[奨励賞] 孫崎 玲 / Chapman University
- UJA Award
- 4 日前
- 読了時間: 5分
Rei Magosaki, Ph.D.
[分野:南カリフォルニア 日本人研究者の会 SCJSF (南カリフォルニア)]
論文リンク
論文タイトル
"Beyond Railroads and Internment"? Japanese American Wartime Incarceration Literature and the Foundations of Asian American Literary Studies
掲載雑誌名
American Literature
論文内容
この記事は、第二次世界大戦後の日系収容所文学作品をはじめて体系化し、アジア系アメリカ文学研究という分野においての既存の扱われ方を検証する。戦時中アメリカにおける日系強制収容所勾留の歴史をめぐっては、子孫にあたる日系アメリカ人による数多くの作品が存在し、今もなお四世・五世日系米作家が新たな文学作品を生み出している。本稿では、主要文学作品を全米10ヶ所に存在したWartime Relocation Authority収容所と関連づけて整理するとともに、それら収容所がすべて19世紀においてのネイティヴアメリカン部族らとの武力衝突の跡地に設立されたことに注目する。日系収容所史がアメリカの帝国主義と植民地政策の延長線に位置することから、戦後日系収容所文学がアメリカ文学史上において持って然るべき重要性を確立する。
受賞者のコメント
この論文は、今書いている本の序章です。この論文の狙いは戦後の日系米文学を一つの芸術的集大成として捉えることでした。第二次世界大戦から80年あまり、戦時中に強制収容所生活を経験した日系人の声が消えつつある今、その歴史を継承する次世代文学作品はどのくらい存在するのか、どう扱われてきたのか、また今後どう捉えるべきか、問題意識と方向性を提示する論文を書きました。今回の受賞を心の支えに、最後までこれからも頑張ります。
審査員コメント
Miyako Inoue (井上美弥子)先生
本稿は、アジア系アメリカ文学批評を歴史化し、マイノリティ文学の理論的枠組みを根底から再構築しようとする意欲作です。特に、これまで日系アメリカ人文学において自明視されてきた"Internment"(抑留)という用語がいかに法的に不正確であるかを指摘し、その用語が研究史の中で繰り返されてきた過程で、日系アメリカ人の戦時文学がいかに制度的に周縁化されてきたかを明らかにした点は秀逸です。
こうした研究史の反省に立ち、「ポストメモリー」の概念を用いて収容所文学を超世代的なテーマとして捉え直す視点や、さらには収容所の地政学的な位置から先住民への暴力の歴史を重ね合わせる分析は、文学研究のみならず先住民研究やポストコロニアル研究にも通じるものであり、アメリカにおける国家的暴力の歴史を理解する上で、大変重要な論文だと言えます。
山本 雅昭先生
本論文は、日系アメリカ人収容文学を多世代的コーパスとして捉え直し、「internment」という用語の問題性を批判的に再検討した点が高く評価される。さらに、収容の経験を空間的に再配置する独創的な枠組みを提示し、文学研究に新たな視座を切り開いている。理論的洞察と今後の研究への発展性を兼ね備えた、極めて意義深い成果である。
平田 真章先生
本論文は、第二次世界大戦後の日系収容所文学作品を体系化し、アジア系アメリカ文学研究における既存の位置づけを再検討している点に大きな意義があると感じた。とりわけ、文学・歴史・地理・先住民研究・帝国/植民地主義研究を横断的に結びつけている点が興味深い。なかでも、日系人収容所が19世紀の先住民との武力衝突や強制移住の歴史をもつ土地に設置されていたという指摘は印象的であり、文学を通して歴史理解が深まり、また歴史的文脈から文学作品を読み直すことの重要性を強く感じた。この視点は、世界各地の文学作品を歴史との関係から再解釈する際にも応用可能だと思われる。
1)研究者を目指したきっかけ
私は1998年に、アーモスト大学内村鑑三スカラシップで渡米しました。このスカラシップは今もあります。応募したときは聖心女子大学の英米文学専攻の大学3年生でした。本場での米文学研究がどんどん面白くなり、そのまま博士課程へ進むことになりました。アメリカで英米文学を教える道を志し、2008年に助教としてカリフォルニアの大学に着任しました。気がついてみれば、日本から来た米文学研究者としてアメリカの大学で教えるという道を長らく歩んできています。研究を仕事にした理由は、アカデミアは差別が比較的少ない世界であると思ったことと、将来の世の中を形作る仕事だと思ったからです。今でもその気持ちは変わっていません。
2)現在の専門分野に進んだ理由
今、日系米文学の本を書いています。第二次世界大戦中に西海岸に住む12.6万人の日本人・日系人が強制収容所に送還された歴史について、もともとは私もあまりよく知らず、手探りで研究を進めてきました。史実についてはたくさんの著書がありますが、何代にも渡るその人たちや子孫の戦後文学作品についての研究書は現在存在しません。日系米文学作家はどんな人がいるのか、どんな作品があるのか、ガイドになるものが存在すれば私も苦労しなかった。そんな気持ちで書き始めた入門書を書き上げられるよう、頑張ろうと思います。
3)この研究の将来性
私の研究では、この戦時中の日系アメリカ人の歴史を空間的に考えます。ひとつひとつの収容所が建てられた場所は、19世紀の米国国家形成においてたくさんのネイティヴアメリカンの部族との対立の傷跡が残る場所であり、強制立ち退きや殺戮が行われた歴史と空間的に非常に密接に関わっているということもこの記事で発表しました。空間上、ネイティヴ史と日系史は密接な関連があり、日系文学自体からも19世紀帝国主義の歴史との関連づけが強く見られることから、この着目点は日系米文学の価値をさらに確固たるものにできるものではないかと考えています。



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