科学で読み解く「国民病」アレルギーのすべて
- UJA Award
- 6月5日
- 読了時間: 7分
森田英明 Hideaki Morita, M.D., Ph.D.
足立剛也 Takeya Adachi, M.D., Ph.D.
ENGAGE タスクフォース:https://www.engage-tf.jp/
花粉症や食物アレルギー、それにアトピー性皮膚炎、気管支喘息など、もはや、「アレルギー」という言葉を聞いたことがない人はいないでしょう。そして今や、国民の2人に1人が、何らかの免疫アレルギー疾患を抱えていると言われており、この本を手に取った皆さんも、ご自身が、あるいはご家族がアレルギーのことで悩んでいるなど、「この病気のことについて知りたい」というお気持ちの方が多いと思います。多くのアレルギー疾患は、乳児期から高齢期まで一生にわたり、複数の臓器にまたがって症状を呈し、環境や生活スタイルによって悪化したり、改善したりを繰り返します。日常生活への影響は決して小さくありません。さらに、アナフィラキシーや薬剤アレルギーのように、重篤な症状を引き起こし、ときに命にかかわるケースさえあります。そこで今回、厚生労働省が主導する「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」の実現に向けて活動している「ENGAGEタスクフォース」のメンバーや、志をともにする医師・研究者19名が結集し、「アレルギーを正しく知るための最初の一歩」になるような一冊を目指しました。医師や研究者だけでなく、患者さんご自身やご家族、学校や職場、行政に携わるすべての方々が、アレルギーの基本的なメカニズムと特徴を理解すること――それは、症状の背景にある仕組みを知り、自分の体の反応を正しく捉える力になります。アレルギーを正しく知ることで、見えない不安を少しでも「見える安心」に変えていけるように――。そんな思いを、ENGAGEのメンバーの先生方とともに一冊にまとめました。アレルギーが今増えている背景を説明する有力仮説や、なぜ無害なアレルゲンに体が反応してしまうのかを理解する上で欠かせない免疫との関係、それに、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、花粉症など、10 を超える個別の病気についても最新研究をお届けします。どんな人が手にとっても「この部分が知りたかった!」という内容がある、アレルギーの決定版となる一冊です。アレルギーとともに生きることが「特別」ではなく「あたりまえ」となり、自分自身の体や選択肢について納得して選べる――そんな未来につなげるために、この一冊がささやかな道しるべとなることを願っています。
受賞コメント
このたびは、このような栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。心より御礼申し上げます。ENGAGEタスクフォースは、アレルギー分野において、診療科・領域・職種の垣根を越えながら、次世代の若手医師・研究者がつながり、学び合い、新しい価値を社会に届けることを目指して活動してまいりました。今回の受賞は、私たち個人というよりも、志をともにしてくださった多くの仲間の挑戦と協働を評価していただいたものと受け止めております。
また、このたび出版した『アレルギーの科学』では、複雑なアレルギーのしくみや最新の知見を、できるだけわかりやすい言葉で社会に届けることを目指しました。専門知を専門家の中にとどめず、患者さんやご家族、市民の皆さまと共有していくことは、アレルギーとともに生きることが特別なことではなく、当たり前のこととして受けとめられる安心社会の醸成につながると信じています。この受賞を励みに、今後もENGAGEタスクフォースとして分野横断的な連携をさらに進め、研究・診療・教育、そして社会との対話を通じて、誰もが安心して暮らせる未来の実現に貢献してまいります。
ENGAGEタスクフォース 足立剛也、森田英明
受賞された広報活動に関して、伝えたいエピソード(苦労話、広報を始めたきっかけ、続けてきて良かったことなど)
この広報活動を始めた背景には、アレルギーが非常に身近な疾患であるにもかかわらず、その実態や患者さん・ご家族の困難が社会に十分伝わっていないという問題意識がありました。執筆や発信を重ねる中であらためて感じたのは、アレルギーは単に「からだの間違った反応」として片づけられるものではなく、体の仕組みと周囲の環境とのギャップによって生じる、いわば社会的な側面を持つ病でもあるということです。だからこそ、患者さん個人の問題としてではなく、社会全体で理解し支えていく視点が大切だと考えるようになりました。 苦労したのは、こうした複雑な科学や医療の内容を、正確さを損なわずに、一般の方にも伝わる言葉に翻訳することでした。専門用語を減らしすぎると誤解を招き、厳密さを優先しすぎると届きにくくなるため、そのバランスにはいつも悩みました。それでも、多職種・多領域の仲間と議論を重ねながら発信を続けてきたことで、専門知が社会との対話につながり、診療科や職種を越えた連携も広がってきたことは、大きな励みになっています。 今回の『アレルギーの科学』の出版も、そうした取り組みの延長線上にあります。アレルギーとともに生きることが特別ではなく当たり前である社会の実現に向けて、これからも専門知を社会にひらき、理解と安心につながる発信を続けていきたいと思います。
現在の専門分野に進んだ理由を教えてください
この広報活動を始めた背景には、アレルギーが非常に身近な疾患であるにもかかわらず、その実態や患者さん・ご家族の困難が社会に十分伝わっていないという問題意識がありました。執筆や発信を重ねる中であらためて感じたのは、アレルギーは単に「からだの間違った反応」として片づけられるものではなく、体の仕組みと周囲の環境とのギャップによって生じる、いわば社会的な側面を持つ病でもあるということです。だからこそ、患者さん個人の問題としてではなく、社会全体で理解し支えていく視点が大切だと考えるようになりました。 苦労したのは、こうした複雑な科学や医療の内容を、正確さを損なわずに、一般の方にも伝わる言葉に翻訳することでした。専門用語を減らしすぎると誤解を招き、厳密さを優先しすぎると届きにくくなるため、そのバランスにはいつも悩みました。それでも、多職種・多領域の仲間と議論を重ねながら発信を続けてきたことで、専門知が社会との対話につながり、診療科や職種を越えた連携も広がってきたことは、大きな励みになっています。今回の『アレルギーの科学』の出版も、そうした取り組みの延長線上にあります。アレルギーとともに生きることが特別ではなく当たり前である社会の実現に向けて、これからも専門知を社会にひらき、理解と安心につながる発信を続けていきたいと思います。
広報活動を行う理由を教えてください
祖父が、薬の副作用によって重い後遺症が残る「スモン」という病気の患者でした。身近な家族が長く苦しむ姿を見てきたことが、医療の道を志した大きなきっかけです。なかでも、患者さんの毎日の生活に深く関わるアレルギーの分野に強く関心を持ち、現在の専門に進みました。 雑誌(実験医学など), Youtubeでのインタビュー, 外部ニュースサイトのオンライン記事やSNS アレルギーは身近な病気ですが、正しい知識が十分に広まっていないために、困っている人が少なくありません。だからこそ、研究や医療でわかったことを、専門家だけでなく、患者さんや社会全体にわかりやすく伝えることが大切だと考えています。広報活動を通して、病気への理解を広げ、誰もが安心して暮らせる社会につなげたいと思っています。
審査員コメント
Ayane審査員
国が進める研究戦略を一般市民の視点に立って丁寧に読み解き、19名もの専門家の知見を一冊に凝縮し、出版まですすめた広報手腕が素晴らしいです。アレルギーという広範な課題に対し、正確な情報を『見える安心』として社会に還元した功績は大きく、科学広報の王道を行く活動だと思います。
大須賀審査員
アレルギーについて一般の人にもわかりやすく書かれた良書だと思いました。アレルギーの基礎的なメカニズム、タイプ、増加している原因、治療、予防、最新研究について詳しく解説されていて、一般の人が欲しい知識を得られると思いました。最新研究を含めて、科学的根拠に基づいて書かれていて、その点が高く評価できます。今後、SNSなどを活用して、また違うスタイルでの発信にも繋げてもらって、もっと多くの方にリーチできるように、活動をさらに発展させてもらえればと期待します。







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