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[奨励賞] 安藤 和則 / Morgridge Institute for Research

Kazunori Ando, Ph.D.

[分野:生物学・分子生物学・発生生物学・遺伝学]


論文リンク


論文タイトル

A screen for regeneration-associated silencer regulatory elements in zebrafish


掲載雑誌名

Developmental Cell


論文内容

哺乳類の手足の再生能力は限定的ですが、両生類や魚類のそれは付属肢の喪失を元通りにできます。彼らは損傷部位に、細胞増殖ができる「再生組織」を形成し、それが元となって失った構造と機能を回復します。この再生現象は、100年以上前から認識されていましたが、この30年で可能になった様々なアプローチで、多くの研究者たちが大きな問いの一つ、「再生現象は何が制御しているのか?」に答えようとしています。最近の大きな転換点は、2016年の再生組織にだけ活発になる遺伝子のスイッチ(再生エンハンサー)の発見で、その後同様のスイッチは多数発見されましたが、何千の遺伝子が関わる再生現象全体を説明するには不十分でした。またオフからオンに切り替わる遺伝子と、同じくらいの数の遺伝子がオンからオフに切り替わるため、逆の機能を持つスイッチ(再生サイレンサー)も重要な役割を果たしているはずですが、技術的な問題でこれまで報告はありませんでした。そこで我々は膨大なゲノムDNAの中から、再生サイレンサーの目印になり得る情報を元に数千の候補を見つけ、その内130の候補を実際の再生現象の中でテストしました。最も強い活性を示した再生サイレンサーに着目した解析から、その再生サイレンサーは対象の遺伝子に物理的に近づくことで、オンからオフに切り替えていることが示唆されました。この発見は再生現象の制御に対する理解の一助となるでしょう。


受賞者のコメント

わかりやすくインパクトの強い変化が起きるような派手な結果のない、地味な基礎的な研究にも関わらず、評価していただけたことは大変嬉しく、光栄です。共同研究者、ファンディング、またUJAの運営・スポンサーや審査員の方々に深く感謝いたします。


審査員コメント


岩渕 真木子先生

Using a powerful zebrafish fin regeneration model, the authors identify tissue-regeneration silencer regulatory elements. The focus on silencer elements, rather than enhancers, is unique, and integrating both types of regulatory information will provide a comprehensive understanding of the molecular mechanisms underlying regeneration.


推名 健太郎先生

解析困難な「サイレンサー」に着目し、再生時のATAC-seqデータから機能領域を特定したスクリーニング手法が画期的です。遺伝子発現を抑制する制御機構の重要性を、ノンコーディング領域の解析から堅実に示しており、非常に参考になります。


西賀 雅隆先生

ゼブラフィッシュ尾びれ・心臓をモデルに、再生時に働くサイレンサー(TRSE)を同定・検証した点が有意義であり、今後、哺乳類やヒトにおける組織再生でもサイレンサーの役割解明が進むことが期待されます。


1)研究者を目指したきっかけ

高校がスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けていて、試しにその活動に関わってみようとしたことが、研究者へ進む最初のキッカケだったと思います。おかけで様々な分野の科学に触れることができ、中でも生命の不思議さに惹かれ、旧東工大の生命理工学部に進みました。学部の講義の一つに、指導教官のもとで自由に研究するというものがあり、テーマを探す過程で、たまたまヤマトヒメミミズの再生に関する文献を見つけて、その研究をしたのがもう一つのキッカケです。再生に惹かれ、大学院ではゼブラフィッシュのヒレの再生を研究しました。博士課程まで続けて研究で、骨を再生する細胞の幹細胞を発見することができ、大きな評価をいただけたことはもちろん、研究することの楽しさを深く感じたことが、研究者の道に進む最後の後押しになりました。


2)現在の専門分野に進んだ理由

高校のSSH活動で様々な科学に触れましたが、生命とは何かという問いが当時の自分には一番強く響きました。中でも再生は、一個体の生命が同一の生命であろうとし続ける究極の現象だと感じ、その原理を知りたいという欲求が強くなり、大学院で様々な遺伝子編集技術を学んでゼブラフィッシュの変異体変異体を作製することによって、当時はいないと思われていた細胞たち(骨を再生する幹細胞)を見つけました。この一連の研究活動は、大変ではありましたが、未知なことが予想を裏切りながら明らかになっていったので、とてもワクワクしました。現在も、再生がなぜできる生物とできない生物に分かれているのかという根本的な問いに向けて、多様な生物種を比較しながら、再生のスイッチの研究を楽しんでいます。


3)この研究の将来性

再生生物学のゴールの一つは、再生できる生き物たちからその原理を学び、人の医療に応用することで、失ったら普通は元に戻せないものを元通りにすることです。再生の原理を知るには再生できる生物とできない生物の間にある違いを理解しなければなりませんが、ここ数十年、目覚ましい技術の進歩と多くの研究者たちの努力で明らかになったのが、人は再生に必要な遺伝子はほぼ全て持っているけれど、スイッチのオンオフの仕方が、再生できる生物とは違うだろうということです。今回受賞した研究は、再生できる生物が持つ、スイッチをオフにする制御配列の発見です。すでに知られている、スイッチをオンにする制御配列を使って、哺乳類の心臓再生を促進した報告もあり、将来的には、人においてでも、再生できる生物のようなスイッチのオンオフができるようになれば、後遺症のない治療につながっていくかもしれません。


留学中のサポートやコミュニティについて

現地の日本人団体や、日本人研究者の集まりには、大きく助けられました。


留学や研究生活にまつわるエピソード

研究は、本当にワクワクする楽しいものですが、一見すると地味で重労働です。ただ、それは例えると登山をレジャーと捉えないようなものです。もちろんそういう人もいるでしょうが、とりあえずチャレンジしてみるのが一番です。私自身は、現在もですが、振り返るとこれまで素晴らしい環境で、素晴らしい人たちと研究ができていて、幸運に恵まれたと思いますが、そういう幸運は思っている以上にあるように思います。

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