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[奨励賞] 中島 麻里 / University of Washington

Mari Nakashima, Ph.D.

[分野:生物学・分子生物学・発生生物学・遺伝学]


論文リンク


論文タイトル

Fortilin binds CTNNA3 and protects it against phosphorylation, ubiquitination, and proteasomal degradation to guard cells against apoptosis


掲載雑誌名

Communications Biology


論文内容

私たちの体は、細胞同士が互いにしっかりと接着することで形と機能を保っています。この“細胞接着”が壊れると、組織はもろくなり、炎症・神経変性・臓器不全など多くの病態につながります。しかし、接着タンパク質が細胞内でどのように守られ、分解を免れているのか、その制御機構はほとんど分かっていませんでした。本研究では、心筋で特に重要な接着因子CTNNA3(αT-catenin) に注目し、その安定性を保つ新しい仕組みを明らかにしました。私たちは、全身の多くの細胞に発現し、p53(tumor protein p53)や MCL1(Myeloid Cell Leukemia 1)に結合して細胞死を抑える抗アポトーシス因子 Fortilin(translationally controlled tumor protein) が、CTNNA3 に直接結合することを発見しました。さらに Fortilin は、CTNNA3 のリン酸化・ユビキチン化・プロテアソーム分解といった分解経路を抑制し、CTNNA3 を守る“分子ボディガード”として働くことが分かりました。Fortilin を欠失させると CTNNA3 は急速に減少し、細胞接着が破綻してアポトーシスが進みます。本研究は、細胞死調節因子が細胞接着の維持にも関わるという新たな視点を提示し、細胞死、炎症、組織脆弱化を基盤とするさまざまな病態の理解に貢献する知見です。


受賞者のコメント

このような素晴らしい賞をいただくことができ、とても嬉しく、光栄に思います。

審査員の先生方、UJA関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

また、メンターをはじめ、ラボメンバー、家族など、日々の研究生活を支えてくれた多くの方々にも深く感謝しています。

今回の受賞を励みに、今後も研究に真摯に取り組んでまいります。


審査員コメント


安部 一太郎先生

FortilinがCTNNA3を特異的に安定化させ,細胞生存を制御する新規分子機構を明確に示した研究です。細胞接着分子CTNNA3の新たな機能的側面を提示しており,細胞生物学とアポトーシス研究の双方に重要な貢献をなしています。今後の疾患研究への展開も期待されます。


大原 悠紀先生

Fortilin binds CTNNA3 and protects it against phosphorylation, ubiquitination, and proteasomal degradation to guard cells against apoptosis

本論文は、FortilinがCTNNA3に結合することでCTNNA3のリン酸化やユビキチン化を抑制し、プロテアソーム分解から保護する機構を明らかにした研究です。Fortilinはがんなどで発現が亢進し、既知の抗アポトーシス関連タンパク質との関与も報告されているが、本研究では新たな相互作用分子CTNNA3を同定し、免疫沈降や近接ライゲーションアッセイを用いて丁寧に実証しており、その点に意義があります。今後は、Fortilin発現上昇の上流制御や複数のがん種での検証、既知の相互作用分子との機能的関係の検討が期待されます。


辻 正樹先生

多機能タンパク質であるfortilinが、adherens junctions構成因子の一つであるCTNNA3(α-T-カテニン)と相互作用し、その安定性と細胞生存を制御する機序を明らかにした。fortilin欠損によりCTNNA3のリン酸化が促進され、ユビキチン化およびプロテアソーム分解を介して発現が低下し、最終的に細胞アポトーシスが誘導されることを示した。fortilin–CTNNA3軸という新たな細胞生存制御機構を提示した本研究は、細胞接着とアポトーシス制御の理解を前進させる。


神津 英至先生

FortilinとCTNNA3の相互作用がタンパク質の安定化とアポトーシス抑制に寄与することを、多彩な手法を用いて緻密に解析した、生化学的に質の高い研究です。細胞死制御の新たな分子メカニズムを提示した点は、基礎生物学的な知見として貴重です。今後は、Discussionでも触れられている心不全などの病態との関連について、心筋細胞やin vivoモデルを用いた検証が進むことを期待しています。


1)研究者を目指したきっかけ

科学に興味を持つきっかけになったのは、高校の生物の授業でした。生き物の仕組みを学ぶことが純粋に面白く、生物が好きになったことから理学部に進学しました。大学の卒業研究で研究室に配属され、そこで素晴らしいメンターに出会い、自分で考え、実験し、少しずつ分からないことが明らかになっていく過程に大きな楽しさを感じました。研究を続ける中で、多くの先生方や周囲の方々に支えられながら、博士課程に進む頃には、少しずつ研究者という道を意識するようになりました。


2)現在の専門分野に進んだ理由

もともと私は脳の分野で博士号を取りましたが、博士課程を終える頃に、他の分野ものぞいてみたいと思うようになりました。ちょうどその頃、「心脳相関」という考え方に興味を持ち、脳と心臓は別々の臓器でありながら深く関わっていることを知り、循環器・心血管分野に惹かれました。

現在は、循環器疾患において、細胞がどのように傷つき、どのように守られているのかを分子レベルで研究しています。この分野の魅力は、細胞やタンパク質の働きといった基礎的な仕組みを理解することが、病気の理解や将来の治療につながる可能性を持っている点です。また、臨床医との連携がしやすいため、実際の患者さんが抱える課題を意識しながら基礎研究を進められるところにも魅力を感じています。


3)この研究の将来性

この研究は、Fortilin というタンパク質が CTNNA3 に結合して分解から守ることで、細胞死を抑制する仕組みを明らかにしたものです。細胞接着や細胞死の異常は、炎症や組織障害を伴うさまざまな病気と関わっています。今回の成果は、細胞や組織がどのように安定に保たれているのか、また病気の中でそれがどのように崩れていくのかを理解するうえで役立つと考えています。将来的には、細胞や組織を守る新しい治療や予防の考え方につながることが期待されます。

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