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[奨励賞] 佐々木 光一 / Imperial College London

Koichi Sasaki, Ph.D.

[分野:免疫分野]


論文リンク


論文タイトル

Collagen-binding IL-12-armoured STEAP1 CAR-T cells reduce toxicity and treat prostate cancer in mouse models


掲載雑誌名

Nature Biomedical Engineering


論文内容

キメラ抗原受容体 (CAR)-T細胞療法は固形がんに対して効果が乏しい。その主な原因として、免疫抑制的がん微小環境、免疫細胞浸潤の欠如、抗原不均一性などが挙げられる。インターロイキン-12(IL-12)はこれらを解決する可能性をもつサイトカインだが、副作用が強く薬として承認されていない。正常組織で不要な免疫活性化を起こさないための、がん組織特異的なIL-12送達技術の開発が急務である。

我々は過去に、固形がん組織特異的なコラーゲンのアクセシビリティを利用したタンパク質医薬送達技術を報告してきた。今回は、STEAP1陽性前立腺がん細胞を攻撃する際、コラーゲン結合型IL-12(CBD-IL-12)を分泌するよう設計したCAR-T細胞を開発した。このCBD-IL-12武装CAR-T細胞は、マウスモデルにおいて、IL-12武装CAR-T細胞がもたらす副作用を伴わず免疫系を活性化し、STEAP1及びその他がん抗原に対する免疫応答を誘導した。免疫チェックポイント阻害剤との併用により、前立腺癌マウスモデルを完治した。更に、ヒト由来CBD-IL-12装甲CAR-T細胞は、22Rv1ヒト前立腺がん異種移植モデルにおいて強力な抗腫瘍効果を示しながら、IL-12装甲CAR-T細胞と比較し低い血清中IL-12濃度を示した。

コラーゲン結合性の付与と、CAR-T細胞によるがん組織への特異的送達を組み合わせた本アプローチは、高い免疫活性化能を持つタンパク質医薬の安全性を高め、臨床応用に貢献する可能性を有する。


受賞者のコメント

本研究は、留学開始から一貫して取り組んできた最初のテーマです。途中、全くの想定外のグループが競合技術を開発していることが判明するなど、苦労もありました。最終的に、留学開始から4年半かけて、無事論文を発表できただけでなく、今回UJAの皆様に私の研究の重要性を評価していただけたことは、大きな励みになっています。お忙しいところレビューしていただき、誠にありがとうございました。


審査員コメント


小野寺 淳先生

コラーゲンに結合するIL-12を発現するCAR-T細胞を用いた免疫療法の論文です。サイトカインを腫瘍組織内にできる限り留めておくことを目的として、ちょっとした工夫を加えています。こうした非常にシンプルなアイデアによって現状を打破していく研究姿勢は、マネーゲームの様相を呈している現在の医学・生命科学研究の風潮に風穴を開けるものとして評価できると思います。


清家 圭介先生

リンパ腫や多発性骨髄腫において実臨床で効果が認められているCAR-T細胞療法ですが、固形腫瘍への応用にはまだ課題が多いです。本研究では、CAR-T細胞においてIL-12が腫瘍微小環境をhotにする一方で、全身性の副作用が増悪する点に着目しました。そこで、腫瘍間質のコラーゲンに結合するドメイン(CBD)を用いてIL-12を腫瘍環境に固定し局所に滞留させることで、腫瘍内での免疫活性化を増幅しつつ、全身の副作用を抑制できる画期的な方法を示しています。本研究は、固形腫瘍におけるCAR-T細胞療法の開発において重要な知見です。


兼重 篤謹先生

固形がんに対するCAR-T細胞療法は、免疫抑制的な環境、低調な免疫細胞の浸潤、腫瘍抗原の多様性などにより、十分な治療効果を示してこなかった。これらの課題を克服するため、IL-12などの免疫刺激性サイトカインを発現するアーマードCAR-T細胞が開発されてきたが、全身性毒性が臨床応用の大きな障壁となっていた。本研究では、IL-12にコラーゲン結合ドメイン(collagen-binding domain: CBD)を融合させ、腫瘍間質に局在化させる戦略を取っている。前立腺がんに選択的に発現するSTEAP1に着目し、STEAP1を標的とするCAR-T細胞を作成し、さらにそのCAR-T細胞からコラーゲン結合ドメインを有するIL-12を分泌させて、前立腺がんマウスモデルにおけるIL-12の毒性を低減することに成功している。本研究はCAR-T細胞療法の課題克服に向けた有用な戦略を提示しており、非常に興味深く、今後の発展も期待される。


1)研究者を目指したきっかけ

大学4年生になる前の春休み、幸運なことにシリコンバレーに短期留学する機会がありました。そこで目にした環境と人から大きな衝撃を受け、自分も何か大きいことに取り組みたい、と心から思いました (それまでは、正直に言って部活しかしていませんでした)。その後在籍させていただいた研究室で熱心に研究に取り組むうちに、いつの間にかという感じです。


2)現在の専門分野に進んだ理由

大学院生までは、細胞を構成するペプチドやタンパク質、脂質といった分子のエンジニアリングに取り組んでいました。それらの知見を組み合わせて細胞自体をデザインすれば、難治性疾患の克服など、より高度なことを実現する、living microrobotsを作ることができるはずだと考えるようになり、楽しんで研究に取り組んでいます。


3)この研究の将来性

今回の論文では、IL-12という極めて抗がん効果の高いタンパク質を、前立腺がん細胞にだけ届けるための細胞を報告しました。他の、狙っていない正常な組織にはできるだけIL-12が分布しないようにすることで、重篤な副作用を避けることが本技術の狙いです。

細胞に取り付けるセンサーを変えることで、他のがんも同様のコンセプトで治療することができ、かつ運ぶものをIL-12以外に変更することもできます。そうすることで、多くの固形がん患者さんのための、適切な治療用細胞にチューニングできるプラットフォーム技術としての可能性を、本研究は秘めています。現所属のメンターを含めた様々な人と協力し、治療応用をするため、研究を続けています。


留学中のサポートやコミュニティについて

アカデミックサロン (喜多由拓、多田正純、鳥井亮 先生方主催)


留学や研究生活にまつわるエピソード

自分自身にも言い聞かせているのですが、この記事を読んでくださった皆様には、留学だけにとどまらず、後悔のない選択をして欲しいと願っています。

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