖複合体I (Complex I: CI)を構成するサブユニットのタンパク発現量やCI活性がDKDポドサイトで低下していた。さらに、DKDポドサイトで低下していたCIサブユニットのNDUFS4をポドサイト特異的に過剰発現すると、クリステ構成タンパクの1つであるSTOML2との相互作用を介してクリステおよびETCリモデリングが改善し、DKD進展が抑制された。従って、NDUFS4がDKDの新規治療標的となることが示唆された。本研究では、クライオ電子トモグラフィーを用いてのクリステ構造評価、APEX2-proximity labelingによるNDUFS4と相互作用を持つ分子の同定、さらにSuper resolution imaging (STED/STORM)によるNDUFS4とSTOML2との空間的相互作用の同定、といった最新の技術を用いた解析が高く評価され、2024年のYear in ReviewとしてNature Review Nephrology (Nat Rev Nephrol. 2025;21(2):77-78)で紹介されている。


受賞者のコメント

この度は大変名誉ある本賞に選定していただき誠にありがとうございます。

渡米して半年、やっと生活にも研究にも慣れたところでパンデミックになり、約1年程が無駄になったりした留学生活で、研究が論文という形になるまでは山あり谷ありでした。一つ一つのFigureに思い入れがある論文を評価していただけたことは今後のモチベーションにもつながります。帰国後も残った仕事を国際共同研究で継続しておりますが、引き続き頑張っていきたいと思います。


審査員コメント


菊池 寛昭先生

ミトコンドリアのクリステに着目し、それを糖尿病治療に結び付けるという、腎臓にとどまらず、他分野にも応用可能な素晴らしい研究だと思います。podocyteにとどまらず、尿細管上皮細胞などでも同様のことが言えるのではないかと思い、大変興味が湧きました。今後さらなるご研究の発展を祈念いたしております。


井上 己音先生

糖尿病によるミトコンドリア断片化については様々研究されていましたが、本研究ではcristaeの構造という、よりミクロな本質に迫っています。 NDUFS4という一つのサブユニットを標的とすることで、Cristae構造、呼吸鎖超複合体RSCsの安定性、そして細胞(糸球体足細胞)全体の代謝を包括的に正常化できる可能性を提示した意義は極めて大きいです。SGLT2阻害薬など腎保護に有効性のある新薬は出てきているものの、まだまだであることは臨床の場で実感することが多いです。ここ最近の新薬の流れとも全く異なる、「ミトコンドリアを保つ治療」のような新しい戦略を生み出すような、大きなお仕事だと思いました。


江島 弘晃先生

糖尿病性腎疾におけるミトコンドリアの関連性、とくにクリステ形成タンパク質のNDUFS4に着目した新規性の高い研究成果である。NDUFS4の治療ターゲットにした疾患の治療方法の創出が期待できる。


神津 英至先生

NDUFS4について、単なる代謝酵素としての機能にとどまらず、STOML2との相互作用を介したクリステ構造の物理的制御因子としての役割を解明した点は、ミトコンドリア生物学における重要な概念の提示です。代謝と構造の連関をCryo-ETや超解像顕微鏡を用いて視覚的かつ定量的に実証したアプローチが、結論の説得力を高めています。DKDの病態解明に向けた新たな視座として、またミトコンドリアダイナミクス研究への波及効果の高さにおいて、極めて優れた研究成果であると評価します。


1)研究者を目指したきっかけ

市中病院で働いていた時に、当時の部長が「糖尿病性腎症の腎病理の研究を誰もやりたがらないんだけどやってくれない?」と声をかけてくださったのがきっかけでした。


2)現在の専門分野に進んだ理由

私の場合は、色々と幸運な環境や人脈に恵まれ、卒後4年目頃より市中病院で糖尿病関連腎臓病(DKD)の臨床研究に従事することができました。臨床研究をする中でメカニズムに迫る研究も行いたいという気持ちが芽生え、大学院へ進学し基礎研究を始めました。これまでは、主にマウスを用いた基礎研究を行ってきましたが、結果がヒトに当てはまるか、還元できるかという点は私だけでなく多くの研究者が直面している問題だと思います。その問題を少しでも克服するために、ヒトの検体、組織、臨床情報が紐づいたコホート研究も大学院生の頃より立ち上げ、それを活用しながら現在研究を行っています。

糖尿病関連腎臓病(DKD)は確かなアンメットニーズがある疾患で、研究しがいがある腎臓病だと思います。マウスなどの基礎的な実験で立証されたことが、ヒトの検体を使った実験でもValidateされた時は研究のやりがいを感じます。


3)この研究の将来性

今回の研究内容はミトコンドリアの電子伝達系(ETC)リモデリングに関するものですが、これまでのDKDにおける研究では、細胞単位でETCの評価を正しく評価している研究はありませんでした。今回、糸球体のポドサイトにおける様々な解析で呼吸鎖複合体I(Complex I)やそのサブユニットであるNDUFS4の重要性を示すことができました。将来的にComplex IをターゲットとしたようなDKDの治療戦略ができれば既存のDKDに対する治療に対して有意な上乗せ効果が得られる可能性を秘めていると考えています。

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